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陽さんはうちにとって――

「おはよ、美月」

「おはようさんです。茜」


 暮方さんの快活な話し方と夜見さんのはんなりとした話し方はコントラストが強い。だからこそこの二人が一緒にいるとそれぞれが強調されてよく目立つ。


 暮方さんと夜見さんは一年生のときから同じクラスということで仲がいいようだ。暮方さんは見た目はギャルだが、オタクで陰キャぽい俺にも嫌な顔せず普通に話しかけてきてくれる。オタクにやさしいギャルっていうわけでなく、誰にでも優しいギャルって感じだ。


「美月が東雲君と一緒に来るなんてめずらしいね。普段は一人なのに」

「ええ、まあ――」


「おはようさんです。陽さん」


 突如、特徴的な甲高い声とともに俺の机の前に現れたのは今時珍しいきっちり整えられたオールバックにちょろ毛、金属フレームのメガネがきらりと光る勝又だった。

 俺が夜見さんの方をずっと見ていたのでからかうためにわざわざ京都弁で話しかけたのだろう。


「おはよう、勝又。次、その下品な京都弁使ったらデコピンでメガネ飛ばすぞ」

「そんなこと言うなよ。俺とお前の仲だろ。ちょっとくらいふざけたっていいだろ。それに昨日ことは誰にも言ってない。この俺がだ」


 歩くタブロイド紙、勝又砲などと言われる彼が昨日の書店での件を誰にも言っていないのは確かに俺と勝又が友人関係にあるからだろう。


「その件はそのままにしてもらうと嬉しいよ。たぶん夜見さんも騒がれることは望んでいないだろうからさ」

「ああ、昨夜の夜見さんからのメッセージを見たときはけっこう怖かったぜ。表面的には丁寧な感じだけど、これ以上追及はするなって行間に書いてあるみたいだったからな」


 勉強の苦手な勝又がしっかりとあの文面を読み取れているということは、夜見さんがメッセージと一緒に何かに念を送ったのかもしれない。


「いつもはんなりしているけど、怒らしたらけっこう怖いかもしれないな」

「だったら、あとでもう少しお前から教えてくれよ。夜見さんはなんでお前なんかを誘ったのかとか、あの後進展はあったのかとかさ」


 お前は恋バナ大好き女子か。あの後の進展なんか話せるか。特にスキンケアの時のことなんて大金を積まれても話す気にはなれない。



「夜見さん、どうか今日の昼に時間作ってくれない?」


 普段クラスでは聞きなれない声がしたのと、声の主の方にクラスの注目が集まったことで俺と勝又の視線もその方向に向かう。

 夜見さんの前にはクラスメイトではない奴が立っている。見るからにスポーツマンというような髪型に適度な筋肉がついた爽やかな雰囲気の男子生徒だ。


「あれ誰?」


 声を潜めて勝又に問う。こういう時の勝又の情報はすごい。おそらくすぐに彼のことがわかるはず。


「あれは隣のクラスの柳だな。サッカー部で次期エースって言われてる。彼女は半年以上いないはずだ。ちなみに去年の冬に夜見さんに告白して振られてる」


 勝又のメガネがキラリと光り、さらさらと柳の情報を俺に聞こえるぎりぎりの声で呟く。

 やべーよ、勝ペディア。所属している部活だけでなく、彼女いない歴まで網羅されていやがる。ただ、夜見さんに振られたくだりをいう時にニヤニヤするのは趣味が悪い。


 昼に時間を作ってくれって呼出すってことは、もう一度夜見さんに告白するのだろうか? 一度告白して失敗しているのに再度挑戦するとは強靭過ぎるメンタル。しかも、みんなの前で呼び出すなんてどんな度胸しているんだ。


「みんなの前で呼び出しの誘いをすると夜見さんも断りづらいんじゃないか」


 なるほど、告白の返事ならまだしも、呼出す段階で断るのはこの場ではちょっと難しいかもしれない。

 夜見さんの隣にいる暮方さんもそのことがわかっているのかちょっとお冠のようだ。


「あ、あのお昼は用事あるので……」

「じゃあ、放課後でも、いや、別の日でもいいからもう一度話を聞いて欲しいんだ」

「そう急に言いはっても……」


「あのー、夜見さんが困っているようなので今日はお引き取りいただけませんか?」


 いつもならこんなことがあっても勝又と一緒に遠くから見物を決め込むところだけど、学校では〝恋人〟って関係でいると言ったからには手を繋いで登校はしなくても、困っていれば助けには入らないとさ。

 それにしても夜見さんは昨日のナンパといい声かけられ過ぎじゃないかな。


 いつも路傍の石にすぎない俺が突然割って入ってきたからクラス中の視線が俺の方に集まる。


 あー、これが嫌なんだよな。俺は目立ちたくないんだけどさ。


 横目で勝又を見るとニヤニヤと悪い顔をしているし、暮方さんは予想外の登場人物に驚いているようだ。


「誰君? 俺は夜見さんに話しているんだから入って来ないでくれよ」

「だって、どう見ても夜見さんが乗り気じゃないみたいですし」

「そ、そんなのわからないだろ。だいたい、お前関係ないだろ!」


 夜見さんのあの反応を見て、そんなのわからないだろって本気?


 こちらの乗り気じゃない発言に気を悪くしたらしく、語気がかなり強くなってきた。


 そろそろ、暮方さんとかから援護射撃が欲しいのだけど、俺の攻撃力は魔法使いの物理攻撃並だからもうヤバいぞ。


「か、関係あります。うちにとって――」


 夜見さんそれをいきなり言うのはまずい。もう少しみんなに俺と夜見さんが仲がいいということを周知させてからじゃないといきなりすぎて大変な騒ぎになる。


「うちにとってとても大切な人です」


― ― ― ― ― ―


 本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただいた読者の方感謝です。

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