38 蜘蛛
《蜘蛛が仲間になりたそうにしています。テイムしますか?》
【Yes or No】
何か聞こえ目が覚めた。
え?
目の前にYesとNoの選択肢が浮いてる。何が起こってんの?魔物がいるわけでも………YesとNoの隙間から昨日夜に見た蜘蛛がいた。
まさかコレ?テイムしちゃったの?なんで?
てか魔物だったのか…?あ、まさか昨日の魔石を食べて魔物になったとか?
昨日置きっぱなしにした黄色の魔石と紫の魔石を探すと昨日と同じくあった。
じゃあなんでだ?昨日見かけた時点で魔物だったのか…?
とりあえずYes。コイツに話聞けばいいか。
《蜘蛛が仲間になりました。テイムした魔物に名前をつけてください》
まじかー。魔物なのかー。小指の爪先ほどの黒いどこにでもいそうな蜘蛛なんだけど…。
それと名前ね。黒色だがクロがいるからなぁ。
スパイ?ブラック?なんかなー。ラックにしようかな。
「お前の名前はラックな」
『…………』
あれ?反応がない。
「話せるか?」
『…………』
無理なのか?ただの無口か?
えー。話が聞けないとテイムできた謎とかわからないのだが…。
『ご主人さまー?どうしたのー』
「ああ。クー太おはよう。いや新しい仲間をテイムしたんだが…会話ができなくてな。なんでテイム出来たのかとか聞きたかったんだが…」
『新しい仲間ー?どこー??』
「クー太の目の前にいるぞ」
『えー??』
手を広げ地面につける。
「おいで」
お、これには反応してくれた。よかった。
蜘蛛…ラックが掌に乗ったのでクー太の顔に近づけてやる。
「クー太、こいつがラックだ。ラック。クー太も仲間だ。よろしくな」
『えーー?魔物だったのー?』
「らしいぞ。ラックは俺の言ってることわかるのか?んーー。じゃあYesなら俺の掌を叩いてくれ」
チクッという感触がした。Yesってことなのか…?
もう一度やってみるか。
「会話できるか?Yesなら一回Noなら二回叩いてくれ」
今度は二回チクッって感触があった。会話できないけど理解はしてるのね。とりあえずそれがわかれば十分だ。にしてもこの子のレベル上げは大変そうだなー。
とりあえずみんな起きてるみたいだし紹介しておくか。
「全員起きてるな…あーいや。誰かアキを起こしてくれ」
『私が起こしてくるわ』
「頼む」
ランがアキに近づき…バシッ。
叩いた。手加減はしているのだろうがだいぶいい音がしたな。
『な、なんですか!?敵ですか!?ご主人!敵です!』
「落ち着け。お前がいつまでも寝てるからランに起こしてもらっただけだ」
『敵じゃないです?』
「あぁ」
『ならよかったです。あ!おはようございますなのです!』
「ああ。今から新しい仲間を紹介する」
『わかったのです!あ、そこの狸さんですか?』
「…………それはグレイだ」
『アキさん酷いっす』
『ええ!?ご、ごめんなさいです!』
『でも確かにグレイは見た目が変わったわね』
『だねー?』
『クー太殿やラン殿とは違う進化なんですか?』
『大狸って種族らしいっすー』
なんかグレイの紹介が始まった。ラックの紹介をしたいのだが。
「ほら。グレイの姿について話すのもいいが先にこっちを紹介させろ」
『魔物の気配はしませんでしたがいつお仲間に?』
『そうですね…。魔物が近づけばわかると思うのですが…』
『そうです!どこにいるのですか!?』
『どんな魔物なんすか?』
クレナイ、ハク、アキ、グレイが疑問に思うのは無理ないな。というかハクも気がつかなかったのか…。
ランとフェリはクー太の後ろでラックの紹介を聞いていたのでわかっているようだ。
「蜘蛛の魔物でな。ほら、さっきからここにいるんだ」
ラックを乗せている掌を上に上げてやる。
「名前はラックだ。種族は…ステータス見ていなかったな。ラックのステータス表示」
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個体名【ラック】
