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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
19/77

第6話〜新歓合宿開始⑥〜


百物語


それは火の灯ったロウソクを囲み、集まった人達が怪談話をするという、日本の伝統文化の1つである。

100個目の怪談を語り終えると、恐ろしい現象が起こると言われている。

俺達は今からそれをやろうというわけだ。


「でも、ホテルでさすがにロウソク灯すわけにはいかないですよね」


九條の心配はもっともである。

ホテルは基本火気厳禁、それを承知で火災報知器でも鳴らそうもんならとんだ迷惑客になってしまう。


「ふふん!そこはちゃんと考えてあるよ!」


そういって秋穂さんが取り出したのは、ロウソク型のLEDライトだった。


「これなら火事の心配もないし、雰囲気も出るでしょ?」


「まぁ…これなら」


ライトの光は実際の炎のようにゆらゆらと揺れており、確かにロウソクを灯しているように見えなくもない。

若干風情にかけるが、そこはご愛嬌といったところだろう

俺達は部屋の灯りを消し、ロウソクを取り囲むように座った。


「よし!早速始めていこうか!まずは誰から話す??」


「じゃあ私からいいですか?」


最初に手を上げたのは九條だった。


「いいよ、夏凜ちゃんお願い!」


「では…2人とも幽霊が出やすい場所って言われたらどこを思い浮かべますか?」


「やっぱり病院とかか?」


「だね、あとは学校とか廃墟とかかなぁ」


「やっぱりそうですよね、不思議と誰に聞いても墓地って言う人が少ないんですよね。一番人の死に近そうな場所なのに」


怪しそうに微笑む九條の顔がライトに照らされ、思わず身体が強ばるのを感じた。


「それはあれだろ、墓地はちゃんと葬式とかを終えた人の遺骨が埋葬される場所なんだから、恨みを持った幽霊とかは出にくいんだろ」


「だね、それに墓地で亡くなった人ってほとんどいないだろうし」


「えぇ、お二人の意見も最もだと思います。ですが、墓地で幽霊を見たって言う話も無くはないんですよ」


「まぁ、ホラー映画とかでもたまにあるよな」


「お二人が言う通り、丁寧に埋葬されて死んだ場所もそこじゃないなら、霊が出てくる可能性は低いはず。ならその霊が墓地に現れる理由って…?」


「え…まさか…?」


秋穂さんの表情が強ばる。


「火葬が一般的出なかった時代は亡くなった人を棺桶に埋めてそのまま土に埋めていたそうです、いわゆる土葬ですね。でも当時は死亡判定がそれほど精密でなくて、まだ生きている人を死んだと見なすケースもあったらしいですよ」


「生き埋めってことか…?」


「そうよ、実際墓地を掘り返してみると棺桶の内側に大量の引っかき傷がついていたなんてケースもあるみたいだからね」


「なにそれ…怖い…」


「ちなみに、今の日本でも土葬を行っている墓地もあるらしいですよ。さて、これで私の話は終わりです」


周囲の温度が少し下がったように感じる。

最初からなかなかパンチの聞いた話だった。


「さすが夏凜ちゃん!じゃあ次私が話してもいい?」


「ええ、もちろんいいですよ」


「ありがとう!じゃあ…2人とも【ババサレ】って聞いたことあるかな?」


「私はないですね…」


珍しく九條は聞いたことがないようだ。


「ババサレ…って確か妖怪でしたよね、昔ホラーアニメで有名になったはず」


俺の返答に嬉しそうな反応を見せる秋穂さん。


「そう!昔アニメでやってたよね!そのババサレなんだけど、夜家にいると突然やってきて、中にいる人を手に持った鎌で切り裂いてしまうんだって」


「それは物騒ですね…」


「だよね、それでこの話の怖いところが…ババサレは話を聞いた人の元にやってくるらしいの、だから、今夜辺り2人の元にやってくるかもね…」


決め顔で話す秋穂さんだが、対象的に九條は少し呆れていた。


「いや、今日私と秋穂先輩同じ部屋で寝るんですよ?それだと先輩も巻き添えくらっちゃいませんか?」


「あ…」


駄目だこの人。


「ま、まぁ分かってたけどね!わざとだよわざと!…じゃあ次春斗くんいってみよっか!」


露骨に話題を逸らす秋穂さん。

やっぱり駄目だこの人と思ったが、もう何も言うまい。

俺は姿勢を正し、とっておきの怖い話を始める。

その後も順調に話が進み次第に夜が更けていくのだった。

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