明日からは学校……【夜見視点】
脱衣所に入りドアを閉めたところでふーっと大きく息を吐いた。
胸に手を当てるとびっくりするくらい大きな鼓動で心臓が動いている。心臓の動きが大きすぎて胸が痛いくらい。
あんなにキスしたら陽さんはうちのことをはしたない女やと思っているやろか?
キスをしたのは衝動的だった。
乳液を塗っている途中で陽さんが目をつぶって、声が漏れたあたりから彼の唇から目が離せなくなってしまって衝動的にキスをしてしまった。それも朝のように軽い感じではなく三度もしてしまった。三度目の時にこれではまずいと思って急いで離れたけど……。
昨日のキスも朝のキスも本当に軽く触れるかどうかのものだったと思う。けれど、さっきの途中からはこちらから求めるようなキスだった。
少し鼓動が落ち着いてきたのでドライヤーで髪と尻尾を乾かす。
鏡に映る自分が朱いのはお風呂上りやドライヤーが熱いからではない。
うちはもう二度もしくじってるさかい、きっと今回が最後のチャンスやから絶対に失敗せんようにせなあかん。
そう思っているのでかなり前のめりで陽さんに接しているけど引かれてないだろうか?
明日から学校が始まってしまうと二人でいる時間は一気に減ってしまう。だからこそ親密度を上げるために新宿御苑へのピクニックを提案したし、自信のあるお稲荷さんをお弁当にした。
きっと陽さんは学校では今までのようにただのクラスメイトとして接して欲しいと言うだろう。元カノとの関係もみんなには秘密にしていたみたいだし。ただのクラスメイトのように接するということは基本的に話すこともない関係だ。さすがにここに帰れば普通に話はしてくれると思うけど、それではただの同居人ではないのか。学校でも常にイチャイチャしたいと思っているわけではないけど……。
はー、どないすれば陽さんとの距離が上手く縮められるんやろ。
鏡をみると耳の先がふにゃりと垂れて弱気な自分が写っていた。
あかん、あかん、こんな顔してたら陽さんにいらん心配をかけれまう。
ぐっと手を上に伸ばして伸びをして気持ちを切り替える。大丈夫、きっと上手くやれると言い聞かせて。
― ― ― ― ― ―
本日も読んでいただき誠にありがとうございます。評価、ブックマークをしていただいた読者の方感謝です。




