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FC 悪魔の招待状

FCのマイナーゲームをやってみた感想文です。

うーん、これもなんとも評価しづらい作品でした。

私の歳だと『GB セレクション 選ばれし者』がドンピシャのリアルタイムで熱中した世代なので、どちらかというと「選ばれし者っぽいな」というのが本音ですが、容量の違いというか、さすがに悪魔の招待状の方が作りで云えば細部まで良く出来ています。

基本的な作りは選ばれし者と同じというか、BGMまでほぼ同じなので、そりゃ選ばれし者にドハマリした人にとっては涙ものの懐かしさを感じます。

チートは無いというか、使うと余計に話がややこしくなるゲーム特性のため、チート無しでスタートからエンディングまで攻略サイトを見ながらやれば約40分程度でクリア出来るゲーム内容ですが、攻略サイトを見ないとクリア出来ないんじゃないかってくらい謎解きが難しいゲームでもあります。とにかく最初から最後まで伏線回収の積み重ねで、一個でも手順を獲り逃がせば即ゲームオーバーとなるシビアな謎解きの連続。大体、離れにある温室に置かれた空の植木鉢にじょうろを持っていって、温室の外にある水道の蛇口をひねって水を出して水をくんで3回水をやると植木鉢から謎の植物が生えてきて実がなって、その実を食堂の皿の上に置くと悪魔が食べに来てカギを落とすなんて流れ、初見で分かる人いないでしょう。

最近の脱出ゲームアプリでもこんな複雑な流れの謎解きは無いと思いますし、あっても何らかのヒントがあると思います。なんの攻略サイトも見ずにこのゲームをクリアしようと思ったら、それこそ100時間くらいは楽しめるのかもしれません。

このゲームにはGB選ばれし者のような所謂、戦闘画面という物が無いので、モンスターが出てくるとそのモンスターに対して何をするか、アイテムを選んで使うとか呪文を唱えるとかを通常と同じ画面で選ぶ形式になるのですが、そこで間違った選択をしたり退治するアイテムを持っていなければ即ゲームオーバーとなります。このへんのシステムは非常に粗い。ストーリーもテイストもSFCの弟切草に非常に似ていますが、要は弟切草でひとつ選択を間違うと即ゲームオーバー、違った選択先は即終わりといった感じのゲームです。

ストーリーはざっと以下のようになります。

昔、その館には一人の白魔導師と一人の召使いが暮らしていました。そこへある日、ドラカンという男が白魔導師に弟子入りをして、その日から白魔導師、ドラカン、召使いの3人暮らしが始まりました。やがて弟子のドラカンは強い魔力を身に付け、密かにより強い黒魔法の研究も独自に始めました。しかし、そんなドラカンの動向に気が付いた師匠の白魔導師はドラカンの暴走を未然に食い止めるためにドラカンと戦い、ドラカンを館の地下に氷付けにして封印しました。しかし、ドラカンは既に師匠をも超えるような力を身に付けており、自分の体が完全に凍りつく前に師匠を異空間へと飛ばし、黒魔法を使って多くの魔物を魔界からこちらの世界に召喚してから凍りついて眠りにつきました。この時、ドラカンによって召喚された魔物たちは館に住み着き、魔物を恐れた召使いは置き手紙を残して館から逃げ去りました。

ドラカンが封印された氷を溶かすには、白魔導師が知っている解氷の呪文が必須なため、ドラカンに召喚された子分の魔物たちは館に留まって、白魔導師の残した呪文の書を解読して呪文を口に出来る人間が館に来るのを待ち構えていました。そこに偶然現れて捕らえられてしまったのが主人公の姉で、主人公は姉を救出するため館に入っていくというのがこの話です。ここがゲームのスタート地点です。

ゲームは、事故った車の中から唐突に始まります。

ここからもう的確にコマンド選択をしないと主人公が事故った車の中から脱出出来ないまま車が炎上して焼死、ゲームオーバーとなる超シビアな設定です。

車から無事脱出すると、同乗していた姉がいない事に気が付き、その日始めて通った山道を冒険気分で走っている途中で沿道の木に激突して事故ったんだと記憶が蘇ってきます。そして、目の前には謎の洋館があって、助けを求めるため、また、姉がその洋館に入っていったんじゃないかという推測の元にその洋館に入っていくという話の流れになります。この流れ、SFCの弟切草や魔女達の眠りと全く同じ流れですよね。これら2作の原点を観るようなというか、これ系のゲームの始まりって赤川次郎をもってしても違った始まり方って思い付かないものなのでしょうか。まあ、弟切草に代表されるような不穏なストーリーが始まる定番の出だしというものが既にこの時点で完成されていたんだなと実感できるゲームでもあります。

