プロローグその③~勧誘と活動開始~
「それじゃあ、幽霊部の説明していくね!」
秋穂さんは眩しい笑顔で話し始めた。
「このサークルは私ともう一人で、半年前に作ったんだー!だから部員はまだ2人しかいないの」
「え、新設のサークルなんですか?」
夏凜が驚いたように尋ねる。
「そだよー、だから部室も新校舎の方は1個も空いてなくてさ、もらえたのが旧校舎の角っこの部屋だったってわけ」
ま、雰囲気が出るからいいんだけどね、と秋穂さんが話を続ける。
なるほど、旧校舎にサークルだからそれなりに歴史があるのかと思いきや、新しいサークルだから空き部屋しか使えなかったというわけか。
「それで肝心の設立理由なんだけど、2人とも幽霊好きなんだよね?」
「「えぇ、まぁ」」
秋穂さんの問いかけに、俺と夏凜がハモりつつ答える。
「このサークルはね、そんな幽霊が好きな人のために作ったの」
「っていうと具体的には?」
俺の問いかけに秋穂さんがにやりと笑みを浮かべる。
「最近さ、テレビとか本とかで幽霊について語られる機会って減ったでしょ?そりゃ0ではないけど、昔よりも確実に減ってきた」
「まぁ、、言われて見るとそうかもしれないですね」
「でしょ?でもそれってすごく勿体ないことだと思うんだ。せっかく幽霊っていう不思議で神秘的な概念があるのにさ、それを語らないなんて!」
「だからそれを語る場所が作りたかったと?」
「そーなの!!幽霊やオカルトについて語って伝える!それがこのサークルの存在意義!」
夏凜の問いかけに、秋穂さんが食い気味に答える。
「世間的に幽霊やオカルトの話は減ったけど、それが好きな人だってまだたくさんいるわけでしょ?だからそんな人たちに向けてたくさんのお話を提供していくことが、このサークルの目的なんだ」
「提供ねぇ…具体的にはどうやるんです?」
「ふふふ、それはね…!」
そう言いながら秋穂さんは部室にあったPCを操作すると、とあるサイトの画面を俺たちに見せてきた。
「まかログ…?」
「そ!これはね、私達で見聞きしたり、調べた内容をまとめたブログなの!このブログを通して、世間に不思議なお話をたくさん発信していくのが私達幽霊部の行動理念なんだよ!」
秋穂さんがこれまで以上にハイテンションに部活の詳細について語る。
なるほど、つまりこのサークルは幽霊やオカルトなどの不思議な話の収集と発信を目的としているらしい。
正直この時点で少し興味が湧いていたが、少し腑に落ちない点があった。
夏凜も疑問があったようで秋穂さんに問いかける。
「それってつまり、怪談話とかをまとめたサイトってことですか?なら別に部員なんか募集しなくても、個人でやればいいんじゃ・・・」
「それだとネットに転がってるサイトと変わらないからさ、まかログには私たちの感想や考察も載せていくことにしているの。」
「じゃあまとめサイトというより考察サイトというわけですか。まぁそれならサークルでやってるのも分かります」
夏凜は秋穂さんの説明で腑に落ちたようだ。俺もざっくりだが幽霊部の活動について把握できた。
「うん、2人とも内容を理解してくれたみたいだね!それじゃあさっそくだけど試しに一個お題を出すからそれについてお話してみようよ!」
「え、いや俺まだ入るなんて言ってませんけど・・!?」
「私もです、思っていた内容と違いましたし、出来れば遠慮したいんですけど・・・」
俺と夏凜がそれぞれ抗議する。どうやら俺は存外夏凜と意見が合うらしい。
だがそんな俺たちの反対をよそに嬉しそうに秋穂さんは話を続ける。
「まぁまぁ、物はお試し!体験入部ってことで!あんまり時間は取らないからちょっとだけ付き合ってよ!ね、お願い!」
俺と夏凜は困ったように顔を見合わせる。しばらく考え込んでいたが先に口を開いたのは夏凜だった。
「まぁそこまでいうなら、少しならいいですけど・・・」
「えへへ、ありがとう夏凜ちゃん!春斗君もいい・・・かな?」
心なしか上目使いで俺を見てくる秋穂さん。おいやめろ、かわいいから心が動くだろうが。
「じゃあ・・・、いっかいだけなら」
「うんうん!ありがとう!そしたらさっそく始めようか!記念すべき最初のテーマは・・・」
こうして俺の奇妙なスクールライフが幕を開けるのだった。