閑話休題⑤〜八重雪那?〜
雪那さんとの出会った日の翌日。
「なんか、すごい匂いするんだけど…」
部室に来てからすぐ、九條が顔をしかめながら呟く。
「あー、言われてみればそだね。。」
「羽倉くん、ちょっと外出ててもらえる?」
「いや、なんで原因俺みたいになってんだよ…」
「だって何かが腐った臭いがするもの。腐敗臭といえばあなたみたいな所あるでしょ?」
「お前な…」
人を腐敗物扱いするとは相変わらず俺に対する扱いが酷いな。
しかし確かにこの腐敗臭は中々のものだ、一体どこからこんな匂いが…
「あ…」
考えを巡らせたところで1つ思い当たる節があることに気がつく。
俺は黙ってゴミ箱を覗き込む。
「なるほど…これが原因か」
「ゴミ箱…?何か変なものでも捨てたわけ?」
「いや、腐った食べ物が入ってるんだよ」
俺の返答にきょとんとした顔を浮かべる2人。
「えーと、羽倉くん?どうしてそんなの捨てたの?」
「いや、これは俺じゃなくて…」
「春斗くんじゃない?…そしたら、もしかして八重ちゃん?」
「八重さんって誰ですか?」
秋穂さんの言葉に九條が疑問を投げかける。俺自身も八重という名前に聞き覚えがなかったので、一瞬誰のことが分からなかった。
「ほら、前に話したの覚えてる?私と一緒に幽霊部を作った子」
「あぁ、確かに言ってたかもですね」
相変わらず九條は他人に興味がないようで、秋穂さんの話を忘れていたようだ。
しかし秋穂さんの話から察するに、八重という
のはやはり雪那さんの事を指しているようだった。
「それで春斗くん、もしかして八重ちゃんに会ったの?」
「えぇ、まぁ、昨日偶然」
「そーなんだ!?部室に顔を出すなんてめずらしい」
心から驚いたような表情を浮かべる秋穂さんに、九條が突っ込みを入れる。
「部室なんだし、部員が顔を出すのくらいは普通なんじゃないですか?」
「うーん、八重ちゃんこのサークルが出来てから数えるくらいしか来たことないからなー、基本一人が好きな子だから…」
「あぁ、確かに本人も言ってましたね」
「でしょ?だから基本的には八重ちゃんがここに顔出すことってないんだ、もうほとんど幽霊部員状態だよ」
幽霊部だけにね、とあっけらかんと答える秋穂さん。
俺の頭にここで1つの疑問が浮かぶ。
「秋穂さんとせつ…八重さんって仲いいわけじゃないんですか?」
思わず雪那さんと言いかけたが、俺一人が名前呼びするのも気が引けたため、慌てて言い直す。
「私は友達だと思ってるよ?でも八重ちゃんはどうかなぁ…」
あはは。と少し乾いた笑いを浮かべる秋穂さん。
「え、じゃあどうしてサークル一緒に作ったんです?」
「そこには深い事情があって…うちの大学ってサークル一人じゃ作れないんだよね、最低でも2人以上で申請するの…」
大学のサークル設立にそんなルールがあるとは知らなかった。
だが、逆に2人いればサークルは作れるわけか、条件としては意外と緩いような気もする。
そんな事を考えながら秋穂さんの話に耳を傾ける。
「それで、もう一人を探してたんだけど、ちょうど授業で八重ちゃんと隣になることがあってね、少し話したらホラー好きだって分ったんだ」
「まさか…」
「そう!もうこの人しかいないと思って頼み込んだの!それで基本顔を出さないけどそれでもいいならってメンバーになってもらったんだよ!」
「あぁ…そうだったんですか…」
要するに秋穂さんが強引に誘って、サークルメンバーにしたわけか。
たった2人のサークルに顔を出さない人がいることがずっと疑問だったが、ようやく謎が解けた。
「八重さん…かわいそう…」
「な、なんでよ!?」
九條の口をついて出た呟きに慌てて突っ込みを入れる秋穂さん。
しかし、幽霊部の幽霊部員八重雪那さんか。
次に会うのはいつになるのだろうか。