さらに、全編通しても魔物というか敵が5、6体しか出てこないという演出も、前出の2作同様、建物内がどこも静まり返っている感が強調されて非常に効果的です。普通にプレイていたなら、数歩毎に敵とエンカウントするより何時間も誰もいない謎の館の中を行ったり来たりしている最中に、いきなり廊下に日傘を差したドレス姿の骸骨女が立っていたり、地下の迷路の途中にいきなりゾンビが立っていたりする方がドキッとします。

そして、画面の左上1/4に一人称視点で視界が表示されるこの手のゲームの最大の利点というか、ドアの覗き穴から見ているような独特な視点感があって、ウィザードリィとかダンジョンマスターみたいに大画面や全画面で表示される形式より却って没入感があったりします。

また、1/4サイズのドット絵画面であれば一枚あたりの容量も少ないため絵の数を多く出来るというメリットもあります。

まあ、話を戻しますが、この悪魔の招待状とGBセレクション 選ばれし者とで決定的に違う点といえば、この悪魔の招待状には戦闘画面というのが無いという事です。経験値やレベルというのも無く、敵が出てきたら特定のアイテムを使ったり呪文を唱えたりすると一発で敵は消え、間違うと即死という、ラスボスでさえ互いに一撃必殺の攻防となるのですが、その一撃必殺のアイテムを所持するまでがこのゲームの本編というか、謎解きのメインとなります。

先述のように謎の植物を育ててその果実を魔物に食わせてカギを得たり、召使いの寝室のサイドテーブルを鍵で開けて、中の日誌から呪文を読み取ったり、倉庫の棚にあるドット4つ分しかないマッチ箱をとっておいて後半に行く礼拝堂の燭台のロウソクに火を付けて持って歩くと魔物が退散したり、一見意味のないような籠を持って三竦みの鷲を捕まえておいてそれを囮に魔物を退けたり。こうして文字で書いても意味が分からないでしょう、でも、これらの難解な伏線を全部繋げないと先に進めないどころか、一つでも選択を間違うと即ゲームオーバーになります。しかも、意味のないアイテムも非常に多く、不用意に使うと残りの移動回数が設定されてしまい絶対にクリア出来なくなってしまうトラップアイテムなども存在します。それを使ってからセーブしてしまったら最短でもラストまでの歩数が足りず既に詰んでしまっているセーブデータとなってしまったり。

厳しいっていうか、設定が粗いゲームです。

ネタバレになりますが、なんとか自力で謎解きをクリアしていっても終盤のストーリーはザルというか、やはり粗いです。エンディングでも感動は無いと思います。

終盤に主人公は館の地下に降りていきます。そこで主人公はこの館の元主人である白魔導師の幻に出会います。白魔導師は未だ異世界に閉じ込められているとのことですが、異世界には時間の流れが無いため今でもそっちで生きており、ホログラムみたいにこっちの世界に姿を映して話をしたりは出来るとのこと。しかし、もうこっちの世界には実体が無いためドラカンと戦う事は出来ないと言います。白魔導師の話によるとドラカンは氷結して封印したものの氷が溶けてしまったらまた復活してしまう、謂わば冷凍保存されている状態に過ぎないとのことで、主人公に一旦封印の氷を溶かしてドラカンを生身の状態に戻して、目覚める前になんとかして殺してしまってくれと頼みます。

更に、目覚めなければ体は普通の人間と同じと聞いて主人公は白魔導師から氷を溶かす呪文を教わり、ドラカンの氷を溶かします。すると溶けた氷が川となって、その大量の水と共にドラカンが隣の部屋まで流されて行きます。主人公はそれを追って行って、近くに空いている深い穴に眠っているドラカンを放り込むとドラカンは穴の底に頭から転落して死にます。

これが正解の選択ルートなのですが、ここでドラカンを穴に落とさず跨いで先に進むと目覚めたドラカンに背後から襲われて死んでしまうのですが、この時、画面いっぱいに突然表示されるドラカンの顔がこのゲームで一番見どころの力作ドット絵なので、ここで1回死んでみる事をお勧めします。普通のハゲたオッサンがこれでもかってほど目を見開いて歯を食いしばった表情なんて早々見られないものなので。普通にリアルすぎて怖いというかなんというか…。

