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閑話 ラック閑話2(祝二巻)

閑話続きです。


一応本編には関係ない…と思いますが、時系列的には本編より先の話って感じです。

次話は本編です!


「それがどうした?」


これはベータの話をしたご主人様の一言なの。


「どうもこうもないの! ベータが使えるってことは敵も使えるってことなの! 対策するかレベルを上げるべきだと思うの!」


「レベル上げはいつもしてるぞ。今日に関してはメイとミミがたまには休めとうるさいし、たまにはいいかと思ったからだしな」


「むぅー」


「ちなみに言っておくが…ベータって物静か…というか気が弱いように見えて、意外と好戦的だからな? 狩りに出てないって言ったらしいが…あいつ遠距離攻撃得意で頻繁に戦闘はしてるぞ?」


え。ベータから聞いたことと違うの!


ご主人様から詳しくきくと城壁から頭だけ出して口から魔法を打って樹上にいる猿の魔物を打ち倒しているらしいの。

猿たちが城の近くに来ることもベータの行動もびっくりなの。


「…ラックって他の魔物たちに興味ないのか?」


っ!? 


「そんなことないの!」


「だってなぁ…ベータってウワバミの時は十五メートルくらいで城壁内では割と動いてたぞ?」


そ、そうなの!? 大っきいって印象しかなかったの…! 


「十五メートルも百メートルもワタシにとったら大っきいとしか思わないから気づかなかっただけなの! それにお外に出てないことは知ってたの!」


「…」


…疑いの目で見られてるの!


「小さい状態ならそれで納得してやるが、お前今俺と同じ大きさだろうに。十五メートルと百メートルは全然違うぞ」


た、確かに…なの!


「あとな、ベータは自発的には何故か城壁からあんま出ないが、大きいと攻撃が当たりやすいから耐久力を上げるとかなんとか言って、城壁内で他の魔物の攻撃を受けて訓練したりしてたぞ」


っ!? ベータの感覚が鈍い理由がわかったの!


「戦闘訓練…かはなんとも言えないけど、それでレベル上がっていたしな」


攻撃の的扱いでレベルって上がるの!?


「それと、あいつも蛇だから、かなり距離があっても温度で感知できるんだと。だから遠くにいる猿どもを狩ることしていたし。それに魔物達が大挙して襲って来た時とか遊撃させてたし、あいつが言ってたのは俺が命令した時以外…自発的に外出して狩りをしたことはないってことじゃないか? そうじゃなきゃ進化しないだろうに」


た、たしかに…なの!


「あと…動くだけで文句言われるほどベータは嫌われてないからな? ベータは…何故か存在感薄いし、ちょっと卑屈なとこがあるからラックがあいつもあんま認識してなかったのも勘違いしたのも仕方ないが…俺もあいつのこと結構忘れるしな」


だ、騙されたの!

ベータめ! 心配した気持ちを返すの!


「本当、なんでかあいつ存在感ないんだよ。だからそのうち名前変えてやろうかと思ったんだが…それも忘れてたし」


「それはご主人様の記憶力の問題なの!」


「そうか…? んー、確か…魔物が押し寄せてきてる時にステータス確認したら進化出来るからしたんだが…そういえばステータスの内容覚えてないな? ちゃんと確認してない気がする」


か、かわいそうなの! やっぱりベータかわいそうな子なの!


