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大久保夕は語りたい(後編)【大久保さん視点】

 陽と別れた後も告白の返事は保留したままにしている。いくら陽と別れたからといって、すぐに別の人と付き合うという気持ちにはなれなかった。


 そうして、連休が明けた日にまさかの光景が教室で繰り広げられた。


 どうして、夜見さんが陽と付き合っているの。

 どうして、あんなにくっついているの。

 どうして、みんなの前で交際宣言なんかしてるの。


 夜見さんは人当たりもいいし、勉強もできる。さらに同性から見てもすごく可愛い。もちろん彼女がモテることは知っていたし、告白をいつも断っているという話も聞いていた。そんな夜見さんがどうして陽と付き合っているのだろう。


 夜見さんの話だと夜見さんが告白したのは、私が陽と別れた直ぐ後のようだ。このタイミングは偶然なのか? 


 私と付き合っていることを秘密にしたがっていた陽が彼女の交際宣言を受けても嫌そうにしていない。いったい付き合いだしてから二日間で何があったのだろう。


 オープンな関係の二人はもちろん一緒にお昼も食べに行っている。私と付き合っている時には一度もしてくれなかったのに……。


 付き合いだしてからまだ二日しか経っていないのに陽がそんなふうに夜見さんと接しているのが信じられなかった。


 その日の夜に我慢ができなくて陽にメッセージを送った。別れを告げた時に自分からブロックしたのにこっちの都合で解除して我侭だとは思ったけど、他にいい方法が思い浮かばなかった。


 しかし、陽から返事はなかった。いや、既読すら付かなかった。あまり連続で送るとメンヘラと思われるかもしれないので一日一通までにした。それでも既読も返事も来ない。


 私と別れてすぐに夜見さんと付き合いだすなんてどういうことだろう。私が知っている陽なら告白されたとしてもすぐに別の女の子と付き合うような性格ではないはず。


 何かがおかしい。もしかしたら、夜見さんに何か弱みでも握られているのではないだろうか。


 そのまま数日が過ぎた日に今度は二人で手を繋ぎながら登校してきた。

 どういうことだろう。私とはデートの時ですらなかなか繋いでくれなかったのに。


 髪もすっきりと切っていて、前よりもかっこよくなっていた。私が付き合っている時に髪を切った方がすっきりしていいんじゃないと言ったけど、今のままの方がいいということで切ってはくれなかった。夜見さんの勧めで切ったのだろうか。私のアドバイスは聞いてくれなかったのに、どうして彼女言葉なら聞くのだろう。


 そんなことを考えていてやっと自分が嫉妬していることに気付いた。


 自分が陽と付き合っている時に別の男子と遊びに行ったりしたことは世間一般的に浮気になるのだろう。でも、彼とはエッチもキスも手だって繋いでいない。そこは最低限の操を立てたつもりだ。


 陽と別れたのだって、私だけが悪いわけではない。陽は付き合っていても手をあまり繋いでくれなかったり、名前で呼んでもくれない。そんな時に陽とは違うタイプの人が現れてちょっとそっちに気が向いてしまっただけだ。


 別れた後も夜見さんが現れなければ、私たちは復縁できたはずだ。


 そう、夜見さんがいなければ私たちは上手くいったのだ。陽は夜見さんに何か脅されていたり、弱みを握られてあんなふうにいちゃいちゃ付き合っているに違いない。


 もう一度ちゃんと話をすれば、すぐには元に戻れなくても再び陽がわたしの方も見てくれるに違いない。


 そう思って、陽に机に一枚のカードを入れた。


 ラブレターではないけどすごくドキドキした。これなら読んでくれるだろう。陽は読んだら会って話をしてくれるはず。


 昼休憩の終わりにそのカードを手に取っている陽を視界の隅に置きながら様子を窺っているとこちらの方を見てくれた。どうやらちゃんと読んでくれたようだ。あとは約束の場所で待つだけだ。


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします


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