種族【魔蜘蛛】
性別【メス】
状態【 】
Lv【1】
・基礎スキル:【噛み付きLv1】【隠密Lv1】
・種族スキル:—
・特殊スキル:—
・称号:—
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やっぱり魔物になりたての蜘蛛か。
小さいし魔物になりたてで弱いからハク達も気がつかなかったのだろう。
「種族は魔蜘蛛だな。おそらく魔物になりたてだろう。これからよろしくな」
ラックは両前脚をあげる。挨拶をしているのだろう。
ラックは挨拶は終わったとばかりに腕を這って肩に行く。
『そこ…ボクの場所ー…』
クー太が悲しそうにしている。
「ラックはどこか別の場所に移ってくれ。両肩はもう席が埋まってるからな」
チクッという感触があり、ラックは移動していく。見えないがソワソワした感じがし、頭に移動したようだ。
普通の蜘蛛ならすぐさま振り払うのだが、意思の疎通ができる仲間だと思うと全然嫌な気持ちにならないのが不思議だ。
ラックが頭に移動したらすぐさまクー太とランが肩に乗ってきた。よしよし。
「さて、紹介もしたし、彼女達を起こして避難所まで送るか。その後どうするかハッキリとは決めてないが少しの間戻らないかもしれない。まあ必ず会いに戻ってくるからな。
んでここに残るのは…クレナイとハクはすまないが外がどうなっているかもわからないからここにいてくれ。
クロは影の中、グレイは幻術を使えば、フェリとアキなら鞄の中でも入ってくれれば連れていけるが、どうする?」
『わたしはついていくのです!胸ポケットを所望するのです!』
「ん?ここにはいりたいのか?きついと思うぞ…?」
『入れないです?入ってみるのです!』
ぴょんっと飛び付いて胸ポケットまでよじ登ってきた。そして頭から胸ポケットに入り…
『大丈夫なのです!なんとか入れたのです!』
胸ポケットがパンパンになっているが大丈夫らしい。まあアキがいいならいいか。
『ずっと透明になれればいいのですが…私はここで狩りをしたりして過ごします』
『私もですね。ついていけないのは寂しいですが、お迎えに来てくれると信じてますね』
『私は影にいる』
『自分もここにいるっす。ハクさん達に訓練してもらったりして強くなるっす』
『ん…ついて行きたいけどグレイが残るなら私も残る』
「わかった。すまないな」
俺と来るのはクー太、ラン、アキ、クロ、新しく仲間になったラック。
残るのはクレナイ、ハク、グレイ、フェリか。
「あんまり無茶な闘いはするなよ?俺が戻ってきた時に大怪我を負ってたりしたら怒るからな」
『かしこまりました』
『はい。大丈夫ですよ。ご主人様もお気をつけて』
『わかったっす!』
『ん…大丈夫…』
まあこの子達なら大丈夫だろう。無茶しそうなアキは連れていくし。
さて、今は七時か。
ラックのレベル上げは難しそうだが、出来るだけ魔物と戦いながら彼女達を送っていくか。
その後小屋に入ると三人とも起きていた。
「支度してくれ。街に行こうと思う」
「わかりました!」
「お願いします…」
「世話をかけてごめんなさいね」
「構わん。俺が見捨てられなかっただけだしな。それに避難所までの半日や一日程度面倒みただけだし」
三人はもう支度はある程度済ませていたようですぐに移動することになった。
ハクとクレナイはここら辺に残るそうだ。
グレイとフェリは運が良ければもう一度進化出来そう、ということで途中までついてくることにした。
「んじゃクレナイ、ハク。悪いが待っててくれな」
『何度も謝らなくて大丈夫です。透明になれる時間が増えるよう訓練するので、そのうち連れて行ってくだされば』
『グレイさんとフェリちゃんはこちらに戻る時気をつけてくださいね』
『大丈夫っす』
『ん…気をつける』
「じゃあ行ってくる」
最後にハクとクレナイの頭を撫でてやり街へ移動をする。