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陽君の様子が変【夜見さん視点】

 昼休みの終わり頃から陽君の様子が少しおかしい。なんだか落ち着かないような雰囲気だ。昼休みの終わりにメッセージアプリに放課後に用事があるから先に帰ってというメッセージが送られてきたけどそれと関係があるのだろうか。


 放課後になるともう一度同じことを口頭でも伝えてきた。やっぱり、心ここにあらずというか普段とは何か違う。この様子だと先生に呼び出されているとかではなさそうだ。心配というよりもなんだか怪しい雰囲気。


 こんなふうに気になってしまうと言われた通りに先に帰るという気にはなれず、教室を出て行った彼の後をそっとつけて行った。


 陽君の向かった先は旧校舎の裏だった。ますます怪しい。ここが告白のスポットであることは知っている。だとしたら、誰かから呼び出されて告白されるのだろうか。


 うちと陽君が付き合っているということはクラスメイトはおろか他のクラスでも知っている人は多いはず。それなのに陽君に告白をしてくる人があるのだろうか。自分は陽君に好きな人がいると聞いただけで告白はおろか声さえ掛けられなくなっていたので、驚くべきメンタルだと思う。


 こないなことにならへんように交際宣言しとったのに。


 こちらの姿が見えないように細心の注意を払いながらちらりと陽君がいるであろう場所を見る。後ろ姿ではあるが彼の姿を捉え、それと同時に彼と話している大久保さんの姿も捉えた。


 どうして⁉ と思うと同時にこちらの姿が見えないように物陰に姿を隠した。


 大久保さんと陽君は大久保さんが陽君を振って別れたはずやないの。なんで二人はここで会うてるのやろ。


 二人が別れたのは間違いないし、それは大久保さんが浮気をして、陽君よりも浮気相手の方を好きになったからだと思っていた。それなのに今さら二人で隠れて会うというのはどういうことだろう。


 陽君だって、大久保さんと会うなら一言話してくれてもいいのではないだろうか。こうやってこそこそ会うということは何かうちに知られてまずいことでもあるのだろうか。


 うちが今いるところからでは二人が何を話しているか聞き取ることは難しい。もちろん、キツネ耳の姿になれば、聞こえると思うが学校であの姿になることはリスクが高すぎる。


 もう一度ちらりと二人の様子を窺う。しかし、一瞬、大久保さんと目が合ったかと思って急いで身をかくした。


 最初と変わらず話している様子だ。でも、普通の告白シーンとはちょっと違う様子でもある。


 二人がなんの話をしているのかわからへんけど、うちと陽君は昨日ちゃんとお互いの気持ちを伝えあったし、もう付き合ってる設定ではなく正式に付き合っている。大久保さんが何を言うても全然問題ない……はず……。


 ちゃんと陽君を信じなあかんと思てるけど、心と頭の中がちぐはぐでどうしてええのかわからん。


 こういう時は一度ここから離れて、家に帰ってからそれとなく陽君に聞けばええ。きっと蓋を開けてみればたいしたことやない。それにもし、陽君がこのことをしらばっくれるようなら、そん時は……まあそん時はそん時で考えよ……。


 そう思って、帰ろうとしたのだけれど、どうしても気になってこれが最後だと思ってもう一度二人の様子を窺ってしまった。


 あれ? 二人の距離がさっきより近い気ぃする。


 そして、陽君が大久保さんの顔の高さに合わせるように少ししゃがんだと思ったら大久保さんが陽君に抱き付きキスを始めた。それもちょっと唇を合わせるようなキスではなくかなり情熱的な感じだ。


 呆気にとられてどうしていいかわからないまま立っていると、キスをしている大久保さんと完全に目があった。それは勝ち誇ったかのような目で陽君を渡さないと宣言されているかのようだった。


 訳が分からなかった。陽君はうちのことを好きって言ってくれたのに、なんで大久保さんと二人で隠れてこんなことしてるのだろう。大久保さんが抱きしめる直前に陽君の方から顔を合わしにいっているようだったし……。


 昨夜の言葉は嘘やったの。実はうちの知らんところで復縁しとって二股かけとったのやろか。いや、陽君に限ってそないなことはない。


 いろいろな感情でぐちゃぐちゃになって気が付くとその場を離れて学校を出ていた。


 あれ以上あの場を見ていたくないと脳が自衛的に働いたのかもしれない。


 このまま家に帰ることはできない。絶対に陽君と冷静に話なんかできない。面と向かってしまったら自分でも思っていないような嫌な言葉が出てしまう気がするし、顔も見たくない。


 通学路を離れて当てもなく歩いてしまう。


 茜の所ということも考えたが、さっきの状況を茜に話したら暴走した茜によってさらに混乱が生じるのではと思って今は保留にしている。


 堂々巡りの思考の中でふと一つの行く当てを思い出した。両親から困った時はと言われていた人の所だ。


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします

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