57 王様
出来るだけ揺れないよう気をつけ走る。戦闘もあまり大きな動きはしないように。バットがあるから素手で戦う時よりも動き回る必要がないから多分大丈夫だ。
「マコト。多分そろそろじゃあないか?あと一時間もすれば目的地だぞ」
「おー、ならもうすぐかね?俺の覚えてる道に出れば案内出来るんだが。それとどうやって避難所まで来たのかとか聞かれたら、案内と護衛してくれたやつがいる、って言っていいけど俺の名前と息子ってのは隠しておいて」
「わかった。そこら辺は適当に誤魔化すから大丈夫だ。マコトは本当に一緒に来ないのか?」
「仲間を待たせてるしね。ただ…クロ」
『なに?』
「親父の影に入って二人に何かあれば助けてやってくれるか?クレナイ達と合流して今後の方針を決めたら迎えに来るから」
『ん。いいよ。任せて』
「頼む。ってことで親父達にはクロを付けるから何かあればクロを頼ってくれ。会話はできなくても親父達が何を言っているのかはちゃんと理解してるから」
「すまない。ありがとう」
「クロちゃんよろしくね〜」
お?この通りは見覚えがあるな?家まで行く時に通った気がする。
「ここらは見覚えのあるから俺が先頭を走るよ」
避難所である学校まで走る。そして建物が見えてきた時点で止まる。
「親父、お袋。俺はここまでだから気をつけて。なにかあればクロに言ってくれ」
「了解した」
「マコトまたね?気をつけるのよ。そのうち顔出してね」
「もちろん」
意外とあっさりと別れ親父達は避難所へ向かう。俺はもう少し親父達の後を追い、物陰から様子を伺う。
門のところで誰かと話しているな。
そのまま門が開き車で入っていく。
というかここの避難所は魔物に襲われてないのだろうか?
ここの塀ならゴブリンやゾンビ、スケルトンはもちろん中型犬か大型犬、それより気持ち大きめの魔犬程度なら乗り越えられないかもしれないが、大猫、大赤蛇、森狼、大猿なんかには余裕で侵入されるだろうに。
意外と魔物被害を見ていないな。人の死体も見てない…いや。ゾンビ達が人の死体なのかもしれないし、人も魔物と同じで魔石を抜かなくても時間が経てば消えてしまうのかもしれないが。
まあ、無事避難所に入れてよかった。
あ。メイ達のこと話したっけ?
メイとミミならクロの気配に気づきそうだから言っておけばよかったが…まあ問題はないだろう。
「んじゃクレナイ達と合流しよう。森に入ったら外に出て走っていいぞ」.
『わかったー』
『わかったわ』
『わたしはここにいるのです』
『わかったの!』
『仲間にゃ?会うの楽しみにゃ』
「アキも外な」
『だめなのです!?』
「いやだめではないが…まあいいか。降りたくなきゃそこにいていいぞ」
『やったのです!』
そして森に帰ってきた。
そう。帰ってきたって感じだ。
クレナイ達のところへ早く行こう。
クー太たちが降りるのを立ち止まって待つ。
…ん?
振り向くとすぐ後ろ、バッグから顔を出してる5匹と目が合った。
え、なに?降りないの?
「降りないのか?」
『降りたくないならここにいていいってご主人様言ったのー』
『言ってたわよね?』
『言っていたの!』
『僕もそう聞いたにゃ』
「え?いや、構わないが…森の中だし揺れるぞ?走った方が楽なんじゃないのか?」
『なんとなくここ好きー。でも肩の上の方が好きー』
『そうね。走るのも好きだし肩の上はもっと好きだけど、もう少しここにいるわ』
『わたしもなのです!』
『ワタシもなのー』
『僕もにゃ』
「まあいいけど、魔物がたくさん出たら頼むぞ」
『大丈夫ー』
『ええ。大丈夫よ』
『大丈夫なの!』
『にゃ』
まあいいか。出来るだけ揺れないよう走る。
とりあえずあの小屋を目的とする。
ァゥォォォ
「ん?何か聞こえたよな?」
『ハクだよー』
「ハクの声なのか?」
『こっちに気付いたのよ』
「何処にいるのかわからないが早すぎないか?」
『ご主人様の魔力量が上がったから離れていてもわかるんだと思うの』
『匂いでもわかってると思うわよ?ハクの知覚範囲広いし、ご主人様の匂いなら気づくんじゃないかしら?』
「ならここで待つか。というか森の入り口付近とはいえ全然魔物がいないな」
『ハクとクレナイの匂いがここら辺からするから多分ここら辺の魔物は狩られてるのー。だからボク達がここにいても問題ないのー』
ああ。さっき大丈夫って言ったのは魔物がここら辺にいないのがわかっていたのか。
ドドドドドド。
え?めっちゃ地響きがするんだが。魔物?ハク?
森の奥へ目を凝らして見ていると白いのが見えた。
ああ。ハクだな。
ハク、だよな?
「なあ。ハクだよな?」
『そだよー?』
「あれは…灰色の森狼?に追われてるのか?あのハクが?」
『多分違うと思うー。敵意感じないよー?』
そう、ハクらしき白いのが見え、その後ろに灰色がたくさん見えるのだ。
「一応戦闘準備。追われてるなら…」
『大丈夫だよー』
『多分平気よ』
『な、なにが起こってるのです!?』
『わからないの…』
『たくさん来てるにゃ』
『ご主人様!おかえりなさい!』
そんなことしている間にハクが急停止して顔を擦りつけてきた。
「あ、ああ」
とりあえず反射で撫でてしまうが、俺の意識はハクの後ろでハクと同じく急停止した灰色の森狼が気になって仕方ない。
「ハク?そいつらは…?」
『あ、はい。説明しなきゃですね。簡単に言うと舎弟ですね』
おい。ハクよ。それは説明とは言わん。
つか何匹いるんだ。数えるのも嫌になるくらいいるんだが。舎弟っていうくらいなんだから敵じゃないんだよな。
灰色の森狼は全てハクの後ろでお座りしている。
舎弟と言われれば舎弟だな。
「で?」
『初めはご主人様が帰ってきた時邪魔にならないよう、あの小屋から森の出口までの魔物を狩っていたのです。でも翌日にはまたたくさんいて私とクレナイさん、グレイさん、フェリちゃんだけじゃ手が足りないと思ったのです』
「そこまでしなくたっていいのに。それで?」
『ご主人様みたいにテイムとやらができないかと試したのですが…、ご主人様やクレナイさん達みたいに仲間っていう繋がりは感じられないのですが、言うことを聞くようになったので片っ端から戦闘を仕掛け従うように言って回ったらこうなりましたよ』
本当に舎弟にしたのか。いや何かのスキルか?
ステータス見てみるか。
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個体名【ハク】
種族【大狼】
性別【メス】
状態:【 】
Lv【19】13UP
・基礎スキル:【噛み付きLv5】【気配察知Lv4】
【指導Lv5】2UP【体当たりLv2】new
【従属化】new
・種族スキル: 【群狼】【魔纏】
・特殊スキル: 【制限解除】【狼王】new
・称号: 【変異体】【進化・使役魔獣】
【王種】new
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おい…。ハクよ。この二、三日で何があったんだ。