「ご主人様酷いの! でもでもっベータみたいな魔物が増えることを気をつけた方がいいと思うの!」


「そう言われても…なんとかなるだろ。一切スキルを発動させてない時なんてほとんどないし、即死しなきゃなんとかなるしな」


「でも心配なの…」


「よしよし。まあまた明日からレベル上げすればいいだろう。別に今の力に納得してダラけてるわけでもないし」


…こーいうのを暖簾の腕押しって言うんだと思うの。ご主人様の意思を変えるのは無理だったの…。

そしてご主人様の言い分に納得したワタシがいるの…。

さっきの意気込みはなんだったのかというほど気持ちが萎んでいく。


「ほら、今日はのんびりして過ごすんだからそんな心配事は未来の自分に任せて、のんびりしてな」


「わかったの…」


それから遅めの朝ごはんを皆で食べてワタシはまた一人外に出て行く。


「この後どうしようなの」


ベータを追いかけて紛らわしい言い方をしたことに文句を言ってやろうかとも思うが、文句を言われ卑屈になりそうなベータを思い浮かべやめておくことにする。


ご主人様たちとのんびりするのもいいけど、天気も良いし、もう少しぶらぶらするの。


「よし! 探検に行くの! 街の方に行ってみわぷっ!」


な、なんか絡みついたの!

な、なんなの!


『何している』


ビクッ。


咄嗟に閉じていた目を開けると目の前に蜘蛛がいた。


「ガ、ガンマ!」


『うむ。それで、なにしている?』


「な、なんか絡みついたの! 取ってなの!」


『…巣に突っ込めば、絡みつくのは当たり前だろう』


ガンマの巣だったの!?


「そ、それはごめんなの!」


『構わない。が、ご主人にお前は元々蜘蛛だったと聞いたのだが、なぜそんな慌てている?』


「く、蜘蛛だった期間ってほんの少しだけだったの!」


は、恥ずかしいの! 確かにガンマの言う通りなの。ワタシも元蜘蛛! これくらい抜け出せるの…!


『…何している』


モゾモゾと体を動かしているとガンマから疑問の声が上がる。


「ぬ、抜け出そうとしてるの!」


『別に壊していいぞ?』


「あ! 壊せばいいの! って壊していいの!?」


『別に構わない』


お許しがでたので魔力を放出して糸を抜け出す。

ガンマは壊れたところをすぐに修復していた。


「ごめんなの。ちょっと別のこと考えていたらぶつかっちゃったの」


『構わない……よし、直った』


「あっという間なの」


『大したことではない。ここら辺はいくつも巣を作ってあるから気をつけろ』


「わ、わかったの」


『うむ』


ガンマは用は終わったとばかりに巣の上を器用に歩いて去って行く。


「…糸系のスキル練習しようなの」


まあ訓練は明日からするの!

これからワタシは街に探検行くの!


街に向かって飛ぶ。ベータが作った道…ではなく木々の間を縫うように飛んだり、樹上に出てみたりする。


森から出てしばらくは瓦礫だけの場所だ。

人間は死ぬか逃げたの。

魔物は…イチロウたちがほとんど狩り尽くして、更には現れる度に狩ってるらしい。ゴブリンとかゾンビは倒してもレベルが上がりにくいが、スキルの訓練相手にしていると聞いたことがあるの。そして物資もご主人様たちが撮り尽くしたので本当に瓦礫と草や蔦だけなの。


