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84 兜虫

 

 結構歩き、ほとんど感じなかった緩い傾斜が既に登っている、と感じるほどになった。

 ここら辺は人面樹の縄張りだったのか人面樹と少しの大猿としか会わなかった。あのニヤけ面が腹立つ猿はまだテイムしていないが人面樹はフィーアを入れて十七本?ほどテイムした。


 ん?なんか匂うな?


『ご主人!この匂いはアレっす!自分の訓練相手の匂いっす!』


 あー、なんだ。つまり虫か?

 虫かー…虫ねぇ…。

 いらないかなー。


『ご主人!テイムしないっすか!?自分訓練相手が欲しいっす!』


『グレイうるさい…』


 フェリが文句言うほどグレイが興奮してる。そんな虫好きなの?オーガ捕まえてやるからオーガと訓練してろよ。あいつら見た目超武闘派じゃんか。

 まあ…グレイは森に残るって言うしな。訓練相手くらい用意しておいてやるか…。

 ニョロニョロ系じゃなければな。


 ブウゥゥゥン


 あー、めっちゃ羽音が聞こえる。猛ダッシュでこの虫エリア?を抜けたい。


『あ!来たっすよ!いい大きさっす!』


 グレイと同じくらい。人間大のカブトムシだ。昼間に見るとそんな鳥肌は立たないな。


「グレイ。あいつ弱らせたらテイムしてやる」


『了解っす!』


 グレイが突っ込んでいった。そんな好きか。

 地面スレスレを飛んでいるカブトムシに飛び蹴り。その勢いで地に足を着けたカブトムシのツノへ攻撃し始めた。

 ミドルキックからの回し蹴りに、一拍置いて胴回し回転蹴り?いやお前それ絶対蹴り技の練習してるだろ。倒せよ。

 一旦距離をとってカブトムシへ走り出した。今度は何をするかと思ったらツノの攻撃を体勢を低くして交わし、ラリアット?

 形はラリアットだが…腕を思い切り当てた感じだ。


『ふぅ。流石っす。頑丈っすね!』


 訓練相手って動くサンドバッグってことか?カブトムシ飛んでると速いがあんまり機敏な攻撃はしてこないし防御力が高いから殴る相手にちょうど良いってことだろうか?


「グレイー。早くしろー」


『あ、すみませんっす!…仕方ないっすね。テイムされたら自分と訓練してくださいっす』


 グレイが手を前に突き出した瞬間カブトムシが誰もいない方向へ攻撃し始めた。


「何したんだ?」


『主様。多分幻術を見せているのではないでしょうか』


「ああ。そんなスキルも持ってたか」


 グレイは別の方向へ攻撃をしているカブトムシへ体当たりをしてひっくり返して飛び上がる。そのまま腹を殴りつけるとカブトムシは動かなくなった。


『ご主人テイムしてあげてくださいっす!』


「あー。わかった」


 カブトムシの顔の前まで歩いて行き、テイムと念じる。



【カブトムシが仲間になりたそうにしています。テイムしますか?】

【Yes or No】


 Yes。


【カブトムシが仲間になりました。テイムした魔獣に名前をつけてください】



「フンフで」


 ドイツ語の五ってフンフだよな?フィンフ?まあいいや。フィーアの次ってことで。


『よろしくでござる』


 あー、うん。俺は突っ込まんぞ。


 ステータス確認っと。



 ————————————————————


 個体名【フンフ】

 種族【大兜】

 性別【オス】

 状態:【 】

 Lv【3】

 基礎スキル:【物理耐性上昇Lv2】【薙ぎ払いLv2】


 種族スキル:【硬質化】


 特殊スキル:—


 称号:—


 ————————————————————



 スキルの詳細を確認しなくても大体わかるな。

 これでこいつらが硬い理由がわかったな。でも魔法には弱そうだな。


「ああ。よろしく。お前は俺の仲間と野生の魔物の区別つくか?」


『多分大丈夫でござる。周りのお仲間達は野生の魔物と魔力の質が違うでござる』


 やっぱりそうなのね。


「じゃああっちの方向に人面樹…フィーアって言う木の魔物がいるから探して合流しておいてくれ。用が済んだら迎えに行くから」


『わかったでござる』


「それと、この後もカブトムシをテイムするかもしれないから、自分と同じ種族の魔物はお前がリーダーとしてまとめてくれ」


『わかったでござる』


 カブトムシ…フンフがフィーアがいる方角へ飛び立つのを見届け移動する。


『ご主人ありがとうっす』


「ん?ああ。まあお前たちがなにか要求することはあんまりないしな。気にしないでいい。それに会話してみると多少の嫌悪感…というか忌避感は無くなったしな」


 やっぱり会話できると違う。それにテイムして俺の配下って認識が出来ると忌避感はほぼなくなった。

 野生の虫はまだ嫌だけど。


「ハク、クレナイ。手加減して殺さないようにカブトムシを倒していってくれるか?」


『かしこまりました』


『わかりました』


 よし!行こう!


『主様。カブトムシ以外はどうされますか?』


「ん?クワガタムシなら同じ扱いでいいぞ。あー、クワガタムシってカブトムシみたいなツノじゃなくてハサミみたいのが二本ついてるやつな」


『いえ、それではなくミミズみたいな生物とか蛾ですね』


「そんなのもいるのか?」


『あちらに結構な数が見えております』


 え?まじで?確かに草木とは違う、なにかの匂いはするが…。


 ガサガサガサ。

 ズルッズズズ。


 耳を澄ますと何かが這う音や草をかき分ける音が聞こえた。

 そのままジッと音のする方を向いていると巨大なミミズに、巨大なムカデ、蝶か蛾か飛ぶやつ。それに巨大なコオロギ?とダンゴムシ?


 なんかめちゃくちゃいる。カブトムシとクワガタムシもいるが…。


「うん。アレは無理。全滅で頼む。クー太、ラン、ラック、フェリは魔法で。アキは投擲で。グレイ、クロ、アメリ、ビャクヤも参加してくれ。ちょっとあの大群は不快だ。魔石も取らなくていいからな」


『わかったー』


『頑張るわ!』


『わかったの!殲滅するの!』


『任せて…』


『流石にイモムシは訓練相手にはならなそうっす』


『影転移試してみる』


『やってくるにゃ。魔石は食べていいにゃ?』


『がんばります!!』


「アメリ…アレの魔石食べるのか…?まあいいが…」


 俺はクー太達と一緒に遠距離から魔法だ。


『一発目爆炎行くわよ!』


 ランがそう言うとランの目の前にバスケットボールくらいの火球が出現し、山形に飛んでいく。


 ドガーーン!


 物凄い音がしたと思ったら火柱が立ち上がり炎が広がり魔物がどんどん炎に巻かれていく。

 おお。半分くらい倒したんじゃないか?ラン最高。


「さすがランだ。偉いぞ」


 火の勢いが弱くなると同時に直接戦闘する奴は突撃して行った。俺がやらなくてもすぐ終わりそうだな。ということでランをたくさん撫でてやる。


『ご主人さま終わったよー?』


 ランを撫でてたらクー太に声をかけられた。


「おお。早いな。みんなありがとうな。音とかに反応してまた大群が来る前に移動しよう」


 ミミズやムカデの死体の横を抜けていく。

 にしてもでかいな…。ムカデやミミズはカブトムシどころかハクよりデカいんじゃないか?まあこいつらは長いからハクと大きさを比べても仕方ないが。太さはそうでもないが胴体は四メートルくらいか?

 見てたら鳥肌がたってきた。早く移動しよう。



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