第三話 葛籠
「次そっちだー!」
一人の少年が、木の又に仁王立ちして、叫ぶ。
「よいしょ···。おい、晃!そこ代われよ!」
少年の身には重すぎる大きめの木の板を、晃の登った木の根元に下ろして、翔也が不満をたらす。
「そうだぞ····はぁ、俺達は···荷物を····ふぅ····」
丸めの体に、少し小さめの角材を背負った鈴木が、息も絶え絶えで抗議の声を上げる。
「でもよぉ」
木の上から二人を見下ろす晃が、体を揺らしながら口を開く。
「一人は見張ってないと」
「「ウゥー····!」」
「分かった分かった手伝うってば!」
翔也と鈴木の形相に押されて、晃が木から飛び降りる。
そして振り返り、心配そうな顔をチラチラと木に向けた後、二人と共に材料を運びに行った。
◇
「あれ?晃は?」
両手に何やら、色んな物が詰まったビニール袋を提げて、誰もいない木を見た木城は、高い声で呟いた。
「翔也達と木を運んでるんだろ」
後から来た龍太郎が、木城より更に2段ほど高い声で説明した。
「でももうできかけてるな····」
背伸びして、木の上に乗せられた小さな家らしきものを確認して、木城が呟く。
「完成が楽しみだ」
「そうだな」
三人目の少年───亜樹が、ガラクタを方に担いで合流する。
「なんか面白そうなもんあったか?」
「一回全部出してみるか!」
晃の鈴木と翔也が秘密基地の建設をしている間、木城と龍太郎と亜樹の三人は、近くのゴミ処理場に忍び込んで、面白そうなガラクタを頂戴してきたのだ。
「俺が持ってきたのはー·····これだ!」
「「おぉ〜!」」
木城のビニール袋から出てきたのは、シックな銀色のラジオだった。もっとも、かなり古いもので、動くのか怪しい。
「ラジオかー·····動くのか?」
「あぁ····」
龍太郎の問いに、木城が頷いて、ラジオの電源を捻る───、
〝ザザッ·····ザッ·····〟
ガっ、と電源がつき、砂嵐が荒い音を立てる。それを無視して、木城が左右のピッチを調節すると、明るい音楽が流れだした。
〝茨城県の今夜の天気は──、なることでしょう。───今週の予報です。〟
所々で雑音が混じるが、どうやら使えるようだ。
「やったな木城!すげーぞ、これ!」
興奮した面持ちで叫ぶ龍太郎に、木城はにこにこと頷いた。