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25 黒

 

 何故か黒蛇が居り、テイムできた。


 テイムすると同時に木の影から出てくる。クレナイと同じ大きさくらいの、前に会った黒蛇と同じくらいの大きさだ。いや、同じ個体か?


『??』


「よろしく頼む。それで、前に会ったことがあるか?」


『ある。ずっと見ていた。テイム?された?なんか変な感じ』


「見ていた?ああ。そういえばクー太が黒蛇がいるようなことを言っていたしな。変な感じとは?」


『殺さずにいてくれた。だから御礼。あとテイムされたら頭からモヤが取れた感じ』


 ふむ。モヤね。やっぱりテイムされると自我がはっきりするのだろう。


「御礼?まさかクー太たちと逸れてから魔物に会わなかったのって君が倒していてくれたのか?」


『そう。でもそんなたくさんはいなかったから問題ない』


 淡々とした話し方?話すのが苦手なのだろうか。

 それにしても一度はテイムを拒否したのになんでまた…。


「君はテイムされるのを拒否したよな?なんで今になって仲間になったんだ?」


『ずっと見ていた。命令されて死んでいくだけの下僕にはなりたくないから断った。けど、あなたは仲間に優しかった。赤いのも白いのも茶色いのもみんな楽しそうだった。だから仲間になった』


 赤いのはクレナイで、白いのがハク、茶色いのはクー太とランとアキか。


 にしてもずっと見られていたのか。気づかなかったな。いや、ハクとクー太は気付いていたかもしれないが、害はないと判断していたのだろう。


「俺にとってテイムした魔物は、ペットでもあるし、仲間でもあるし、弟や妹…はいないが、そんな感じだろうとかんじることができる家族だ。だから無理矢理命令したりはしないから安心してくれ」


『ん。それは観ててわかった。だからこれからよろしく』


「おう。よろしくな!名前を考えないと。ステータスを見ていいか?」


『いい』



 ———————————————————————



 個体名【未設定】

 種族【大黒蛇】

 性別【メス】

 状態【 】

 Lv【10】

 ・基礎スキル:【噛み付きLv3】【隠密Lv5】

       【気配察知Lv3】


 ・種族スキル:【潜影】


 ・特殊スキル:—


 ・称号:—


 ———————————————————————



 おおー。強くね?このレベルなら初めて会った時もっと苦戦してもおかしくなかったと思うのだが…。隠密に特化したクレナイといった感じか。

 スキルの詳細を見る前に名前だな。普通にクロでいいかな。安直ですがなにか?暗殺者っぽいからアンとか?クロの方がいいだろう。聞いてみよう。


「クロとアンならどっちがいい?」


『なまえ?クロ』


「了解。ならクロ。これからよろしくな」


『よろしく』


 んでステータスか。アイツらを追いかけなきゃいけないけどどんなことができるかは見ときたいしな。

【噛み付き】、【隠密】、【気配察知】は見なくていいだろう。

【潜影】の詳細表示。



 ———————————————————————


【潜影】

 影に潜むことができる。動く影に入って移動することができるが、影に入って自ら移動することはできない。


 ———————————————————————


 ん?俺の影に入れて俺が歩けば一緒に移動はできるけど、木の影に入って影の中や影から影に移動はできないってことか?

 まだイマイチ有用性はわからないが、今、この状況では使えるな。俺の影に入っていて貰えば一緒に行動ができる。


 あ、光の影響で影がなくなったりしたらどうなるんだろうか。それと夜とか。

 一応そういう状況の時はどうなるか聞いてみた。


『ん。少しでも影があれば入ってられる。全くなくなると外に出るしかない。夜になってもご主人様の影はあるから問題ない。問題があれば外に出てれば良い』


 意外と融通が効くのか?

 あ、鞄にしまった魔石あげるか。重たいだけだし。意外とコレ重いんだよな。


「クロ、コレ食べないか?クー太たちに渡し忘れていてな」


『クー太?茶色い三尾?』


『ああ。そうだ。三尾がクー太、二尾がラン。赤いのがクレナイに白いのがハク。んでもう一匹の茶色いのがアキだ。戻ったら仲良くしてくれな」


『大丈夫。みんな優しそうだった。でも』


「ん?でも?」


『アキ?アレは多分苦手。うるさい』


「ははっ。まあそこは仕方ないな。出来るだけ仲良く頼むよ」


 アキのこと遠目でしかみてないクロにも言われるとは。笑ってしまった。

 まあアキだしな。アレもアレでいいキャラしている。


「それで食べるか?」


『ん。食べていいなら』


「ほら、どうぞ」


 手に乗っけてクロの顔に近づけてやる。

 パクッ。ポリポリ。パクッ。ポリポリ

 1つずつ口に入れ食べる。なんか可愛いな。そーっと頭を撫でてみる。


 ピクッ。

 少し反応したが拒絶はされなかった。食べてる最中にやることじゃなかったな。つい撫でたくなった。


『ありがとう。なんか身体が熱い?』


 半分ほどで食べるのをやめた。

 熱い?咄嗟にステータスを見てみるとエネルギー過多の表示があった。

 おお。あとはレベルだな。2回目の進化なら15なんだが…どうだろうな。

 あ、追いかけなきゃ。


「大丈夫だ。身体が進化できる状態になったってことだ。だから心配するな。それよりも先ほどの3人を追いかけるから影に入ってもらえるか?」


『ん。わかった』


 クロは頭からスルスルと影に潜る。影の中はどうなっているんだろうか…。俺も入ってみたいな。涼しかったりするのだろうか?


