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憎悪の力

「うおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺はドラゴンの咆哮に張り合うように叫ぶ。だが、黒い影の人物は俺の身体に影を伸ばしながら絡みついてくる。俺はそれを無理矢理振り解く。と、


「ギァオ!?」


 俺をあざ笑っていた黒い影は、口元を歪ませ笑いが消える。


「死ね!」


 俺は瞬時に地面を蹴り、そのまま黒い影を斬りつける。

 黒い大きな影は呻き声を出しながら飛んで行った。


「ギャオオオオオオオ!」


 しかし、黒い影は俺の攻撃など物ともせず、直ぐに起き上がって俺の方へ駆けて来る。

 ……この剣でも倒すことが出来ないのか。

 黒い影は懲りずに俺に腕と、後ろから影を伸ばして絡みつこうとする。


「ムダだ!」


 俺は最も強いレッドウィンドシールドを唱え防ぐ。黒い影の攻撃は全て俺に効果が無いようだ。


「はは……馬鹿じゃないのか?」


 攻撃は効かないが、今の俺にあいつを倒す力がないな。

 そう思った直後、黒い剣から炎が巻き起こる。

 なるほど、憎悪の力とやらは俺が怒り狂えば狂う程、力が増すらしい。


「ギャオオ!?」


 影はその事実に驚き、転倒した。

 怯えるように俺から距離を取ろうとする。


「今更、命乞いか? 許すわけねえだろ!」


 影は俺が向ける殺意、怒りを感じ取っているのか、腕を振り回す。

 火力が足りない……存在その物を消滅させたい。


「――――ッ!」


 ソンナコト簡単ダヨ。


 アイツ等に抱いている感情を思い出せば良いンダヨ。

 マイン・アントワネット。次にクズ聖女、王、チャールズ、ミトラ司教、そして教会の連中。

 コイツ等から受けた事を一つ一つ思い出す。

 憎い……殺したい……。

 漆黒の剣に俺の怒りが流れて行くように、赤く染まっていく。


「全員……殺ス……」


 俺は憎しみに支配されるように、影の腕に体を侵蝕されていく。俺は憎悪の力を持って全てを消し炭にする。


 そこで誰かの声がした。

 ドクン……。

 それは……優しい声……。


「世界中の全てがアスタの敵になろうと、私はアスタを信じるわ違うと……何度だって」


 ……え?

 黒く歪んでいた視界が僅かに揺らぐ。


「信じて。私はアスタが何も罪を犯していないと信じてるわ。……私はアナタの剣がこの先どんな苦行の道であろうとも」


 声が俺に囁きかける。

 このまま殺意に飲まれてはいけない。


 イカリをワスレタノ?

 ……忘れわしない。だが、それよりも俺は自分を心から信じてくれている者を信じたい。


 ワタシニサカラウノ?

 俺は自分の道は自分自身で決める!


 ……イツデモワタシガアナタヲ狙ッテイルヨ……。

 黒い声がスーッと引いていき、視界が少しだけ鮮やかになる。


「ギァオオオオオオオオオオオ!」


 視界が鮮やかになると、ゾンビドラゴンが咆哮をして、俺に向けて焦げた腕とは反対の腕を振り下ろす瞬間だった。


「やめろ!」


 俺は腕を振り上げシールドを貼り、ゾンビドラゴンの攻撃を受け止める。


「ギャオ!?」


 そんな中、突如ゾンビドラゴンはおかしな声を上げ、胸を掻き毟りながら悶え苦しみだした。


「な、何んだ!?……」


 一体何が起こっているんだ?


「ギァオオオオオオオオオオオ!!!」


 やがてゾンビドラゴンはピクリとも動かなくなり、骸になった。

 俺はしばらく状況が飲み込めなかったが、動かなくなったゾンビ ドラゴンの死骸に向けて歩き出した。

 あれを解体して手甲に吸わせてみるか?

 そしてイナンナ……せめて遺体だけでも引き摺りだして、墓を立ててやらないと……。

 死骸に近づくと、モゾモゾと内臓が蠢いているのがわかった。

 これから一体、何が起こるというのか……。

 蠢きが一箇所で止まり、腹を食い破って何かが現れる!


「ぷはぁ!」


 そこには体中を腐った液体で滴らせた見慣れた女がゾンビドラゴンの死骸から体を出していた。


「ふう……やっと外に出られたー」

「イナンナ?無事だったのか!?」

「うん。無事よ」

「じゃあ……お前が食われたとき出たあの血はなんだ?」

「血? あぁ、闘う前に食べ過ぎたご飯を気持ち悪くなって吐いちゃったの」


 イナンナが食べていたのはトマトに似た赤い実……あれが吐いて血に見えたって訳か!?

     

「驚かすな!お前が死んだかと思ったんだぞ!」

「あの程度の攻撃で死ぬわけないでしょ」


 化け物かこの女は。

 いや、女神ではあるのは事実だが……。

 まったく……おどろかせやがって。


「あれれー、もしかして私のこと心配してくれたのー?」

「知るか」

「もぉ、照れちゃってさー」

「今度は俺自ら引導を渡してやろうか?」

「やーん」


 ニヤニヤしているイナンナに腹が立つ。後で覚えてろよ。


「それで何があった」

「うん。このドラゴンのお腹の中を切り裂きながら進んでいったら赤色に光る大きな水晶があったわ……」

「ヘー……」


 もしかしてこの水晶がゾンビの体を動かしていた大本なのか?

 イナンナが出てきた場所は胸の辺り……心臓か。

 しかしなんでそんなものが……。


「もしかしたら、魔王の力の結晶かもね」

「そうなのか」


 魔王は、自分の魔力を結晶化してそれを使って魔物を操れるとか聞いた事があるが……。

 だとしたら、この先色々と厄介だな。

 俺は念の為に、手甲にに吸わせてみた。

 やはり力が足りなくて解放されない。


「イナンナ、一緒にこの死骸を掃除するぞ」

「はーい!」


 まったく……本当にこの女神は俺を驚かせる。

 イナンナを見ていて思う。

 あの時、怒りに任せなくて良かった。

 イナンナの仇を討つ為に剣が変わったと言うのに、後半は怒りで完全に我を失っていた。

 あの時声がしなければ、俺はイナンナ燃やし、あいつ等を殺しに向ったはず。

 ……少なくともあの時は、その事しか考えられなかった。しかし、あの声は誰だったんだ!?聴き覚えがあるような……


「いただきまーす!」


 そんな事を考えていると、イナンナが腐った肉を食おうとしていた。


「おい、イナンナ!その肉は腐ってるぞ! 食うなよ!」

「腐りかけてても、ドラゴンの肉よ」

「腐りかけじゃない! 完全に腐ってるんだよ!」


 なんだか緊張感の無いまま、ゾンビドラゴンの処理は終わった。その処理の中に、紫色で変な紋章が描かれている卵があった。


 ………なんだこれ?ゾンビドラゴンの卵か?


 俺は孵化させて売れるかもしれないので、とりあえずゾンビドラゴンの皮とかドラゴンの骨とかは素材になりそうな物と一緒に、一部を馬車に乗せることにした。


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