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短編

作者: 黄色い島

ゆっくり息を吐く、この部屋に入るのは本当に久しぶり。

心臓の音がうるさい。いや、きっと誰もいないはず。

扉をあけると、ガラガラと大きな音がした。

思った通り誰もいない、安堵を覚えながらもほんの少しだけ残念だった気持ちもある。

後ろ手で扉を閉め、自分の場所だったところへ向かう。

懐かしさがこみ上げてくる。

初めてここに来てからもう3年も経っているんだっけか。

いろいろあったなぁ。

感傷に浸りながら、私物を回収していく。

もうここに戻ってくることはないから。

思い出となってしまったそれらのものを鞄に詰めていると、見覚えのないものがあった。


「…手紙?」


差出人の名前はない、恐る恐る中を見てみると


『親愛なる友へ


もう2度と君に会えなくなると思うと、いてもたってもいられなくてこのようなものを遺すことにした。


良いことばかりではなかったけど、君に出会えたこと、同じ時間を過ごせたこと、本当に幸せなことだった。ありがとう。


君のこれからに幸多からんことを。この手紙が君の手に渡ることを信じて。』


「…名前くらい書きなよ。」


そう言わなければ、泣いてしまいそうだった。

自分のことを許すことはできないけど、それでも救われたような気がした。

しばらく呆然としていると、ガラガラと後ろで大きな音がした。


「ひゃあ!」

「うわ、びっくりした!」


びっくりしたのはこっちの方だ。

思わず変な声が出てしまった。


「珍しいね。あ、私物を取りに来てたのか。」

「はい。」

「あはは、私もなんだ。でも、久しぶりだね。なんだかんだ会えないままになっちゃうかもと思ってたからラッキーだね。」


そういいながら、自分のものをしまっていく。


「んじゃ、帰ろっか。」


部屋を後にする。

別れるまで他愛もない話をしてたんだけど、何の話をしてたか覚えてない。

これが最後なのに、全然そんな感じじゃなくて、かつてあったみたいに、なにもなかったみたいに。


別れた後に、一人になって、またあの手紙を読んだ。

涙が止まらなかった。

読んできただきありがとうございました。

お帰りはあちらです。

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