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大久保夕はやり直したい【大久保さん視点】

 放課後に陽と話すことが出来てよかった。


 やはり、陽も私と別れてから夜見さんの告白までのタイミングの良さに疑問を持っているようだ。それに思い切ってキスもしてしまった。キスをしている時に夜見さんの姿が見えたけど、悪いことをしたという気持ちはなかった。むしろ、あっちから先にハニートラップを仕掛けてきたのだから、これでおあいこという気持ちだった。


 あの後、陽は夜見さんを追いかけて行ったけどどうなってしまったのだろう。私を罠にかけたことを問い詰めたりしているだろうか、それとも夜見さんが私とキスをしたことを問い詰めているだろうか。どちらにしてもこれであの二人が別れてしまえば、陽はきっと私のもとに帰って来てくれる。


 夕食を食べ終わったタイミングでスマホをチェックしていると陽からメッセージが届いた。思ったよりも早い展開に少々驚いた。彼からのメッセージを開くのにこんなに緊張するのは久しぶりだ。


『もう一度、話がしたいから夜分で悪いけど会えないかな? 場所は大久保さんの家に近くでいいから』


 こんなに急に会いたいということは、夜見さんが罠を仕掛けたことを認めて、二人が別れて、陽が戻って来てくれるということだろうか。はやる気持ちを押さえながら家のすぐ近くの公園を指定した。ここならコンビニにお菓子でも買いに行くと言えば家族から怪しまれなく出ることが出来る。陽からは三十分後にそこに行くという返事が来た。いよいよ私たちがやり直せるときが来たのだ。


 約束の時間に公園に到着するとすでに公園のベンチには陽の姿があった。夜の公園といってもこの公園は街灯が多くて明るいし、住宅街の中の小さな公園で不良がたむろするということもない。陽が座っているベンチも街灯の下にあるからかなり明るく感じる。


「陽、待たせちゃってごめん」


「ううん、俺もさっき来たところだから」


 私が声を掛けると笑顔で返してくれた。私が隣に座っていいかと聞くと、うんとだけ言った。


「急に会いたいだなんて、どうしたの? いつもはそんなこと言わないのに」


「うーん、何というか。メールや電話じゃなくてちゃんと大久保さんと話したいと思ってね」


 いつもよりも幾分明るい雰囲気で話す陽と目が合っただけで心臓が一気に高鳴る。


「ありがとう。どうせなら名前で……、夕って呼んで」


「……ああ、むしろ、今まで名前で呼んでなくてごめん。それに付き合っていたのに手を繋がなかったり、学校では付き合っていることを秘密にするようにお願いして悪かったと思う。なんというか、恥ずかしくてどういうふうに夕と付き合ったらいいかわからなかったんだ」


 私も陽も互いに初めての彼氏彼女だった。私もどういうふうに付き合えばいいか手探りだったし、陽も同じだったのだと思う。陽は周りからの視線とかを他の人よりも気にするところあるから手を繋がないこと、付き合っていることを秘密にしたいことを無理矢理へんてこな理屈で話していた。だけど、今日はとっても素直な感じで話している。どうしてだろう。


「ううん、そんなに謝らないで、悪いことをしたのは私だから。放課後に話した時に言ってた浮気相手なんだけどね。告白されていたんだけど、もうきちんとお断りしたの。」


「そうなんだ。俺はてっきり上手くいっていると思っていたんだけどな」


「あの人は罠だったから、私が陽と別れた頃から強引な感じになってきて、まだ告白の返事もしていないのにキスとかそれ以上を迫ってきたの。そんな時に陽なら絶対にこんなことしないのにって思ったの。陽は奥手だけど、私のことを大事に扱ってくれたもんね」


 陽は恥ずかしそうな表情を浮かべて頭をぽりぽりとかいている。


「どうだろね。俺はさっき言ったようにどんなふうに夕と付き合ったらいいかわからなかったから、あまり踏み込んだ行動をとれなかっただけかもしれない」


「でも、別れてから気づいたの、陽のそんなところがよかったって。馬鹿だよね。それに夜見さんが陽にくっついているのを見て私もあんなふうに積極的になればよかったのにとか思ってさ」


 陽と別れてからの方が陽のいいところがどんどん見えてきて、なんて自分は馬鹿な判断をしたんだと思っていたし反省もした。


「俺は夕に振られた時にどうして振られたのかわからなかったんだ。でも、夜見さんと付き合っている中で、夕とは付き合っていた時にカップルらしいことしてなかったなと気づけたんだ」


 陽の方を見るとちょっと悲しそうな顔をしている。どうしてそんな顔をするのだろう。今、こうやって過去を清算して私たちはこれから再スタートするのに。


 私の視線に気づいたのか、陽も私の方を見るとその表情のままゆっくり手を伸ばして私の頭を撫でてくれた。


 いや、正確には撫でてくれていない。


 なぜなら、頭に手が届く前にその手が夜見さんに掴まれて空中で静止していたからだ。


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします

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