ドラゴンレース
なんかこの鳥、1日でデカくなってないか?
「グア!」
俺が目が覚めると野太い声が聞こえた。
見ると、真ん丸だった体型から足が長く伸びて首も長くなっていた。なんていうかダチョウっぽい。
凄い変化だ。
高さは俺の胸くらい。まだ人を乗せるのは無理だな。
グウゥ……。
腹が減っているらしい。だから宿屋の親父に頼んで、煮豆などエサを貰ってきた。
一日でここまで育つとか……なんかすさまじい気がしてくる。
「お前、まだ生まれて一日しか経ってないぞ」
「グア!」
スリスリと俺に懐くティルに自然と笑みが零れる。
別に動物に対する愛情が目覚めた訳ではない。
大きくなったら何をさせるか心が躍っているだけだ。
っと、またも羽根が生え変わってよく見ると白と桜のまだら色になっている。
ティルはまだ生まれたばかりだと言うのに、元気に走り、じゃれてくる。
「グア!」
犬ではないが、木の枝を遠くに投げ、ティルに拾わせて戻ってくる遊びをする。
足は速いようで、枝が地面に落ちる前より早くキャッチして、戻ってきた。
なかなか知能がある。
ククク……やっと俺にも運が廻ってきた様だな。
とまあ、イナンナが起き出すまでティルと遊んでいた。
一種の清涼剤だよな。こういうペットって。
「アスタ。今まで見せた事の無いさわやかな笑顔をしてるわね」
イナンナが起きて俺を探して来た所、なんか不機嫌そうに呟く。
どちらかといえば邪悪な笑みだが………
「どうした?」
「何でもないわ」
「グア?」
ちょん、ちょん。とイナンナをくちばしで軽くつつくティル。スキンシップを取っているのだろう。
「はぁ……しょうがないわね」
イナンナは笑みを浮かべてティルの顔を両手で撫でる。
「グアァ……」
ティルは気持ち良さそうに目を細めて撫でたイナンナに擦り寄った。
「さて、今日はどうするかな?」
「そうねぇ、ティルのエサ代の節約の為に東の草原に行ってみるのは、どう?」
「ふむ……そうだな」
あの辺りは雑草が生い茂っているし、良い場所だとは俺も思う。
「よし、じゃあ行くか」
「グア!」
「えぇ!」
まあ、こんな感じで気楽に草原へ行って、魔物と戦い。Lvも少し上がった。
俺 Lv23
イナンナ Lv25
ティル Lv10
今回はティルのエサとかを重点的に回っていたので今日の収穫はまちまちだ。
その日の夕方。
ティルが立派なヴォラティルに成長した。
「早いなぁ……」
何かピキピキと骨が軋む様な音が響いている。成長音という奴だろうか。
「グア!」
もう、人を乗せられるくらいに成長したティルは俺の前で座る。
「乗せてくれるのか?」
「グア!」
当たり前だというのかようにティルは鳴いて、背中に乗るよう頭を向ける。
「じゃあ失礼して」
手綱とか鞍とか付けてないけど大丈夫なのか?
とは思ったけど、乗れと言うのなら乗ってやるか。
落ちても大丈夫だろう。
乗り心地は……羽毛のお陰で悪くない。
バランスさえちゃんと取れば問題なさそうだ。
「グア!」
すいっとティルは立ち上がる。
「うわ!」
かなり視界が高くなる。……これがヴォラティルに乗って見える景色なのか。乗馬とかしたこと無かったから知らなかったけど、生き物に乗って進むって、何か感慨深い気もする。
「グアアア!」
めっちゃ機嫌よく鳴いたかと思うとティルは走り出した!
「お、おい!」
「アスタ――」
ドタドタドタ!
は、早い! 景色があっという間に後ろに通り過ぎていく。
イナンナの声が一瞬で遠くなった。
ドタドタドタ!
草原を軽く一周すると、場所の前で止まった。
そして座って、俺を降ろす。
「大丈夫!?」
イナンナが心配そうに俺に駆け寄る。
「あ、ああ。大丈夫だ。しかし速いな」
大して疲れてもいない様子のティルは自らの羽の手入れを始めている。思ったよりもスピードが出るのに驚いた。
「さてと、今日はこれくらいにして戻るか」
俺たちが村に戻ると、村人達がなにやら集まっていた。
俺は顔をのぞかせると、教会で見覚えのある男と女が立っていた。
「王の命令で、この村の領主に任命されたハーネス様です。今後、村の領主としての権限で、村の出入りの度に銀貨50枚を税として納めるように」
「そんな、銀貨50枚なんてどこにそんなな金があるんだーー。俺たちは食って行くのもやっとなんだぞ」
村人たちは横暴な権限に異論を唱える。
「これは王の命令です! 文句のある奴は処罰します」
女が合図すると王の部下らしき騎士達が、村人たちに剣や槍を向ける。
まったく、あのクソ王はなにも変わらんな。痛い思いをして少しは変わったと思ったが……
「そんな金コイツらに払えるわけないだろ」
俺が声をあげると、そうだ、そうだと村人から賛同の声があがる。怒ったハーネスは俺の方に駆け寄ってくる。
「おい、お前!文句があるの……」
「うっ、うーん!?」
ハーネスは俺に顔を近づけてマジマジと見る。
「あっ、お前はアスタ!」
「アスタ知り合いなの?」
「教会の聖者候補さ」
ハーネスはチャールズにいつもくっ付いて奴だ。金魚のフンみたいな存在だ。
チャールズがいなくなった今、こいつが王に上手く取り入り出世したと言う事か。
「お前、ここの宿代が一泊いくら知ってるのか?」
「えっ……」
「一泊銀貨一枚だぞ! お前らはコイツらに二か月分の金を払えって言ってるんだぞ!」
俺の問いかけに言葉が詰まるハーネス。
どうやら特に考えて答えてはいないみたいだ。
「ハーネス様! コイツは教会を追放された犯罪者です。言う事を聞く必要なんかありません」
ハーネスの隣にいた女が声を粗あげる。
おいおい、言ってくれるね。迷宮を止めたもの、魔王を倒そしてあげようとしてるのも俺たちだよ。
腹を立てた女従者は武力によって攻撃の合図をしようとしていた。
その時、面を付けてフードを被った謎の集団が現れた。
その集団の内一人がハーネスに文書を渡す。
その文書の内容を見たハーネスは激しく動揺し、突如村の領主をかけた戦い、「ドラゴンレース」をするように俺に持ちかけてきた。




