第13話〜幽霊部ができた理由〜
「やっと、帰ってこれたな…」
「やっぱり他サークルの部室は居心地悪いわね」
「あのねぇ…」
交流会を終えて部室へと戻ってきた俺たち。
俺と九条が机に突っ伏していると、秋穂さんが少し呆れたように声をかけてくる。
「もう、2人とも駄目だよ?初対面の人達にあんな態度とったら」
秋穂さんはどうやらディベート終了後に早々に撤退した事に不満があるようだ。
「似てるサークルだし今後も交流する機会もあると思うから、次会った時は仲良くしてね」
「まぁ…善処はします」
多分無理だと思うが。
その後は休憩がてら雑談をしていたのだが、
先に九条が帰ってしまい、部室には俺と秋穂さんの2人きりとなった。
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「なんか春斗くんと2人になるの久しぶりな気がするね」
「あぁ、そう言われてみれば確かにですね」
最近は3人揃う日以外、俺と九条、秋穂さんと九条のどちらかの組み合わせになる機会が多かったため、秋穂さんと2人になるのは随分と久々だった。
「あんまり仲良くし話してたら夏凜ちゃんが嫉妬しちゃうかな?」
「だから俺と九条はそんな関係じゃないですって…」
「あはは、冗談だよー。でもまぁお似合いだと思うけどね」
「んなわけ…はぁ、疲れたからもういいです」
「ごめんごめん」
このまま他愛のない話を続けていても良かったが、俺には今回の一件でどうしても気になっていたことがあった。
「そういえば秋穂さん」
「ん?なぁにー?」
「結局秋穂さんって何でオカ研辞めてまで幽霊部作ったんですか?」
一瞬、部屋の空気が変わったのを感じる。
「あはは、やっぱり春斗くんからはその質問来ると思った」
聞いてはいけない事を聞いてしまったのかと、焦ったがいつも通りの秋穂さんの様子を見て少し安心した。
「もし言いづらい理由とかなら良いんすけど…」
「言いづらいというか…うーん、まぁ春斗くんになら話してもいいかな」
少し困ったように笑う秋穂さんだったが、
しばらく考え込んだあとでゆっくりと口を開いてくれた。
「このサークルはね雪那のために作った場所なの」
「雪那さんの…?」
想像していなかった答えに思わず聞き返してしまう。
確かにこのサークルは秋穂さんが雪那さんを誘って作ったとは聞いていたが、それが雪那さんのためとはどういうことなのだろう。
「そ。春斗くんは雪那と会ったことあるんだよね?」
「えぇ、入学したての頃に1回だけですけど」
「基本的に雪那って人前に出てこないからねー。でもまぁ春斗くんの前になら、そのうちひょっこり現れると思うけどね」
「なんですかそれ、UMAじゃないんだから」
「でも実際UMAみたいなもんだよ?」
「そんな失礼な…」
「あはは、ごめんごめん。で、話を戻すとね、幽霊部が出来る前から、あの子にとって唯一の居場所がこの部室だったんだ」
秋穂さんの口ぶりから察するに、雪那さんも大学で居場所を作れなかった側の人間なのだろうか。
大学内でここにしか居場所がない、というのは俺も同じなので気持はよく分かるが。
「それでね、私と雪那はよくこの部室でよくお喋りしてたんだけど、ある時この場所に新設サークルが入るかもしれないって話が持ち上がったの」
「ここを使いたいなんて変わったサークルが他にあったんすね…」
古びた旧校舎の角部屋なんてダントツの不人気物件だと思ったが、意外と需要があるのだろうか。
「ううん、サークル側の申し出っていうより適当に空いている教室を宛てがった結果ここが候補になったみたい」
「あぁ、それなら納得です」
「でもここに他のサークルが入ってきちゃったら雪那の大切な居場所がなくなっちゃうでしょ?だから何とかこの場所を残してあげたいって思ったんだ」
「単純に雪那さんがその新設サークルに入るとかだと駄目だったんですか?」
「入るってそんなの無理に決まって…あぁ、なるほどそういうことね…」
俺の言葉を否定しようとした秋穂さんだったが、途中で何かに気がついたようで一人納得してしまう。
「道理で少し会話が噛み合ってないと思った。まぁそれならそれで良いかな」
「え?秋穂さん、さっきから何の話してるんすか?」
「ううん、何でもないよ!まぁとにかく雪那が新設サークルに入るのは無理だったの」
妙な言い回しが気にはなったが、まぁ確かにクラスに馴染めずにここに居場所を求めていた人に、いきなり新設サークルに入れというのは無理な話かもしれない。
そういう意味では秋穂さんの言う通りである。
秋穂さんはそのまま話を続けた。
「…新設サークルにこの部室を取られないようにどうしようか色々考えた時にね、同じようにサークルを立ち上げて、ここを部室にしたいって交渉をすればいいって気がついたの」
「まぁ確かに新設サークル側も別の部室を充てがってもらえるならそっちの方が都合がいいでしょうしね」
「そう!実際その提案はすんなり受け入れられて、新設サークルは新校舎に移動できて喜んでたからウィンウィンだったんだ!まぁ私が急にオカ研を抜けちゃったから、風見先輩達には迷惑かけちゃったけどね」
少しバツが悪そうに笑う秋穂さん。
なるほど、急にオカ研を抜けて幽霊部を作ったのにはそういう理由があったわけか。
「なるほど、そういう理由なら一応納得です」
「さすが春斗くん、理解が早いね!あ、一応だけどこの話夏凜ちゃんには黙っておいてもらえるかな?」
「え、なんでですか?」
「雪那のために作った、なんて話あんまり人に話して回りたくないんだ、だからお願い、ね?」
「そういうことなら分かりました、俺だけ胸に留めときますよ」
「ありがと!そうしてくれると助かるよ!さて、それじゃいい時間だしそろそろ帰ろっか!」
秋穂さんの言葉で思い出したように時計を見ると確かに時間は夜の9時を回っていた。
思ったよりもだいぶ話し込んでしまったらしい。
俺達はその後身支度を整え、それぞれの帰路についたのだった。




