プロローグ
「今の高校生は下校であんなに時間をかけちゃうのか、僕が学生の頃なんて走ってすぐに家に帰ってたのにな。きっとあいつらは足が遅いんだろうな」
そう呟くのは、この寒くなりはじめる季節にそぐわない短パンにTシャツという格好をした小太り中年男性の後藤俊足(32)。
彼は日々、部屋の窓から高校生カップルを眺めながらそんなことを続けている、すなわちニートである。
「あれ、ブラッ○サンダー切れたか」
チョコ菓子の袋に手を入れるが、何も入っていない。30円とは思えないクオリティの味、俊足もその味にハマった一人であった。
「久しぶりに外出するついでに、駄菓子屋にでも買いに行くか」
俊足はお気に入りの十五年物の財布を持ち、立ち上がる。そして、屈伸や伸脚といった足のストレッチを始める。
スーパーに行くだけでストレッチ?などと思うかもしれないが、これは俊足のこれからすることにとって重要なものであるからだ。
「ママ〜、行ってきまーす」
そうリビングに向けて大声で外出を告げた後、玄関で靴を履く。そう、自身の名と同じである愛靴、瞬足を。
俊足は扉を開け、家の前を通る道路に立つ。瞬間、彼はその小太りな体型からは想像できない速さで道路を駆け始めた、
「やっぱり走るのは楽しいな」
俊足は走りながらそう呟く。ニートとなってしまった彼だが、走ることに対する楽しさは子供の頃から変わっておらず、こうして外出する際には毎回走ることにしている。
そうして三分ほど走ると、俊足が子供の頃から足繁く通っている駄菓子屋に着く。そこで俊足はブラックサンダーを五つほど取り、いかにも駄菓子屋のおばあさんという雰囲気の女性へと、本当の祖母に喋りかけるかのような調子で呼びかける。
「京子ばーば、これ五つお願い」
「おお、久しぶりに来たね俊足。一個まけたげるから、うちの子の猫砂変えてきてくれんかね?」
「うん、わかった。今からやってくるよ。」
そう言って俊足は駄菓子屋の裏にある京子ばーばの愛猫、あんこのトイレへと向かう。こうして二十年ほどあんこの世話もずっとしてきているが、あんこはいっこうに衰えた様子を見せない。
俊足は黙々と猫砂を回収し、新しいものへと変えていく。彼はふと作業の手を止めて後ろを見る、そこにはあんこがいた。あんこはたまに作業中の俊足を見にくることがあるが、俊足が子供の頃にいつも追いかけ回した影響か、いつも振り向いた瞬間にあんこは逃げ出す。
例に漏れず、あんこは俊足から逃げようと走り出すがその先には高速で走行しているトラックが!しかし、あんこは止まらない。
「ッ!!!!!!!!」
気づいた時には俊足は走り出していた。猫は低くてトラックからは見えないかもしれないが、人ならば気づいてトラックは止まるはずだと考えて。
二秒後、全身を衝撃が襲った。俊足の体は強い力を受け、しなるようにして全身が曲がり、ゴム毬のように空中へ飛ばされた。
そしてアスファルトの地面に叩きつけられる。
「いだいよぉぉぉぉ、あぁぁあだれがぁだすけでぇぁ」
身体中が焼けたかのような痛みに襲われながら、俊足は泣き喚きながら助けを求める。だが、急速に意識は失われていき、、、、、、、、、、、、
「あぁぁあああぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ」
いつまでこの痛みが続、
「あぇ、?」
さっきまでの痛みが嘘だったかの様に自分の体から痛みは消え去っていた。この身に起こった惨状を考えて、そんなことはないはずなのだが。恐る恐る目を開けてみる。
「ば?」
驚くべきことに、眼前には知らない天井が広がり、周りには三十代ほどの女性たちが集まっている。さっきから驚きの連続に脳が追いついていないが、きっとここは病院なんだろうと考える。
何故、若い女の人だけなのか、さっきからうめき声のような声しか出せないのは事故の後遺症だろうか?いろんな疑問が頭を駆け巡る。
『あれ、産声止まるのはやくない!?これ大丈夫なの!?』
『いや、大丈夫よ。最初は泣いてたし、なによりソフィアの子だもんね!』
さっきから自分の体を抱えながら頭上で女性たちがなにやら話している。ていうか、抱える?僕は女性が抱えられる様な体格じゃないし、そもそも知らない言語で周りが話してるし!!
『ん、てかこれユニークシューズじゃん。これはヤバいって!!』
なんと言ってるかは理解できないが、その発言を聞いた周りの女性たちは騒ぎ立て始めている。
僕は夢でも見てるのか?まず自分の身に何が起こったのかを思いださなくては。
そして、思い出してしまった。ついさっき何が起こったか、
「あぁぁぁぁああああぁぁぁあぁぁぁぁ」
そして、あの焼き付く様な痛みは、自分にとって思い出しただけでも絶叫するほどのものであったということも
『よかった〜、ユニークシューズ持ちの子が元気で』
『シューズなんて関係ないじゃない。私はただ、ソフィアの子どもが無事産まれてよかったよ。ほら抱っこしな、これがあんたの子供よ』
そうして、ソフィアと呼ばれていた女性は俊足を抱き抱える。
『これが私の子供。ほんとに、産まれてきてくれてありがとう。』
ソフィアはそう言って涙を流して、そっと俊足の頭を撫でた。
「あぁぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあ」
『えぇ、あんたの子の産声すごいわね。すごすぎて心配になってきたわ』
『この子は将来が期待できそうだな、ハハハ』
『あれ、私産んだ瞬間から嫌われちゃった?』
そして部屋にいる女性たちは一斉に笑い合うのだった
なんやかんやあって開幕です
ほんとはめっちゃかいてたのに!下書きしてなくて!ぜんぶ!
後書きふっとんだぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁ
小説家ならめっちゃありそう。本業の人大変だね。
書いてみるとわかるけど、これだけでも五時間とかかかるし、本業のひとほんとすごい
これは内輪ネタの小説です




