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ミッション イン ポッシブル

「えっ⁉ 聞いてないの。お父さんが言っていたんだけど、なんでも数十年ぶりに許嫁コースっていうのを達成しそうな人がいるんだって」


 この友人のお父さんもうちのお父さんと一緒で神使のキツネとして神様に仕えている。うちのお父さんは仕事熱心ではあるが仕事の話を家ではほとんどしないためこの話は初耳だ。


「許嫁コースっていうのはね。五千日連続で参拝して、かつ、油揚げも毎日奉納することで得られる御利益なんだって。達成するとその人にピッタリの人を許嫁として派遣するらしいよ。でも、五千日を達成してから動き出したんじゃ遅いから、もう水面下でいろいろ事前の調査が進んでいるみたい。それでね、今回御利益を達成しそうな人はもう高齢で結婚もしているから、その御利益を孫にまわして欲しいって言ってるみたいなの。孫だと私達と齢が近いから、お父さんがお前が選ばれるかもしれないぞって言ってるの。ほんと、マジ勘弁だよね。いくら御利益のためとはいえいきなり知らない人の許嫁なんて――」


 彼女はその後も話し続けていたが、途中からは何を言っていたか覚えていない。それよりも思い出されたのは、陽君が話していた彼のおじいさんのことだ。


 たしか、毎日稲荷神社に参拝して、油揚げも奉納してるなんて話をしとった気ぃする。もしかしたら、許嫁コースを達成しそうなのは陽君のおじいさんちゃうやろうか。


 友達の友達ではないがまさかこんなところから手掛かりが出てくるとは思わなかった。


 友人にそのおじいさんについてもっと詳しく知っていることはないかと聞いたけど、そっちは空振りだった。どちらかと言えば、自分が許嫁に選ばれるのではということの方が興味があるようだ。


 うちのお父さんもこの件について知っているかもしれない。もしかしたら、関わっているのかもしれない。


 でも、うちが聞いたところで教えてはくれないだろうし、うちもお父さんからそのことについて直接聞いたらなんだか負けな気がしてならない。


 そこで考えたのは、お父さんの仕事部屋に忍び込んで許嫁コースについての情報を探すという方法だ。お父さんは仕事を家に持ち帰ってやることが多いから、仕事部屋に何か手掛かりがある可能性は高い。


 その日からお父さんがお風呂に入っている数十分の間を狙って探し始めた。


 気分はちょっとしたスパイのようで頭の中では有名なスパイ映画のテーマソングが流れていた。


 机に置かれた書類や鞄の中身などを重点的に探した結果、三日目にして、鞄の中から許嫁コースについての資料を見つけた。


 資料にはこのまま参拝が続けば、再来年の二月に五千日を達成するらしい。友人が言ったように参拝をしている人は、自身ではなく孫にぴったりの許嫁を希望ということで、それを叶えるべく、すでにその孫の調査が始まっている。


 資料をめくりながらついに孫の情報にいきついた。


 名前は――東雲 陽


 まさかという思いだった。


 神使のキツネの娘が言うのもなんだけど、うちはそこまで御利益的なものや縁というものを信じていなかった。それは、みんなが御利益だと思っているものの幾分かは、今回のように裏でいろいろな人たちの働きによって成し遂げられているものもあるからだ。


 でも、今回ばかりはちょっと縁というものを感じた。陽君とうちの縁がまだ切れていない。


 資料には陽君の個人情報が満載だった。住んでいるところや通っている学校はもちろん、好きな食べ物、これまでの恋愛経験、学校での成績まである。


 資料を読んでいるとポケットに入れていたスマホがバイブを始めた。


 あかん、時間が無い。


 これは資料を探すのに夢中になり過ぎて、時間の経過を確認するのを忘れないようにするためにあらかじめセットしておいたものだ。とりあえず、いくつかのページを写真に撮り後で確認することにした。


 お父さんの部屋を出て、自分の部屋に戻るとベッドに寝っ転がりながら先程の写真を確認する。陽君のことについて詳しい情報がたくさんあるけど使えないものも多い。


 住所とかは急にその住所まで陽君に会いに行ったらただの危ない人でしかないのでダメだ。彼の携帯番号は初めてあった日にメモをもらったものがあるが、それも同様の理由により使えない。


 現在の彼女の有無は――なし。よかった。

 女性の好みは――むむっ、自分とは違う気がする。

 進学先の希望――東京都 私立智慶高等学校


 進学先については意外だった。彼の住んでいる地域とはかなり離れている。となれば当然、親戚の家から通うとか、一人暮らしをするということになる。


 これはチャンスではないだろうか。自分もこの高校に進学すれば再び彼に会うことが出来る可能性は高い。


 幸いにして、神使のキツネの子なら修行の一環ということで、大学生になる頃には一人暮らしをする。一部には高校生から一人暮らしをする者もいる。ならば、何とか両親を説得して智慶高校に進学するのもありではないか。兄さんだって、大学からだけど一人暮らしをしているし、兄さんが東京にいるから都合がいいかもしれない。


 それに陽君の好みの女性と自分は違う気がする。となれば、許嫁コースを達成した際に自分が選ばれない可能性が十分にある。


 もし、他の子が許嫁となってしまったらもう自分にはどうにも出来ない。ならば、そうなる前に御利益の発動を止める必要がある。それには御利益が発動されるまでに自分が陽君の彼女になればいい。


 友人の話だと、御利益が発動されるときに、彼女がいた場合は、効力が一時停止になるということだ。彼女がいるのに無理やり許嫁を派遣しても迷惑だからだ。だから、友人は御利益が発動される前に彼女ができれば、自分が選ばれる心配はないのになんて言っていた。


 それなら安心して欲しい。うちが御利益の発動を止める。


 陽君に接近するには同じ学校に通うのが一番だ。このまま京都にいてはどんなに足掻いても御利益の発動時に彼の隣に自分がいることは出来ない。


 それからは、両親に説明をするために智慶高校の情報を集め、もっとらしい理由を作りつつ、受験対策に乗り出した。自分の今のレベルは智慶高校に合格するには安全圏というわけではない。彼が合格するかどうかという問題もあるが、まずは自分が確実に合格するようにしなければならない。


 両親への説得は思ったよりもすんなりといった。お母さんは遠いところの高校なので心配をしていたが、お父さんは一晩考えると言って、翌朝にはOKをくれた。ただし、合格後もちゃんとした成績の維持等の約束はあったがそれは想定の範囲内だ。


 受験本番までの数か月間は何かに憑りつかれたかのように猛烈に勉強した。それは、あの時の自分の失敗を取り戻すという気持ちがあったのかもしれない。


 受験の結果は合格。それも成績優秀につき学費の免除付きだ。さすがにこの結果は一人暮らしを心配していたお母さんも喜んでくれた。


 陽君の合格はわからへんが、それはうちと陽君の縁を信じることにしよう。


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします。

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