キャロ無双
「シャアアアアアアアアアアアアアアア」
「【インフェルノ】」
「「オニイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
「【アイスニードル】」
迷宮内に熱気と冷気が次から次へと飛び交う。
先程から、俺たちは迷宮の一階を歩き回っているのだが、モンスターが現れる度、キャロが魔法の一撃で倒しているのだ。
「はぁはぁ、気持ちいぃ~」
右手の指で唇を撫で、恍惚とした表情を浮かべるキャロ。魔力を失い、息切れして辛そうなのだが、顔が赤く、妖艶な雰囲気を漂わせていた。
「なんなのですか、あの方は。まるで危険人物ではありませんか?」
キキョウが俺に近付き文句を言ってくる。先程まで以上に胡散臭い目でキャロを見ている。
「あいつは故郷でも王国に認められた凄腕のアークウィザードなんだよ。まさかここまで強いとは俺も知らなかったが……」
ここに来るためにした魔法の特訓のお蔭なのか、それとも魔力を温存しなくても良いということで制約が外れて、こちらが彼女本来の実力なのだろうか?
一階に出現するモンスターは近寄ることさえできずに倒されている。
「しかも、だんだんと魔法の威力も展開する速度も上がってませんか?」
「多分、強敵モンスターを倒すことで急激に成長しているんだろうな……」
これは、俺やキキョウもそうだが、最初は苦戦していたモンスター相手でも敵を倒し続けるうちに、段々強くなっていった。
青鬼の攻撃が遅く軽くなり、こちらの攻撃が鋭くなる。キャロのテンションの高さは、今まさに自分が成長していると実感してのものだろう。
「ライアス、早く行きましょうよ!」
キャロは振り返るとついてくるように言う。こうして見ていると、昔から何も変わっていないのだなと感じた。
彼女は後衛のくせに、いつだって俺たちの前に立ち好奇心旺盛に動き回るのだ。そのせいで俺もトーリもどれだけ振り回されたことか。
「そうは言うけど、そろそろ遅い時間だから戻ろう。あまり奥まで行くとその分帰還に時間がかかるから」
【脱出石】で出ても良いのだが、数を揃えていないので誰かが徒歩で帰る羽目になる。予備が必要ないアイテムだけに、多めに持つという想定をしていなかったのだ。
「うーん、まあ、大体わかったからいっか……」
キャロは口をすぼめながらも、どうにか言うことを聞いてくれる。内心ではまだまだ続けたいのだろう。
「やっと、ですか……」
キキョウがほっと溜息を吐く。俺はそんな彼女をじっと見つめていた。
ここ数日、ふさぎ込んでいたキキョウだったが、キャロが現れたことで元気になりつつある。
これまで避けていた迷宮に一緒に入れるようにはなったが、本人が戦えるかどうかはまだわからない。
俺としても、ここで無理をさせてまた小屋に籠るようになるのは避けたいので、キキョウへの対応は慎重にしたいと思っている。
「それにしても、あいつがいれば……」
キャロと言う存在は、これまで停滞していた状況をあらゆる意味で変化させる可能性がある。
一人では挑めずにいたボス部屋もまだ残っているし、彼女と俺の連携なら、危なげなく倒しきることもできそうだ。
そこにキキョウも加われば、ptを荒稼ぎすることも可能だろう。
今後のユグドラシル迷宮について考えを巡らせていると、何かに服を摘ままれていた。
「キキョウ、どうかしたか?」
ふと、キキョウが不安そうな瞳で俺を見ている。
「ライアスは、その……、彼女と一緒に故郷に戻るのですか?」
「ああ、そうだな。こうしてキャロがこっちにこれた以上、俺が向こうに戻る方法も存在しているってことになる。もしかするとドラゴンを相手にする必要もなくなるかもしれないな……」
俺がそう答えると、キキョウはドラゴンのことを思い出したのか表情を歪めて泣きそうな顔をする。
「ライアスは……! いえ、私はライアスが……」
何かを必死に訴えようとしてくるのだが、彼女は言葉を発する瞬間に口を噤む。俺は根気よく、彼女の言葉を待っているのだが……。
「ほら、さっさと帰りましょう! 今夜は再会を祝って呑むわよ」
「あっ…………」
キャロに抱き着かれ、迷宮出口へと歩かされる。
振り返ると、手を伸ばし固まるキキョウがいた。
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