表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/34

卵から産まれた魔物

 翌日の昼間。

 ゾンビドラゴン討伐後、俺たちは村の宿屋に泊まった。

 イナンナが昨日、夜更かしてて寝坊した。なんか、枕片手にうんうん唸っていたが………

 俺たちは出かける準備をしていると。


「あ、孵るみたいよ」


 宿の部屋の窓際に置いておいたゾンビドラゴンから入手した卵に亀裂が入っていたのをイナンナが気づいた。

 何か生物の毛の様な、羽の様な、柔らかい物体が隙間から覗いている。

 本格的に生まれるのが近いみたいだ。


「みたいだな」


 何が生まれるのか興味がある。

 パキパキと卵に亀裂が広がっていき、しだいにパリンと音を立てて、中から魔物の赤ん坊が顔を出した。


「ピイ!」


 ふわふわの羽毛、頭に卵の欠片を乗っけた赤紫色のヒヨコみたいな魔物と俺の目が合う。


「ピイピイ!」


 魔物は小さいのに、元気良く跳躍し俺の顔にぶつかってきた。全く痛くないが、生まれたばかりだというのに元気いっぱいの魔物だ。

 俺はゾンビドラゴンの卵なので、もっとグロいやつかとイメージしていたが………カワイイ。


「これは何の魔物だ?鳥系か?」


 身体は俊敏でクチバシがある。


「うーん……私も魔物に詳しくはないから」


 イナンナも困り顔で答える。


「しょうがない。村の連中に聞いてみるか」


 聞けば答えてくれるかもしれない。

 俺が魔物の雛に手を伸ばすと、雛は俺の手に乗っかり、肩まで駆け上って、頭に腰を据える。


「ピイイ」


 スリスリと頬ずりをしている。

 なんか……懐かれたな。


「ハハ、アスタを親だと思ってるみたいね」

「まあ刷り込みだろうな」


 初めて見る相手が俺だったから親と思っているのだろう。卵の欠片を手甲に欠片を吸わせてみた。


 ファミリアシールドが解放されました。

 エッグシールドが解放されました。


 ファミリアシールド

 能力解放……技能ボーナス、魔物成長補正


 エッグシールド

 能力解放……技能ボーナス、料理技能


 俺たちは宿屋を出ると、村人と顔を合わせる。


「あ、聖者様」

「おはよう」

「おはようございます」


 深々と頭を下げられてしまった。


「ピイ!」


 頭の雛が元気良く鳴く。


「おや?」


 村人が俺の頭に乗っかっている雛に目を向ける。


「それ、どうしたんですか?」


 雛を指差して訪ねる。


「ゾンビドラゴンの中から見つけた卵から孵ったんだ」

「ああ、なるほど」

「この魔物が何か知らないか?」


 村人は雛をマジマジと見つめる。


「そうですねぇ……たぶん、ヴォラティルの雛だと思いますよ?」

「ヴォラティル?」

「ええ、なんなら村の外れに牧場がありますから、牧場主に見てもらうと良いですよ」

「わかった、行ってみる」


 俺はイナンナと一緒にその牧場を経営している奴の家に顔を出す。

 牧場はゾンビドラゴンの被害を結構受けていて、飼育していた魔物が半分くらい死んでしまっていたらしい。


「と言う訳で、この魔物はヴォラティルであっているのか?」


 牧場主に聞くと頷く。


「はい。見た感じ、ヴォラティルの雌ですねぇ」


 雛を持ち、マジマジと鑑定しながら牧場主は言った。


「ヴォラティル種は見た目は鳥なのですが、ドラゴン種に分類されていて、逆鱗に触れると国一つを滅ぼす力があるとかないとか………言われています」


 国一つ滅ぼす力?

 コイツからはそんな力があるとは思えんが。


「ピイ!」


 ヴォラティルの雛は俺の頭の上で鳴いた。


「コイツは何を食うんだ?」

「最初は豆を煮とかした等、柔らかい物ですね。大きくなったら雑食ですから何でも食べますよ」

「なるほど、ありがとう」


 とりあえず、村にある煮豆辺りで良いらしい。


「で、名前はどうするの?」


 イナンナが雛を撫でながら聞いてくる。


「売るかもしれないペットに名前をつけるのか?」


 こういうのって名前を付けると愛着が湧いて、売れなくなるとか聞くが。


「ずっと雛ちゃんとかヴォラティルって呼ぶわけ?」

「む……」


 それは確かに面倒くさい。


「じゃあ……そうだな、ティルとでも呼ぶか」

「……単純な発想ね」

「うるさい」

「ピイ!」


 名前をつけられたのを理解したのか雛は機嫌よく鳴いた。俺達はその後朝食をとって、馬車に荷物を乗せ出発の準備をする。


「あの聖人様……これを……」


 そう言って村の長から渡されたのは金の入った袋。


「聖人様、所望の金銭です。どうかお納めください」

「ああ……」


 俺は金の入った袋を受け取り、どれくらい入っているかを数える。

 ……そして半分ほど別の袋に入れて返した。


「え?」

「俺だけの力じゃない。この村にいる治療師の手柄でもある。そいつに渡しておけ」

「は、はぁ……」


 そう、今回はあの治療師が居なかったら危なかった。俺だけでは村の奴らの病を手当てし続けるのは限界だっただろう。

 そういう意味では奴が一番の功労者だ。


「じゃあな」

「あ、ありがとうございました!」


 村の連中が総出で俺達を見送った。

 夕方に差し掛かった頃、さすがの俺も異変に気が付いた。

 今日は思いのほか魔物との遭遇が多いな。


 野生のヴォラティルAが現れた!

 野生のヴォラティルBが現れた!

 野生のヴォラティルCが現れた!


「「「グア!?」」」


 ヴォラティル達はティルを見て驚愕の表情を浮かべる!ティルを見るなり、ヴォラティルA、B、Cは驚愕の表情のまま逃げ出した!


「なんだったんだ?」


 遭遇すると同時に逃げるとは……。

 ただ……なぁ……。

 ティルの外見が、目に見えて変化していた。

 小さなヒヨコだったティルが、今では両手で抱えて持っても重い程に大きく成長していた。

 一日も経ってないのだが………

 なんていうか、丸くて、饅頭みたいな体形になっている。


 ぐううう……。


 先ほどからティルから常時鳴り続けている音が気になる。念の為に、多めに買っておいたエサだが、とっくに底を付きてしまった。

 雑食らしいので、今は道端の野草とか牧草っぽいのを与えている。

 食わせても食わせても尽きぬ食欲…… 大食感もいいところだ。


「アスタ……」

「分かってる。魔物って凄いな」


 鈍感な俺でもわかる成長スピードの変化だ。


「ピヨ」


 鳴き方まで変わっていて、重いからと降ろしたら自分でトコトコと歩き出していた。

 こんなに成長するとは……大きくなれば馬車をひけるかな?

 と、期待をするのは良いが、体だけデカくて精神が未熟な魔物にならないか不安だが。


 そんな事を考えながら、やっとの事でその日の内に次の町に到着した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