しばらく飛ぶと無事な建物がちらほらと続く。魔物もちらほらといるが強そうなのもご主人様が仲間にしたがるような珍しい魔物もいない。

どれくらい飛んだだろうか。拠点のある森がよく見えないほど移動した頃。


「あっ人間なの!」


十人ほどの人間の集団が見えた。


すぐさま地面に降り立ち、【隠密】のスキルを発動させながら亜空庫から大きめのコートを取り出して羽織る。

これなら見つかっても魔物だとはバレない…はずなの。


人間たちがいた方へ歩いて行くと話し声が聞こえてきた。


「ゴブリンなんて余裕だゼ!」


「魔法使いのくせに根本的にゴブリン程度倒せなかったらチームに入れねーがな」


「確かにな!」


「魔法使い。ゴブリンを倒せるからって強くなった気になるなよ。オークやオーガみたいな化け物もいるんだから」


オークやオーガ…オークは雑魚だった気がするの。


「リーダーはそう言うけどヨォ…俺見たことねぇし」


「それはお前が魔物が現れた後ずっと引きこもってだからだろうが」


「ちげーし! 体調崩してただけだし!」


「あんなにびびってたやつがなにを…ちょっと待て」


建物の影からこっそりと見ていたら一人の視線がこちらへ向いた。

すぐさま隠れる。


「なんだよ。魔物か? へへっ! 今度も俺に任せろ!」


「待てと言っただろう。おい、盗賊」


「あん?」


「なにか気配は感じるか?」


「なーんも感じねぇな」


「なんかいる気がするんだが…」


「リーダーの直感スキルが反応してんならいるんじゃねえの?」


直感持ちがいたの!

隠密は破られてないみたいだけど直感スキル持ちがいるのは予想外…というかスキルを持ってる人間がいると思ってなかったの!


ど、どうしようなの…!


「人間か…魔物か。姿を隠す魔物なんて見たことないが…お前たちいつでも攻撃できるようにしておけ。行くぞ」


うわぁ! 来ちゃうの! ヤっちゃう!? ヤられる前にヤるべしなの!?

でもでも、何もされてないのに殺したらご主人様に怒られるの…!


逃げてもいいけど…外の人間と接してみたいの!

に、人間のふりをするの!


ふぅ…落ち着くのワタシ。大丈夫なの。見た目は人間なの!

あちらが驚いて攻撃してこないように隠れたまま声を上げる。


「こんにちは…なのっ」


「!? 人か…?」


「そ、そうなの!」


「…女か。一人か?」


「一人なの!」


「…手を上げて出てきてくれ。そうしてくれればこちらも武器は置く」


「危ねぇんじゃねえか? ここに一人でいるってことは戦えるってことだろう」


リーダーと呼ばれた仲間の一人、盗賊と呼ばれた男が否定的な声を上げる。


「大丈夫だろう。お前が気づかないってことは隠密特化だろ。俺らを殲滅する力があるとは思えない」


「まっそれもそーか」


なんか勝手に納得しているの。まあいいの。


手を上げて建物の影から出て行く。もちろん手をあげてだ。


「「「「「「…………」」」」」」


固まる人間たち。

ひぃ、ふぅ、みぃ…九人なの。

下ろすと言った武器だが、一向に下ろさないが、まあいいの。

武器って言ってたけど…手に持っているのは包丁かバットで特に脅威でもなんでもないの。


「こんにちは、なの!」


それよりも挨拶が返ってこないことが不満なの!

あとこの人間たち臭うの! お風呂入ってないの!


「「「「「「ど、どもす」」」」」」


ど、どもす…?

ご主人様の知識にもメイたちに教わった言葉にもそんなのないの。


「どもすってどういう意味なの?」


「ぅ…うわ。めちゃくちゃ可愛いじゃん…」


「やべーな。こんなところでこんな可愛い子見るなんて思わなかったぜ…」


「う、うむ。可愛い…な」


口々に褒めてくる人間たち。

悪い気はしないの! ご主人様はしつこく聞かないと可愛いとか言ってくれないから新鮮なの!


「ふふん! なの」


「お、俺と一緒に来ないっすか!?」


魔法使い、盗賊、リーダー以外の男が話しかけてきた。


「格闘家! 何言ってんだ! そこは俺たちのところだろう!?」


ふむ。格闘家さんらしいの。

お互い職業で呼び合っているってことなの?


「夜には帰らないといけないの! それまでならいいの!」


とりあえず了承する。他の人間がどんなところに住んでいるか興味があるの!


「お前たち抜け駆けはすんなよ…!」


「リーダーそんなキャラだったすか!? 女なんて興味ないって顔だったじゃないっすか!」


「馬鹿野郎っ! 俺は男色じゃないわ!」


コソコソと言い合う男たち。

これはあれなの。貞操の危機ってやつなの。まあ弱そうだから問題ないの。


「早く行くの! 日が暮れちゃうの」


「お、おう。じゃあ…ついて来てくれ」


「わかったの」


男たちが先行しそれについて行く。

うーん…。ワタシの素性とか何していたかとか聞かれないの。というかチラチラ見てくるだけで話しかけてこないの。つまらないの。


しばらく歩いて行くと半分ほど崩れ、車や瓦礫が積み上がった場所で足が止まる。


「ごほんっ。ここからあのビルの地下に入れる」


「え」


やっぱり貞操の危機っていうやつなの! 


