表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

62/70

許嫁選定会議【前編】

 ――昨年末


 お父さんから急に電話が掛かってきた。普段は相変わらず必要最低限の会話しかしないから電話なんてかかってこない。


 だからこそ、何か重要な話かと思って電話に出た。


 話の内容は来年に達成される予定の許嫁コースの御利益の許嫁候補にうちの名前が挙がっているという内容だった。ただ、候補者はうち以外にも何名かいて、誰にするかという話合いが近々開かれるので、お父さんと一緒に参加するのかというものだ。


 陽君との仲は夏前に陽君に好きな人ができたらしいという話を聞いてからすっかり進展していない。というより、まともに話もしたことがないので進展具合としてはゼロである。


 御利益の効果発動を止めるために東京に進学したのに半年近く無駄に過ごしていた。そんな中で諦めていた許嫁の候補に入っているというならこれは最後のチャンスだ。


 お父さんには二つ返事でうちも一緒に参加することを伝えた。


 当日は新幹線で京都まで戻り、会議が開催される会場まではお父さんの車で向かった。数カ月ぶりの再会だけど特に会話はない。


 会場となっているのはとある神社の隣にある会館の一室だ。


 会議室に入ると既に候補者の親子が何組かいた。ただ、部屋の雰囲気としてはあまりよくはない。この時代に自ら望んで御利益のために許嫁になりたいなんて人はあまりいないだろう。それも相手が高校生なので集まった女の子たちもだいたいそれに近い年齢だ。


 うちは自分の席に着くと置かれている資料に目を通した。今回ここに集められているのはマッチング結果の上位十名ということだ。


 資料にはマッチングの結果の順位も載っていた。ちなみにうちは四番目という微妙な位置だ。通常なら一番目の子が許嫁になるのだろうけど、本人がどうしても嫌だということになれば、次の人というように下がっていくのだろう。


 この雰囲気と時代を考えればこの制度はこれを最後に廃止した方がいい。恋の応援コースプレミアムみたいなものを作った方がみんなのためだ。


 会議が始まる頃になると十組全員がそろった。席次と順位の資料を合わせながら自分より上位の子の様子を見てみる。三人全員がお通夜みたいな雰囲気なら待っていても自分まで回ってくる可能性がある。


 三番目の子は見るからに気が乗らないというオーラが出ているが、一番目と二番目は両親しか来ていなく許嫁になるであろう子供が来ていない。あまりにショックで家で寝込んでいるのだろうか。両親の様子はというとそこは大人なのであからさまに嫌という様子を出していない。もしかしたら、子供が風邪とかで来れていないだけでノリノリなのかもしれない。


 そんな観察をしているうちに司会の人が今回の経緯や陽君の人物像についての説明を始めた。司会の人にできればあまりいい情報を流さないで欲しいなんてこと思いながら説明を聞いていた。


 そして、いよいよ許嫁を選ぶ協議へと議題は移っていった。


 どないしよ。黙っていたら、大人のパワーバランスで決まってしまうかもしれへん。そないなことになったらここにいる意味がない。でも、なんて発言したらええんやろ。だけど、黙っていたらこの半年と一緒で何にもならへん。何か言わなあかん。


 司会の人がさて、それではと進行しようとしたところで、はいっと手をあげてそれを遮り立ち上がった。


「ここに集まっていらっしゃる皆様のご意見はいろいろあるかとは存じますが、今回の許嫁の件については、私、夜見美月に託していただきたいと考えておりますがいかがでしょうか」


 こういう場ではどんな風に発言したらいいかわからないので自分が思うなるべく丁寧な言い方を心掛けてみた。


 いきなりの立候補発言に司会の人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔になって、候補者達の視線も一気にこっちに集まりざわざわと会場が騒がしくなる。これでうちより上位の人から物言いがつかなければうちで決まりだろう。


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