第五話 モノ祓い神社
「なぁ、やっぱりお祓いしてもらった方がいいよ···」
学校の帰り道、ランドセルを背負った翔也が言う。
「だから何回も言ってるだろ、お金とかどうすんだって」
晃の言葉を受け、翔也が再び黙り込む。
·····あれから一晩たった。
変わった事は起こっていない。
正直な所、ここからどうやって死ぬのか、全く想像ができない。
自分が死んだら、親はどうするだろうか····。
悲しい想像に胸を締め付けられる。
いや、もしかしたら木城と同じように一家丸ごと·····。
「やっぱり行くべきだよ。どうせ死ぬなら」
「うるせぇ!お前は聞いてないだろ!」
晃の叫ぶ声に、翔也が首をすくめる。
この五人の内、翔也だけはあのラジオの声を聞いていない。···それが酷く羨ましい。
「行くべきかもな····」
ポツリと龍太郎が呟く。
「お前はどう思う?」·····と、眉を上げて軽く睨んでくる晃を見据えて、話す。
「俺も行った方がいいと思う」
バカバカしいと思ってるし、下らない。
そもそも木城の死とラジオが関係してるはずがない。
木城一家は誰かに殺されて、ラジオはただ壊れていただけ·····それが現実だ。そのはずだ。
────でももし、あの呪いが本当だったら····。死ぬのだ。取り返しがつかない。
事実を知るのは翔也だけ。だが、子供の言葉なんて誰も信じない。
あと二日、この圧迫感に苛まれ続けるのはごめんだ。
「はー、分かったよ·····」
「この近くに守吞祓神社がある。そこに行こう。」
小学生にしては珍しく、親から持たされたスマホを使って、龍太郎が言った。
「徒歩六分だってさ」
横から覗き込んだ翔也が全員の顔色を見渡して言った。
何となくワクワクしているような様子に少し苛立つも、その感情を飲み込んで、亜樹は頷いた。
◇◇◇
徒歩六分という案内は間違っていなかった。
閑静な住宅地の中に、砂利敷きの境内をドンと構えたその神社を見て、4人は息を吐いた。
つい先程までの、好き勝手なお喋りをやめて、白い小石の敷かれた地面を進む。
立派な石の鳥居を二つほど潜ると、寺のお坊さんらしい男が近づいてきた。法衣を着てはいるが髪は剃っておらず、歳も若い····大学生だろうか。
「これはまた·····。エラい物騒やな」
亜樹達4人を見たその坊主は、開口一番にそう言った。
「胸騒ぎがして、出てきてみたら·····。お前ら何したらそんな事になるんや」
整った形の眉を顰めて、早口にそう呟き、その男はこちらを手招きした。
「俺としては、絶っったいに関わりたくないんやけど···。そういう訳にもいかんしなぁ·····」
法衣にはとても似合わない、ごつい指輪のハマった右手をひらつかせて、男は亜樹達を手招きした。
「とりま此処で待っといて」
本堂の薄明かりの中に四人を座らせて、男は早足で去っていった。
「····」
その自然なスピードに、子供達は何も言えないまま、前方にある神棚と向かい合った。
「善次の言う通りやんなぁ、こらあかんやつや」
「な?言うたやろ」
板張りの床の冷たさを、だいたい膝で味わい尽くした頃に、先程の男が一人の老人を連れて戻ってきた。
横に並ぶ男と違い、その老人は法衣を着込んだハゲ頭で、誰がなんと言おうとお坊さんだった。
その坊さんは四人を一目見た後、こう言った。
「あんたら、最近なんかこう·····。家1000軒くらい燃やしたりしたんかいな??」