 ああ。いや、早く追いかけないとな。

 小走りで彼女らが向かった方へいく。

 数分走ったが…似たような光景ばかりだ。人の気配がしない。それに彼女達も見当たらない。クロと会ってそんな時間経ってないし遠くに行ったとは思えないのだが…。


「クロ。影に入った状態でも話せるか?」


 クロに気配察知で見つけてもらおうと声をかけると影から頭だけ出てきた。


『無理。顔出さないとこちらの声は届かないみたい。聞くことは出来る』


「了解。なら一回出てきて気配察知であの3人を探してみてくれないか?」


『わかった』


 スルスルと出てきて、胴体を持ち上げ周りを伺っているようだ。


『少し離れてる。付いてきて。近くまで行ったら私は影に入る』


「ありがとう。頼むよ」


 クロについていく。来た道を戻り脇に逸れる。


『あそこ』


 そう言ってクロは影に戻っていった。

 あそこって…コンビニ?あー、たしかに水分とか補給したいだろうしな。にしたってクロがいなきゃ完全に見失ってたぞ。


 まあ森を抜けたからわざわざ一緒に行かなくてもいいっちゃいいのだが。

 ただもう日も暮れるからな。あの子達がどうするのかだけ気がかりだ。高山さんはどうでもいい。

 俺も今日は全然水分も取れてないし行こうか。でも店員いなさそうだよな。

 お金を多めに置いていけばいいか。監視カメラにちゃんとお金を置いてるところが映っていれば後々問題になっても大丈夫だろう。

 コンビニに入っていく。ドアは開きっぱなしだ。


「あ!中野さん!通りを進まずこっちに来てごめんなさい。気づいてよかったです。あの…高山さんがミミちゃんを引っ張るような形でこっちに来てしまったので…」


 後半は小声で聞こえないように。

 あー、俺と行動したくなくて俺に見つからないよう脇に逸れたのか?なんであんなに突っ掛かってくるのだろうか。

 早めに別れた方がいいな。


「大丈夫だ。これからどうするか決めたのか?そろそろ俺は別行動させてもらおうと思っているが…。正直余計なことかもしれないが高山さんとは早く離れた方がいい」


「はい…。私もそう思うんですが、ミミちゃんが強く出られなくて…」


「よくここがわかったね?水分補給しなければならないと思ってコンビニに寄ったんだ。探したなら悪いことをしたね」


 俺に気がついた高山さんが話しかけてきた。最初のイメージと違うよな。はあ。こういうタイプはあまり関わりたくないのだが。


「いや、大丈夫だ。俺も水分補給したらお別れだ。街までの約束だったしな」


「そうか。でも君について来て貰わなくても問題はなかったけどね?」


 なんか初めの頃より露骨になりすぎじゃないか?

 まあいい。ここでお別れだ。

 返事をせず籠をとりドリンクコーナーに行きスポーツドリンクを取る。

 籠に一リットルとスポーツドリンクを数本と菓子パンをいくつか入れてレジにいく。やはり店員はいなかったので計算して二千円弱だったので3千円ほどレジのある場所に置いておき鞄に詰める。


「それは窃盗じゃないのか?」 


「この状況なら仕方ないだろう。お金も多めに置いてあるしな。そういうお前たちだって同じだろう?」


「僕は店員が戻ってくるまでここにいるつもりだからね。その時に直接渡すさ」


 店員ねぇ。状況が理解出来ないのだろうか。ここにいても明日明後日に戻ってくるとは思えない。


「そうか。まあ問題になったら自分から警察に行ってお店にも謝罪しにくるさ」


「ふん。そうか」


 そのまま高山の横を通り過ぎ入口に向かう。森田さんと齋藤さんが見えた。挨拶くらい言っておくか。


「じゃあここでお別れだな。気をつけるんだぞ?」


「あ、あの本当に行っちゃうんですか…?」

「そうですよ!一緒にいませんか?」


「俺もやることあるしな。すまない。それにここで数日も待つなんて、無意味としか思えないしな」 


「ですよね…」


「そ、そうですよね…」


「あ!なら連絡先教えてください!電波通ってますし、今度お礼しますから!」


「いや、気にしなくていいんだが」


「いいじゃないですか!」


「あ、あのだったら私も…」


「はあ。わかった」


 携帯を出しSNSアプリを開く。登録用のQRコードを表示させ二人に見せる。二人が登録すると俺の方にも通知が来たので友達登録をしておく。

 高山は面白くなさそうに見ていた。


 ピロンッ。

 ん?齋藤さんが送ってきたのか。


『もし、ですが、ミミちゃんと二人で中野さんについていってもいいですか?』


 この子は何を言っているのだ。齋藤さんの方を見て、首を振る。

 俯いてしまった。

 高山さんと行動するのは不安な上に、このまま駅に向かっても交通機関などが正常に動いているか不安なんだろう。だが俺ときても明日まで森の中だ。それよりここで一晩明かした方がいいだろう。


「じゃあ行くな。二人とも本当気をつけてな」


 そう言い店を出る。


 少し離れたところで携帯を取り出し電話帳から会社の番号を出す。


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