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スマート珈琲でのこと

 子供だけで入って大丈夫かとちょっとドキドキしたけど、特に何もなく席に案内された。


 店内は床、壁のレンガ、革張りのソファーがこげ茶色で落ち着いた色合いになっていて、照明もレトロで優しい空間を作っている。


 そんな空間だからこそ小学生二人というのはちょっと浮いた感じだ。


 メニューを渡されてこういう時って何を頼んだらいいんだろうと悩む。ジュースの類だと子供っぽいだろうか? かといってコーヒーは飲めない。家族と来たら何も悩まないのに……。陽君も悩んでいるのか眉間に皺が寄っている。


「陽君、何するか決まった?」

「うーん、アイスカフェオーレにしようかな」


 よかった。コーヒーちゃう。コーヒーって言うたらうちが何を注文しても子供っぽく見えてまう。


「うちはアイスココアにしようと思います」


 注文を済まして、向かいに座る陽君を見るとちょっと落ち着かないような様子だ。それはうちも一緒でソファーに座っているのにバランスボールに座っているかのように重心が上手くとれないような感覚がする。


 今まで男の子と二人きりで遊びに行ったこともこうやってお茶したことだってない。これがデートにカウントされるのであれば初体験だ。


 さっきまで普通に話していたのにこれがデートではと考えた途端、急に恥ずかしくなってしまって、どう話していいかわからなくなってしまった。


 下に向けていた視線を上げると陽君と目が合った。彼はずっとうちの方を見ていたようだ。


「うちに何か付いてます?」

「あ、あの、夜見さんの髪――」


 本当に嫌だ。兄はこの髪色が気に入っているようだけど、うちはこの色でよかったことなんか一度もない。どうせならみんなと同じような色がよかった。


「夜見さんの髪綺麗だよね」

「ふぇい⁉」

「ああ、ごめん。急に変なこと言って。親しくない人にこんなこと言われたらキモイよね。本当にごめん。忘れてください」


 いったいどこから声が出てしまったのだろうか。いままで出したことのないような声が出てしまった。それよりも、陽君は今なんと言ったのだろう? 反射的に出てしまった変な声のせいでなんて言ったのかの記憶が定かではない。


 一方、陽君の方もこちらの声に驚いてか必死の平謝りをしている。


「ご注文のアイスカフェオーレとアイスココアになります」


 お互いに混乱している状態を切り裂くように店員さんが注文した品を運んできてくれた。


 とりあえず、落ち着こうと思い「いただきます」を言って口をつける。アイスココアの甘さで脳が落着きを取り戻してきたのを感じる。


「えっと、陽君はさっき何て言いはった?」

「だ、だから、本当にごめん。急に髪綺麗だよねとか言われても嫌だったよね」


 今まで、男の子に髪のことで悪口を言われても、綺麗だなんて言われたことはなかった。もちろん、女の子から綺麗だねとか言われたことはある。でも、それと男の子から言われるのは全く別だ。


「おおきに。そんなことありまへん。普段はそないなこと言われたことがなかったさかい、ちょっと驚いただけ。うちの方こそ変な声だしてすいません」


 そうは言ったものの陽君はすんと萎れてしまった様子だ。反射的に出てしまった声とはいえ悪いことをしてしまった。


「陽君、うちは全然キモイとか思てないんよ。せやからそんなにしょげんといて。うちは今までこの髪について悪口を言われることが多くあって、この髪の色が正直嫌いやった。でも、陽君に綺麗だって言われてめっちゃ嬉しかったわぁ。ほんまにおおきにありがとう」


 どう元気づけたらいいかわからなかったから兎に角思った言葉を繋いだ。自分がこの髪色で悪口を言われているなんて両親にも言っていないことを彼に言ってしまった。


 うちの方こそキモイとか思われてへんやろうか。


 陽君はさっきと同じ萎れたままの姿勢だけど、さっきと違って顔が耳まで朱くなっている。彼がアイスカフェオーレを飲みながら朱くなっている顔を冷やし始めたので、同じタイミングでうちも再びアイスココアに口を付けた。二人同時に飲み物を飲んだことで沈黙ができたが、そのおかげてお互いに冷静さを取り戻した。


 冷静になると、ここに二人でいることがここに来るまでと同じように思え始めて、自然に話すことが出来た。


 そこからはいろいろなことを話した。陽君が読んだ八兵衛明神が出てくるという小説やうちが最近面白いと思った本のこと。二人が共通で見ていたテレビ番組、子供のころに見たアニメなどなどだ。たぶん、クラスの女の子ともこんなに話したことはない。まして、自分が男の子とこんなに楽しく話すことができるとは思わなかった。


 ちらりと時計を見ればかなり時間が経っている。そろそろ帰らないと家族が心配するかもしれない。


 陽君にその旨を伝えると、彼は店員さんに声を掛けペンを貸してもらうと、紙ナプキンに自身の連絡先を書きそれを渡した。


「俺のスマホはキッズ用じゃないから夜見さんから連絡もらえれば出れるから」


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただけると活力になりますのでよろしくお願いします。

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