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とある日の幽霊部  作者: 月読つくし
第1章‐とある少女と幽霊部‐
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第6話〜新歓合宿開始④〜


「さて!今から向かう場所が、今回秋葉原を選んだ一番の理由になります!」


声高らかに宣言する秋穂さん。


「今回のメインイベントってわけですか?」


「そういうこと!ここからそんなに遠くないから着いてきてー」


テンションが上がっているのか、目に見えて歩く速さが上がっている。

そんな彼女に着いていきながら、俺は九條に話しかける。


「なぁ、こっちの方向ってなんかあったっけ?」


「まぁ一個あるわよ、ある意味私たちに相応しい場所が」


そう答えるところを見ると、彼女はどこに向かうのか察しがついているようだった。


「ん?それってどこだよ?」


「多分あなたも知ってる場所だとは思うけど、言ったら楽しみが薄れそうだから黙っておくわ」


「ちなみにその楽しみって誰にとっての?」


「秋穂先輩」


「だろうな…」


新歓合宿と聞いていたが、何だか逆に秋穂さんを接待しているような気がしてきたぞ。

まぁ、本人はめっちゃ楽しそうだからいいんだけど。


「2人とも早くー!置いてっちゃうよ!」


気がつくとかなり遠くから秋穂さんの声が聞こえてくる。

俺と九條は早足でそちらに駆け寄った。


−−

−−−


「さ、到着ですっ!」


「ここって…」


俺達が着いた場所。

そこは九條の言う通り俺でもよく知る場所だった。


「神田明神か…」


「そう!秋葉原で一番有名な神社だよね」


「確かにそうかもですけど…ここってパワースポットなんですか?」


神田明神はオタク文化に寛容な神社として知られており、数々の漫画やアニメで使われているため、聖地という印象が強い。

だが反面パワースポットのような神聖な場所というイメージがあまりないように感じる。


「まぁある意味で、東京屈指のパワースポットと言えなくもないわね」


「そうなのか?神田明神って俺的には9人組のアイドルグループが練習に使ってたってイメージが強いけどな」


九條の返答に、俺は境内にある険しい階段を指差しながらそう返した。


「ま、まぁ最近のイメージはそうかもだけど…。わたし達的には絶対に抑えておかなきゃいけないパワースポットなんだよ!」


「そうなんですか…?」


「もちろん!だってここは…平将門が祀られてる神社なんだから!」


意外な名前が出てきて驚いた。


「平将門ってあれでしょ、新しい天皇を名乗って国家に反逆したっていう武将」


「そうそう!まぁ結局その反乱は失敗しちゃって処刑されちゃうんだけどね。でも処刑されて首を斬り落とした後も喋ったり、生首だけで空を飛んだりしたらしいよ」


「あぁ、確かにそんな逸話ありましたね」


「さすがに盛られた話だとは思うけどね。でもそんな経緯があって平将門に付けられた異名が…」


「日本三大怨霊の1人、ですよね」


「だね!さすが夏凜ちゃん!」


「日本三大怨霊…なんか聞いたことあるな」


昔の心霊番組で取り扱っていたような記憶があるが、かなりおぼろげだ。


「最近はあまり聞かないもんね。日本三大怨霊っていうのは、字の通り日本で最も邪悪な悪霊3人のことなんだけど、面白いのが3人とも実在した人達なんだよね」


「歴史の偉人ってことですか?」


「そう、具体的には崇徳天皇、菅原道真、そして今回の平将門の3人。結構みんな有名でしょ?」


結構どころか歴史にあまり詳しくない、俺でも知っているような超有名人だ。

でもそんな偉人達が悪霊扱いされているとは、俺の中で地味に衝撃だった。


「首だけで動いた平将門は何となくわかりますけど、残りの2人はなんで悪霊扱いされてるんですか?」


「うーん、その話は長くなるからまた今度にしよっか!お楽しみはとっておきたいしね」


いたずらに微笑む秋穂さん。

気になるがまぁ次回のお楽しみというなら、それに従おう。


「とりあえず今回は平将門に集中!どう?神田明神がパワースポットだっていった理由分かった?」


「えぇ、怨霊を祀ってる神社だとは思いませんでしたけどね」


「まぁ平将門に関しては怨霊の側面もあれば、東京の守護霊なんて言われてたりもするからね。神田明神はどっちかって言うと守護霊としての平将門を祀ってる感じだよ」


「守護霊?」


「そう!平将門を祀る神社って、実は神田明神以外にも全部で7ヶ所あって、その所在地を結ぶと北斗七星と同じ形になるんだって」


「おぉ…オカルトっぽい」


「だね、そしてそれが結界の役割を果たしている、なんて説もあるから一概に悪霊と一蹴できないんだよね、平将門って」


日本三大怨霊の一角兼、東京の守護霊か。

何とも相反する肩書きだが、中二心をくすぐられるな。


「それだけ力がある存在だったってことよね」


「なるほど、な」


オタクの聖地と思っていた神田明神が、まさかそんな大物を祀っていたとは、神社とはつくづく調べてみないと分からないものである。


−−

−−−


神田明神を後にした時には、辺りも程よく暗くなっていた。

そろそろ良い頃合いだろう。


「さてさて、あたりも暗くなってきたしそろそろ…」


「解散しますか」


「なんでよ!?合宿って言ったでしょ!今日は泊まりなの!」


「「え?」」


「え?」


秋葉原と聞いた時点で当然日帰りと思っていたが、秋穂さんは本当に合宿するつもりだったらしい。


「私、一泊する準備できてないですよ?」


「大丈夫!ホテルとったし、一通り揃ってるから!」


「いやいや、別に近いんだし普通に帰ればいいのでは…」


「それじゃ合宿にならないでしょ?合宿だよ?やどをあわせるんだよ?」


「まぁそうですけど…」


「まぁ着いてきてよ!2人とも気に入ると思うから!」


そんなこんなで終わりと思っていた新歓合宿は、まさかの延長線に突入となるのだった。

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