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ジュズダマの道

作者: 昼咲月見草

ジュズダマという植物をご存知だろうか。

わたしはあの丸くつやつやした実が好きで、たまに見かけると嬉しかった。


何があんなに興味を引いたのかよく分からない。

ただとにかく好きだった事を覚えている。


わたしの記憶の中に、そのジュズダマの生えていた道がある。その一本道の始まりに、それは生えているのだ。

けれど季節があるようで、わたしはその道を通るたび、その草むらを確認しては、今日はあった、今日はなかった、と考えていた。


一喜一憂、というものではないと思う。

ただ少し残念だっただけ。


家が当時、商店街で商売をやっていたため学校の帰りはそちらへ行く事が多く、自宅へ向かうその道を使う事はほぼなかった。


普通に家に向かうのにも遠回りであったと思う。

なのに、思い出すその道の様子はいつも冬だ。

小さな一階建の家が右側に。海が近いせいか、左側の畑は寒々としていて、風が冷たい。

わたしはその中を震えながらひたすらに歩く。

十字路まで来ると、両側に家が並ぶようになり、その一本道は終わる。

わたしはその道を、心の中で「ジュズダマの道」と呼んでいた。


不思議なのは、その道へと入る道筋が思い出せない事だ。

わたしの頭の中では学校から自宅へと向かう複数の道が延びている。

なのに、あのジュズダマの道に入る道筋、その道を出たあと、どこへ繋がっていくのかが分からない。

滅多に使わなかったせいだろうか?


だいぶ前に帰った際、島の様子は様変わりしていた。

もう、わたしが住んでいた頃の何もなかった島ではない。

二階建てのデパートにエスカレーターができたと見に行った、あの頃の島ではない。

あのジュズダマの道も、おそらくもうどこにも存在してはいないのだろう。


地図から切り取られたような、場所の分からないあの一本道は、もうきっとわたしの頭の中にしか存在しないのだ。



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