第6話〜新歓合宿開始①〜
季節はゴールデンウィーク。
大学入学から1ヶ月が経ち、奇妙な新生活にも慣れてきた頃。
「ねぇ、新歓合宿やろうか!!」
「「嫌ですけど」」
唐突な秋穂さんの問いかけにハモりながら否定する俺と九條。
「2人とも酷くない!?」
「このサークル、新歓合宿なんてやる規模じゃないでしょう?」
「規模とか関係ないから!大事なのは気持ちだから!」
「気持ちの面でも3分の2が否定派ですよ」
「うっ…」
ものの数秒で論破されてしまう秋穂さん。
九條は落とせないと悟ったのか、何かを訴えるようにこちらを見てくる。
「はるとくん、本当は行きたいよね…?」
「別に…」
「行きたいよね?」
「いや、だから別に…」
「い・き・た・い・よ・ね?」
「怖い!圧が!怖い!」
笑顔だが、鬼のような気迫をまとう秋穂さん。
ほんとこの人の強引さは時折恐ろしい。
まぁ、美人に迫られるというのは悪い気はしないから、たまにならいいんだけどね、うん。
「ね!?行きたいよね?私が誘ってるんだし行きたくないわけないよね!?」
「先輩…それパワハラですよ」
俺への圧に対して冷静な突っ込みを入れる九條。
「だって、行きたいんだもん…」
咎められたことで少ししょぼくれる秋穂さん。
何だこの可愛い生き物、一瞬行くっていいかけたぞ。
「夏凜ちゃん…どうしてもダメ…?」
パワープレイが通じないと分かったため、次は泣き落としにかかることにしたようだ。
そしてその作戦、恐らく効果は絶大である。
「え?…いや、どうしてもという訳では…」
「一緒に行こ?ね?」
「えっと、その…」
「夏凜ちゃん…おねがい!」
「はぁ…仕方ないですね」
「えへへー、ありがとう!」
あれだけ拒否していた九條が、ものの数秒で陥落してしまった。
恐るべし、秋穂さんの泣き落とし。
そして、こうなると…
「じゃ、春斗くんも来てくれるよね?」
「…やっぱりそうなります?」
「とうぜん!」
「私達だけ行って、あなたは休むとか許さないからね」
九條が行く派になったことで、完全に均衡が崩れてしまった。
これは行かないという選択肢はなさそうだ。
「…分かりましたよ」
「よし決まり!じゃあ場所なんだけどね!」
こうして俺達幽霊部初の新歓合宿が決まったのだった。
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2023年5月、俺達は秋葉原にいた。
「さて!ただいまより我が幽霊部初の新歓合宿を開催致します!!」
高らかに開始の宣言する秋穂さん、朝の9時とは思えないほどのテンションである,
対象的に九條は死んだ目をしていた。
「なんで合宿地が秋葉原なんですか…」
不満を漏らす九條。
まぁ、無理もないだろう。
なぜなら秋葉原はうちの大学から3駅ほどしか離れていない、言ってみれば超近場なのである。
「いや、好きですよ秋葉原…私もホラーゲームとか買いによく来ますし。でも合宿地がアキバって…」
ごもっともである。
確かに秋葉原は観光地としては有名だが、地元学生が合宿地として選ぶパターンはまぁないだろう。
「甘いね、夏凜ちゃん!秋葉原を選んだのはちゃんと理由があるんだから!すぐわかると思うから楽しみにしててね♪」
随分と上機嫌な秋穂さん。
どうやら考えた上でこの場所を選んだようだ。
「ま、色々紹介したいこととかやりたいこととか考えてるからさ!今回は先輩に任せてよ!」
そう言うと胸を叩いてみせる秋穂さん。
これから一体何が始まるのだろうか、いささか不安は残るが、まぁオカルト関係という事ならこの人が外すこともないだろう。
「じゃあまずはー、あの神社から♪」
そういうと先陣を切って歩き出す秋穂さん。
かくして、期待と不安が入り混じった幽霊部の新歓合宿が始まるのだった。




