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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
33/77

第14話〜禁じられた遊びと未知との再開〜

その日は九条も秋穂さんもサークルを休んでおり、俺は一人で部室にいた。

事前に休みの連絡をもらっていたので、わざわざ部室に来なくても良かったのだが、せっかく一人なので【やってみたい事】があったのだ。


「さて、じゃ始めるか…」


部室を締めきってから、改めて手順を確認する。


①ぬいぐるみを用意してそれの綿を抜く。綿の代わりに米と自分の身体の一部を入れる。


②深夜3時まで待ち、時間になったら用意したぬいぐるみに鬼は自分だと宣言し、ぬいぐるみを浴槽に沈める


③部屋中の明かりをすべて消し、テレビをつける


④目を瞑って10秒数えた後、カッターナイフを持ってぬいぐるみのもとに向かう


⑤浴槽のぬいぐるみのもとについたら、ぬいぐるみをカッターで刺しながら「次はあなたが鬼だよ」と言う


⑥どこかに隠れて、怪奇現象が起きるのを待つ


これが今回行おうとしている【やってみたい事】

いわゆるひとりかくれんぼと言われる降霊術である。


2007年頃ネット掲示板を中心に知られるようになったこのひとりかくれんぼは、とりわけ危険な降霊術だとして大きな話題になった。

それを今回試してみようというわけである。


ただし、家だと親の目が気になるため試すことができず、部室で行うことにした。

とはいえ部室だと色々制限もあるので、下記の通りに手順を変えている。


①ぬいぐるみを綿を抜くのは気が引けたので、小さいクッションの綿を抜き。綿の代わりに米と自分の身体の一部を入れる。


②深夜は部室に入れないので、午後3時まで待ち、時間になったら用意したぬいぐるみに鬼は自分だと宣言し、ぬいぐるみを浴槽、ではなく風呂桶に沈める。


③部室の明かりをすべて消し、スマートフォンで適当な動画をつける


④目を瞑って10秒数えた後、カッターナイフを持ってクッションのもとに向かう


⑤浴槽のぬいぐるみのもとについたら、クッションをカッターで刺しながら「次はあなたが鬼だよ」と言う


⑥どこかに隠れて、怪奇現象が起きるのを待つ


まぁ元の手順とは乖離したが、概ね合っているしこれでいけるだろ。

そう思いながらクッションを浴槽に沈め、電気を消そうとした時、


「いや、さすがにそれは無理があるんじゃない?」


突然後ろから声をかけられる。

声の方向に振り返ると、窓際に一人の少女が立っていた。


「雪那さん?」


「やっほ、久しぶり」


驚いて名前を呼ぶと、雪那さんはこちらに軽く手を振って近づいてきた。


「いつからいたんですか?」


「ずっといたよ?君が準備に夢中で気が付かなかっただけ」


「え?まじすか…」


確かに久しぶりにこういった怪しげな遊びを行ったこともあり、周りが見えていなかったかもしれない。

しかし人が入って来たことにも気が付かないほど熱中していたとは。


「それは良いとして、君、さすがにこれは適当すぎるんじゃない?」


雪那さんは少し呆れた顔で風呂桶に入ったぬいぐるみ、もといクッションを指差す。


「あぁ…さすがにぬいぐるみの方が良かったですかね?」


「いや、それだけじゃなくてさ…ひとりかくれんぼでしょ?だったら手順全然違うじゃん」


「あ、よくひとりかくれんぼって分かりましたね」


「私も秋穂と付き合い長いからね」


「なるほど…」


秋穂さんと付き合いが長い。

この言葉には妙な説得力がある、恐らく雪那さんも色々と振り回された口なのだろう。


「それで1つ忠告。こういう遊びをするんなら手順は正確にやらないと駄目だよ。中途半端が一番危険なんだから」


口調こそ穏やかだったが、そう話す雪那さんの眼は真剣だった。


「つまり…この状態で続行すると危険だと?」


「そういうこと。具体的に何が起こるかは私も分からないけどね」


「そうですか…雪那さんがそこまで言うなら、今回は止めておきますけど…」


「うん。それが良いと思うよ」


俺の言葉を聞いて満足そうに微笑む雪那さん。

どうやら彼女は本気で心配してくれていたようだ。


ーー

ーーー


ひとりかくれんぼの道具をひとしきり片付けた後、俺と雪那さんは部室の席についていた。


「それにしても雪那さん随分久しぶりですよね、今まで何してたんですか?」


「んー?まぁ色々と?」


「また適当な…たまには部活顔出してくださいよ」


「え、何で私が…?」


心底驚いたような顔を浮かべる雪那さん。

いや、そんな顔をされる謂れはないのだが…


「そりゃ、雪那さんだって部員でしょうが…」


「…あー、なるほどね」


俺の言葉を聞いて何かを察したような雪那さん。


「春斗君、さては何か勘違いしてるね」


「勘違いって?」


「私のこと。てっきり秋穂が話してるかと思ったんだけどな…」


「秋穂さんがって…一体何の話をしてるんですか?」


さっきから妙に話が噛み合わない。雪那さんは一体何に気がついたというのだろうか。


「まぁいいや…そしたら来週の同じ時間、部室に来てくれる?その時全部分かると思うから」


「え、今話してくれてもいいんじゃ…?」


「ううん、実際に見たほうが理解が早いよ」


「いやでも話すだけなら…」


「…」


雪那さんの眼からは、これ以上語るつもりはないという意志を感じ、それ以降何も聞くことは出来なかった。


「…来週のこの時間に来れば全部わかるんですね?」


「うん」


「はぁ…わかりましたよ。じゃあ今日は帰ります」


「聞き分けが良くてよろしい」


ひらひらと手を振る雪那さんを背に、俺は部室の鍵を開けて外へ出たのだった。


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