「わかったの! 早く行こうなの!」


身体強化は常にしているが、念の為【魔装】もすぐに発動できるようにしておくの。

ご主人様の知識では知っていても、悪い人間を見るのは初めてなの! 野盗ってやつなの!


「えっ!? お、おい、そんな簡単に…」


「やばいっすね。超純粋な子っすね」


「いや、俺らに何されても問題ねえほどつえーのかもしらねぇぞ」


「それは…ないだろう…。お、おい。一応説明するぞ。この下は俺らの生活空間になっている。下に行ったらボスに紹介する。何もしないから安心してくれ」


リーダーさんにとても心配されてる気がするの。


首を傾げながら後について行く。


地下に入るとバットを持った女の人…あれ? 女の人がいるの。野盗のアジトに女性…?


「戻りました」


リーダーが女性に頭を下げていた。

女性の野盗の方が偉いの…?


「おかえりなさい…随分と可愛い子を攫ってきたわね…」


「攫ってないですっ。格闘家が誘ったら付いてくるというので…」


「ちょっかいかけてないでしょうね?」


「誓って何もしてないです!」


女の人の目が鋭くなるとリーダーは直立不動になり否定する。きっとリーダーより女の人の方が強いの。


「こんにちはなの!」


「あ。こんにちは。よく来たわね。悪いけどボスのところで事情聞かせてもらっていいかな?」


「…少しなら大丈夫なの!」


チラリと後ろを振り返ると日が暮れ始めている。あんまり長居はできそうにないの。


「少し…? まあいいわ。あんた達はここで見張りお願いね」


「「「「「「了解です」」」」」


「それじゃ…ついてきて」


女の人について行く。この地下は真っ暗…ではないけど、ワタシ達が入ってきたところから入ってくる西陽の光くらいしか灯りらしいものがないの。

【拠点作成】で作っただろう大小のコンテナが無造作に並び、チラホラと女の人が見えた。女の人の方が多いの。

そして一番奥には小さめの家が二軒立っていた。


きっとどっちかが野盗のボスの家なの。


真っ直ぐ家までやってくると女の人は数回ノックをして返事が聞こえると扉を開ける。


扉の先にはちゃんと電気の灯りがあり、一人の女の人がいた。

おばあさんなの。野盗のボスっていう割に強そうには見えないの。


「ボス、探索隊のやつらが女の子を拾ってきました」


「…何かされた感じではなさそうね」


「ええ、何もされてないそうです。そろそろ多少は信用していいかと」


「…考えておくわ。さて、座ってちょうだい」


おばあさんの視線がワタシに向いて座るように言われたので座る。


「はいなの」


「さて…貴方は…何処からきたのかしら。何度も探索しているけどここら辺で生きている人は久々よ」


「えっと…だいぶ遠くからなの!」


「…確かにこんなことになって、何処がどこだかはっきりしないし、地名なんてあってないようなものだし仕方ないわね。でもどっち方面から来たかとかくらい教えてくれないかしら?」


…なにやら一人で納得しているの! どういうことなの?


「どっち方面…あ、高尾方面なの!」


多分! ご主人様がそんなようなこと言ってた気がするの!


「っ!? 高尾…!? あっちに人がいるの!?」


おばあさんが突然体を乗り出してくる。


「い、いるの」


「ど、どれくらいいるのかしら」


「えっと…」


魔物の数を聞いてるわけじゃないのわかるの。人間の数…?

何人…わ、忘れたの。


「たくさんなの!」


たくさん居た気がするの!


