プロローグ
父と兄が魔物による襲撃で亡くなった。突然のことだった。病弱だった母も悲しみに耐えられず2人を追うように儚くなった。
そこからわずか10歳だったシスティアナの世界は変わってしまったのだ。
ひとりぼっちになったシスティアナの元に見たこともない父の兄を名乗る男とその妻、息子が家に入り込み執事が止める間も無く住み着いた。
執事が言うに父の兄と言うのは間違いない事、今までシスティアナが見たことなかったのは先代だった祖父に見限られ領地から追い出された事を聞いた。
システィアナは10歳だった。幼く、無垢で、無知だったのだ―――。
叔父も叔母も従兄弟も最初はシスティアナに優しかった。
「システィアナ、ギルバートの代わりにもっと領地を繁栄させてみせるよ。ギルバ、いやお父様はどんな政策をしていたかな?お父様の意思を受け継がなければいけないから大事な書類はどこにしまっていたか知っているかい?」
「システィアナ、そんなに泣いていては立派なお屋敷が暗くなっちゃうわ。―そうだ、新しいドレスを買いましょう!」
「システィアナ、お兄様だよ。これから仲良くしてね。」
――――
無知なシスティアナは全てを肯定してしまった。大事な書類が入っている鍵のある場所もお父様から内緒だよ、と聞いて知っていた。父の傍にいたくてよく本を持ってきては執務をしている父の横で大人しく読んでいたからだ。
真面目な顔で書類を書いている父の邪魔をしたくなくて、話しかけることはしなかったが、時々こっそり本を影にして父の様子を見ていると気付いた父が優しく頭を撫でてくれるのが嬉しかったから――。
そんな父の代わりをしてくれると言う、それをシスティアナは信じてしまった。
執事は最後まで反対していたのに。
叔父一家がシスティアナの後継人となる手続きが完了すると全てが変わってしまった。
頼もしく時には厳しい執事はもういない。優しかった乳母も、こっそりお菓子をくれたメイドも。
システィアナの味方だった使用人は全て追い出されてしまった。