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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第10話〜お化け屋敷と別腹な気持ち〜


「ひ、昼間と全然雰囲気違うわね…」


「おう、そだな」


夜の妖怪横丁は昼間に感じた可愛らしさとは打って変わって、非常におどろおどろしい雰囲気を醸し出している。


ゾンビや妖怪に扮したキャストもあちこちおり、さながらエリア全体がお化け屋敷のようになっていた。


「うぅぅぅ…」


「ぁぁあぁぁ…」


「おぉぉぉ…」


 あちこちからゾンビや幽霊のうめき声が聞こえてくる。

彼らは基本的にはエリアを徘徊しているだけのようだが、目があったり近づくと追いかけてくるようだ。

なるほどますますお化け屋敷のようだ。


「じゃあ色々回ってみようぜ」


昼とは違う新鮮さを感じて、若干テンションが上がりながら俺は九条にそう告げた。


――

―――


 私、九条夏凜は今年一番とも言える大ピンチを迎えていた。


 遊園地を体験してみて分かったのだが、私は多分お化け屋敷の類が大の苦手である。


 怪談話やホラー映画好きを公言しておいて今更何言ってるんだと思われるかもしれないけれど、それらとお化け屋敷は明確な違いがあるのだ。


 その違いというのが、お化け屋敷は人が全力で怖がらせようと様々な仕掛けが施されていること。


 怪談話やホラー映画というのは基本的に背筋がゾクリとするような恐怖こそ味わえるものの、直接何かをされるということはなく、絶対的な安全を感じながら楽しめる物だ。


しかしお化け屋敷は驚かされたり、追い回されたりと身の危険を感じるタイプの恐怖を感じる物であり、根本的に【怖い】の質が違う。


 実際何かされることは絶対にないと分かっていても、恐怖を感じずにはいられないのである。


…まぁ馬鹿にされそうなので羽倉君には絶対言えないけれど。


「限定のアトラクションとかもあるみたいだぞ。行ってみるか?」


「え、えぇ。もちろんいいわよ」


内心怖がっていることを悟られないように、至って平成を装いながらそう答えた。


――

―――


 しばらくエリアを歩き周り、雰囲気を楽しんだあと俺達は今回のフェアの目玉であるアトラクションの前に来ていた。

内容はもちろんお化け屋敷である。


「時間的にもこれが最後だな、九条は楽しめたか?」


「え、えぇ楽しかったわ。…ところで本当にこれに入るのよね?」


「そりゃ今回のフェアで一番怖いらしいし、入っとかないとだろ」


「そう…よね」


「ん、どうかしたのか?」


「何でもないわ…はぁ、行きましょ」


いつもと様子が違う九条が少し気になったが、とりあえず中に入ることにした。


このお化け屋敷は口裂け女がモチーフになっているらしい。

施設を歩き回り、口裂け女から逃げ切るというのがテーマのようだ。

ウォークスルー型のお化け屋敷はいつお化けが現れるか分からないという、スリルを体験できるのが良い。


「ね、ねぇ羽倉君、何でもいいから面白い話ししてくれる?」


「何だよその雑すぎる無茶振り…」


「いいから」


「面白い話ねぇ。あ、そういえば今いるスターライト60ビルって拘留所の跡地に出来たって知ってるか?」


「拘留所…?」


「おう、第二次大戦後にA級戦犯とされた留置者が何人もここに幽閉されていたらしいんだよ」


「……」


「そんなわけで、スターライト60ビルって実は心霊スポットとしても有名なんだよな。結構出るらしいぞ」


「あなたがモテない理由を改めて垣間見た気がするわ…」


「急に失礼だなおい」


「まぁ良いわ、もう時間も遅いし急ぎましょう」


そう言って九条がそっと俺の袖を握り、そのまま引っ張って歩き始める。

普段の九条からは考えられない行動に若干戸惑いつつも、俺達はそのままお化け屋敷を楽しんだ。


――

―――


最後に口裂け女が真後ろから追いかけて来て、俺達は急いで出口まで走り抜けた。

出口を出たときのまばゆい光が身体を包み込み、何とも言えない開放感や安心感を感じる瞬間。

この感覚だけはお化け屋敷でしか味わえない。

そんな満足感を感じながら九条の方に目を向けると、九条も同じ気持ちのようで、そっと胸を撫で下ろしていた。


「なかなか良かったな!」


「え?えぇ…そうね」


余韻に浸っているのだろうか、いつにもまして感情のない生返事が帰ってきた。


「じゃあ時間も時間だし、そろそろ帰るか」


「そうしましょうか、ゲートはあっちよね」


ほんの少しだけ名残惜しさや寂しさを感じながらゲートを出る。

すると見慣れた商業施設が眼の前に現れ、一気に現実へと引き戻された。


「じゃあ駅の方に向かうか」


「そうね、行きましょ」


2人で歩き始めた時、急に後ろから声をかけられた。


「あれ?2人ともこんなところで何してるの?」


振り向くと、そこには秋穂さんがいた―



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