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戦う夜見さん【前編】【夜見さん視点】

 鈴木さんが運転する大型バイクに乗せてもらい目的地である公園を目指す。周りの車をどんどん抜いて走っているが法定速度は守っているのだろうか。スピードメーターは見ないことにしよう。


 兄さんが大久保さんに対して、お父さんが陽君にした時と同じように記憶を消して問題解決を図ろうとしているなら何とかして止めないといけない。あの方法は一時的に解決できるかもしれないけど、人と人の縁や運命はそのくらいでは変わらないものもある。うちと陽君が時間はかかったけど再びめぐり逢い、付合えたようにだ。だから大久保さんの記憶を消してもいつか今日と同じような日が再び来るかもしれない。そうならないためには今日ここで決着をつけた方がいい。


 さすがに公園の前で下ろしてもらうと目立つので、少し離れたところで降ろしてもらった。


「美月ちゃん僕はね、たいしたことは言えないけど彼と自分の気持ちを信じればいい答えが見つかると思うから。それじゃ、困ったことがあれば、またいつでも頼ってね」


「おおきにありがとうございます。いい報告ができるよう頑張ります」


 鈴木さんはグッドラックという感じでサムズアップのポーズを取りながら去っていった。いい人なのだが最後まで距離感と接し方がいまいちわからない。


 何か連絡が来ているかもと思って一度スマホをチェックすると陽君から一件のメッセージが届いていた。内容は今日の放課後に大久保さんが話していた内容として、復縁を迫られたことと大久保さんの浮気相手はうちが送り込んだ罠だと思っているということが書かれていた。


 もちろん、うちは大久保さんにそんな人物を送り込んではいない。うちを始め神使のキツネの一番の目的は陽君の幸せである。だからこそ陽君と大久保さんが付き合っている時は御利益としての許嫁の派遣は停止されていたのだ。


 公園に入ると街灯の下のベンチにいる陽君を見つけた。


 そういえば、陽君は兄さんを止めること出来たのやろうか、さっきのメッセージにはそのことについては何も触れられてへんかった。


 今、ベンチに座っている陽君は本物なのかそれとも兄さんが化けた偽物なのかはわからへん。


 そう思って近づいていると反対側から大久保さんがやって来たのが見えたのでとっさに茂みに隠れてしまった。よく考えれば、どうしてうちが隠れなあかんということに気付いたけどしかたない。そのまま陽君の座っているベンチの近くまで隠れて近づき二人の様子を窺うことにした。この距離なら二人の話も聞こえそうだ。


 でも、これじゃあ、放課後とあまり変わらへん。


 大久保さんは挨拶も早々に陽君に名前呼びを要求してきた。


 まだ、うちだって名前で呼ばれてへんのに。


 陽君がどんな対応をするかと思っていたらすんなりと大久保さんを名前で呼び出した。


 なんで⁉ そこは断ってくれへんの。


 しかもかなりナチュラルな感じで特に恥ずかしがる様子もなく呼んでいる。


 ああ、そうか、この陽君は本物やない。兄さんが化けてる陽君なんや。兄さんなら女の子を名前で呼んだりなんて息をするより自然にできるはずや。


 その後も陽君は大久保さんの話を特に否定したり責めたりすることはなく聞いて、優しい語り口で語り掛けていた。これが幾多の女の子と仲良くしていた兄さんのやり方なのか。何となく二人の距離は最初よりだんだんと縮まっている気がする。


 このまま二人でええ感じになっても困る。兄さんは最終的にどんなふうにまとめるつもりなんやろ。


 そんなことを考えながら二人の様子を窺い続けていると二人の目が合い、陽君がゆっくりと手を動かすのが見えた。


 あかん、やっぱり、兄さんはお父さんが陽君にした時と同じことをするつもりや。


 陽君の手の動きを見てそう考えるのと同時に地面を蹴り、二人がいるところまで距離を一気に詰めていく。こんな方法で解決しようとしたってきっといつか同じ問題にまたぶつかる。だからこそ、ここできちんと解決しないといけない。


 ……陽君の手が大久保さんの頭に付く直前で何とか止めることが出来た。


「夜見さん⁉」


 陽君は驚きと喜びが入り混じったような顔をして、大久保さんは陽君がうちのことを呼んだことでこちらに気付きキッと睨んできた。


「ちょっと、夜見さん、どういうつもり! 私は陽と大事な話をしているのに。今さら陽と別れたのに出てこないで」


 どうやら、大久保さんの中ではうちと陽君は別れたことになっているらしい。きっと放課後のキスを見せられたことでうちと陽君が大喧嘩でもして別れたと思っているのだろう。


「ちょっと、夕何を言っているんだ。俺と夜見さんは別れなんかいないよ」


「えっ⁉ だって、もう一度話がしたいからここに私を呼んだのは、夜見さんと別れたからもう一度私とやり直しにきたんじゃないの」


「ここには話をしていた途中で夜見さんを追いかけて帰っちゃったからその続きの話をしようと思って来たんだ」


 一瞬きょとんとした顔をした大久保さんだがすぐに合点がいった表情に変わる。


「ああ、そうか陽は夜見さんに弱みを握られているから、夜見さんの前ではそんなこと言うのね」


 これは相当大久保さんの中で間違った物語が作られているみたい。

 ならば、こちらも手加減なしでぶつからないとあかん。


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします

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