第一話「俊足、圧倒的成長を遂げる(ぜろちゃい)」
一ヶ月の月日が流れ、俊足はようやく自分の身に起きた出来事を少しずつだが理解し始めていた。
まず自分は事故で死んだであろうこと、そしてなぜか自分は赤ちゃんに戻っていること。ここは地球ではないかもしれないということ。
事故で死んだというのは、ショックではあるがまだ理解できる。
しかし、何故今僕は赤ちゃんになっているのかというのは全く分からない。もう、そういうものと捉えるしかない気もするが。
また、赤ちゃん化の影響で、一ヶ月ほどまともに動くことができていないのだ。今までできていたことが突然できなくなるのは、想像以上にもどかしい。
また、ここは地球ではないかもしれないことについて。
理由としてはいくつかあるが、一ヶ月間地球で聞いたことのある言語を聞くことが一切ないこと、電子機器が全くないこと。
他にもいくらかあるが、決定的な理由は、
「こおくつばおま〜(この靴だよな〜)」
そう、靴である。現在僕は、ベビーベットのようなもので寝転がっているのに、靴を履いているのである。
決して、これは僕に衛生観念がないからなんて理由じゃない。
「う、あぁーあー」
僕は右足の靴を左足の靴のかかとに引っ掛けて精一杯の力を込めるが、いっこうに脱げる気配がない。そう、なぜか靴が脱げないのだ。
使われているのが日本で聞く機会のある言語でなく、さらに電子機器が全くない。それくらいなら、地球上にいくつかあるだろう。
いや、最近はアマゾンにWi-Fiがあるともいうし、微妙かもしれないが。
でもそれにしても、靴を履いた状態で産まれ、しかもそれは脱げない。というのが、当たり前になっているのは明らかに地球ではあり得ない。
そして、ここが異世界であるとすると、ひとまずは異世界語を覚えなくてはいけない。恐らく、この世界の言語を習得するだけで、靴のことや僕の家庭の事、この世界の文化なんかも分かるはずだ。
まあ、幼児は言語学習能力が高いだろうから、3歳くらいには日常会話くらいは理解できる様に今はリスニングに専念だな。
そして半年ほど経ち、、、
そこには立ち上がる俊足の姿が!
「え!?こんな早く立ち始めるなんてことある!?」
「ソフィア、やっぱり俺たちの子供は天才だったんだよ。ユニークシューズをもって産まれた時点で薄々気づいていたがな、、」
そんな親バカな会話をするのは、僕の両親であるソフィアとハギスだ。いや、実は親バカと言えないかもしれない。なぜなら僕は生後三ヶ月ではいはい、七ヶ月という短期間で立ち上がる偉業を成し遂げだけではなく、
「ぱぱ、ままぁー」
「私より先にパパのことを呼んだ!?」
「やはり、ラルクはよくできた子だ。流石俺の血を引いてるだけある。」
そう!僕は多少この世界の言語を理解し始めている上に、多少の単語を発せるのだ。
僕の今世の頭は天才的である。ただ幼児だから脳みそが柔らかいだけなのかもしれないが。
前世はこの世界での単語を翻訳なしで理解するのはいくら時間があっても足りなかっただろう。
本当に僕は末恐ろしいよ、これには自惚れるのも許して欲しい。
「もう、ラルク!ハギスなんかより私を呼んで!ほら、ままでちゅよー。」
うん。いきなりよくわからないことでキレないで欲しい。普通一歳未満の子に私のこと読んでって言っても伝わらないだろうし、自分より断然大きい人がおっきな声出したら怖いから。
親をよくない方向に進めてしまっている気がする。
くっ、これが天才児たる弊害か。辛いぜ
「ま、まま〜、、、」
僕は責任をとって嫌々ながら呼んでやる。
「お!偉いわねぇ〜。なでなでしちゃう!」
パァと笑顔を浮かべたソフィアママにもみくちゃにされる。
もうそれはなでなでって言えないんですよ。力強すぎてかえって痛いだけなんです。
そんなことはどうでもよくて、現状判明してることをまとめると
今世の名前はラルク・テイラーであること。
前世の時みたいに家名があるのが当たり前かもしれないし、偉い家にしか家名がないのかもしれない。
家庭に関しては、家はカテダイ村という村にあり、今のところ不自由そうにしている場面を見かけないので、別に貧乏とかではないと思う。
言語については、まあ一歳足らずで喋り始められた様に、天才的な僕の頭ならすぐ完璧になるだろう。文字に関してはまだ一文字も書けないから、3歳くらいから読み書きの勉強は始めるつもりだ。
一番重要なことは、【靴】についてだ。
まず、この世界の人間は産まれた瞬間から靴を履いていて、脱ぐことはできない。
僕は今までに、四十人ほどの人間を見てきたが、誰一人として靴を脱いでいるのを見たことがない。
まあうちのまわりだけ異常っていう可能性も0ではないけど。
また、何度も会っている人たちの靴を見ると、いつでも同じ靴を履いていた。
そして、産まれた時から今に至るまでに、僕の靴には当然変化はあった。
脱げないのならば当然と言えば当然だが
靴は装着者とともに、成長する。
基本的に、赤ちゃんが話せないのは喉の問題もあるけど、覚えてる単語が少ないからって理由が大きいらしい。
そしたらまあ、初手からバフがついてる俊足くんは早い段階で喋れるだろうなぁと、まあ流石に舌が全然発達してない生後一ヶ月目は発音しにくい音はきびしかったみたいですね。
体の動かし方も、感覚の問題も結構大きいから元々立ててたらすぐ立ち上がれるだろうなぁとか思って、一年切りで立ち上がらせました。
まあ身体的に立ち上がるの無理だよって言われてもこっちには靴の力がある!立ち上がった背景にも靴の姿はあったのです。縁の下の力持ちかっけぇ!
うん、後書きイタいな
題名と内容アレでいうのもなんだけど
まあLINEで一人で呟いてんの嫌いじゃないから、後書き書くの楽しいんだけどね!
とりあえず一話止まりとかいう最悪の展開は回避したから、今後に期待しといてくれ。




