5――6
ずいぶん昔に書いた作品ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
少しでも面白いや、読みやすいな等を感じたらだいぶ↓の方にある☆を入れたり、評価ブクマ等をしていただけたら嬉しく思います。
「俺様に断りなく勝手に死んでるんじゃねえよ、愚図」
誰に言っているのかわからないが、おそらく俺に言っているであろう、身勝手な言葉。
間違いない、俺が出会った"沼地の魔女"の、幼くもしわがれにも聞こえる、不思議な彼女の声だった。
鼻先には水がかびたような臭いと、生暖かい何かに包まれ、体温が徐々に徐々に体から奪われていくのが分かる。
下がる体温に比例し、吐き気にも似た感覚に胸が襲われ、頭はどんどんと鈍くなっていった。
ああ自分は死ぬのだろう。
どこか、他人事のようにそう思っていた。
すると、
「つまらねえな。死にてえのかお前は」
と、まるで死のうとしている俺を叱咤するような、いや彼女の性格を考えれば吐き捨てているのかもしれない。
だが、そう言われたとしても俺は仕方がないとしか思っていなかった。
実際、俺は生きていても仕方がないと思い始めていたのだから。
「はっ、糞つまんねぇやつだなお前」
上から降ってくる口の悪い魔女の言葉がやけに耳に残った。
いつものような下手糞な罵声なのに、魔女の声はまるで、俺の死を惜しむかのような声色で……。
ああ、死ぬのが惜しいかもしれない。
そう思いながら、俺の意識は深く深く沈んでいった。