ここでドラカンを倒しても物語は続きます。まだ姉が帰ってきていないので。

ドラカンを倒した後、館に戻ると姉が主人公を呼ぶ声が聞こえ、その声を辿っていくと姉が倒れていて、その姉の顔を叩くとドラカンの子分のデーモンという魔物が姉の体から出てきます。このデーモンがラスボスです。デーモンはドラカン復活のために姉をさらった張本人ですが、ドラカンが死んでしまった事で自分がボスになろうと考え、とりあえず不要になった姉の体に憑依してこの館で暮らしていこうと思っていたところでした。

このデーモンが体から出た途端、姉は意識を取り戻して、即座に背後の窓によじ登って主人公を振り向きもせずに一目散に窓から飛び降りて一人で逃走します。

このシーンが謎のなんです。現代のゲームのストーリーなら、この時に姉は魔物に陵辱されてしまい、しかもそれを弟に見られてしまった事を恥じて咄嗟に窓から飛び降り自殺を図ったという展開で合っていると思います。主人公が魔物を倒しても姉は死んでいてバッドエンドでもアリだし、生きていても魔物と化していて主人公に噛みついてきてブラックアウトで終わりでもアリだし、姉は死にきれずそれでも主人公は全てを受け入れて今までと変わらず姉と仲良く暮らしていくなんていうのもアリでしょう。しかし、このゲームで、姉は『ただ逃げただけ』なんです。ラスボス デーモンもアイテムで十字架を使えば一発で倒せます。デーモンを倒した後、主人公は姉を追って窓から飛び降りるのですが、そこには無傷で笑顔の姉が立っていて、主人公に「ありがとっ」と言って額にキスをして、主人公も「最高のお姉ちゃんだ、よかった」で、終わりなんです。最後は下手なアニメ絵のお姉ちゃんがピースしている一枚画と『The end』の文字が表示されて終わり。

助けに来た弟をさっさと見捨てて窓から飛び降りて無傷で笑顔とか、なぜ恋人ではなく姉という設定にしたのかとか、最後が陽気な姉の絵で終わるのかとか、最後の最後に謎が多過ぎたので、このエンディングを知った上で

『最初からもう一周プレイしてみました。』

すると、なんとなくですが、このオープニングの伏線がエンディングの真意に繋がるような気がするのですが、どうでしょうか?

簡単に説明しますと、姉は実在していないんじゃないかと思います。

主人公は一人で山道を車で走っていて偶然、館の近くを通りかかった際にその車に気が付いた『ある人物』が魔法か何かで主人公の乗る車を館の前で事故らせ、意識を失った主人公に『自分には姉がいて、車に同乗していた』という偽りの記憶を植え付けた。その偽りの記憶の中の姉を探すために主人公は謎の館に入って行き、館を支配していた魔物やドラカンを一掃する事になる。要は館の魔物を一掃したい『誰か』に利用されていただけで、その『誰か』というのは召使いなんじゃないかと思いました。最後に出てきた『姉』とされる人物は召使いそのものなのか、姉っぽい姿に変身しているだけなのか。ただ、ピースして笑っている顔を見ると『作戦成功』といった感じで、魔物やドラカンを一掃するという目的は無事に果たせたといった感じです。その召使いが本当に白魔導師に仕えていて、白魔導師を消したドラカン一味への復讐を果たして館を取り戻した事で喜んでいるのか、昔から館の支配者になる事を目論んでいた中で白魔導師とドラカンの相打ち相殺を完了して館を我が物に出来て喜んでいるのか、その肝心なところまでは本編の文章だけでは読み取れませんでしたが、ゲームタイトルから伏線なんだとしたら後述の方が真相で、タイトルにある悪魔は召使いとなるでしょう。更に深読みするならば、そのような真意に気が付かないで只々偽りのエンディングに喜んでいるプレイヤーたちを嘲笑っている開発陣が悪魔であり、このソフト自体が招待状。もし、このストーリーの真意に気が付ける人がいたなら開発陣に招待しようというくらいの本当の招待状だったのかもしれないなど、様々な余剰考察が出来るくらいスカスカな空白部分を残した尻切れトンボなエンディングとなっているゲームです。

変な終わり方をするゲームは後に多種多様な独自の考察が出来るので、それを狙ったのかどうかは分かりませんが、面白い後味を残す物もあるものです。

プレイするより考察する方が面白かった稀有なゲームでした。

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