「たくさん…? 本当に…? 魔の森方面に人間…? いえ、前にあっちにいた人達が大移動してたって話があったわ…」


な、なんかぶつぶつ呟き始めたの!


「そ、それより一つ聞きたいの!」


「それより…? いえ、なにかしら」


「ここって野盗の住処じゃないの?」


「「は…?」」


ポカンとするおばあさんと案内の女の人。

……野盗じゃないっぽいの!


「ごめんなさい。よくわからなかったのだけど、野盗って野にいる盗賊とかそういう意味かしら」


おばあさんがおでこに手を当てて聞いてくる。


「? そうなの。てっきり乱暴な事されるのかと思ったけど…なんか思ってたのと違うの!」


「女剣士」


「はい」


「あの男どもを連れてきなさい」


「わかりました」


案内の女の人は女剣士さんらしい。


「ここは野盗の住処じゃないし、私たちも野盗ではありません。だから乱暴な事はしません。わかったかしら?」


「わかったの!」


「私がわからないわ…」


何がわからないのかおでこに当てる手が両手になってしまったの。


そして割とすぐにリーダーを連れた女剣士が入ってくる。


「ボス。連れてきました」


「ご苦労様。リーダー。貴方を呼んだのはこの子で出会ってからの話を詳しく聞くためよ。隠さずに全て話しなさい」


「は、はい」


リーダーが緊張した表情でワタシと会ってからのことを話す。

会話した内容も同じなの。リーダーは記憶力がいいの。


「貴方…名前聞いてなかったわね。教えてくれるかしら」


「ラックなの!」


「「「ラック…?」」」


「あだ名か何か…? それともハーフとか…?」


「ご主人様がつけてくれた名前なの!」


「「「ご主人様!?」」」


なんか凄く驚かれたの。


「ま、まあいいわ。ラックさん。この男が言ったことに間違いは?」


「ないの!」


「そ、そう…。リーダー下がっていいわ」


「わ、わかりました」


あ、リーダー追い出されたの。


「それで…何の目的でやってきたのかしら。しかも野盗だと思っていた場所へ」


「探索なの!」


「そ、そう。…ワタシの家の隣に【拠点作成】で拠点を作っていいから、ちょっと考える時間を貰えるかしら? ご飯も…少ないけどちゃんと出すわ」


「だめなの。もうすぐ帰らないとなの」


「今から…? もうすぐ陽が暮れる時間よ。気配を消すのが得意でも外に出るなんて危ないわ」


「大丈夫なの!」


「…貴方の話が聞きたいの。生き残っている人の話を。可能ならば合流して協力したいの」


うーん…野盗じゃないらしいし、きっと来ても問題はないけど…遠いの。ご主人様やワタシが全速力で走れば大した時間がかからない距離とはいえ、ゴブリンに勝ったくらいで喜んでいるくらいのレベルだと…一日じゃ着けないの。


「あっちの方に森があるの」


「知ってるわ。私たちは魔物がたくさんいるから魔の森と呼んでいるわ」


「その魔の森まで来てくれたらご主人様に紹介するの!」


「なっ!?」


「またワタシが来てもいいけど…」


皆が狩りをしてるのにワタシだけ仲間はずれは嫌なの。次のご主人様の休息日がいつかわからないしどうしようもないのっ。


「やっぱり合流したいなら魔の森まで来て欲しいの。そこまで来たら案内する様に伝えておくの!」


あれー? 女剣士もボスも固まってるの。

まあいいや、なの。話のキリもいいし、野盗じゃなかったし、特に面白い物もなかったしそろそろ帰るの!


「じゃあボスのおばあさんまたね! なの! いつでも来ていいの! さようならなのー」


固まっている二人を置いて家を出る。


「えっ。陽が落ちてるの!?」


先程まで夕陽で照らされていた地下は各コンテナから少し漏れる光と蝋燭でぼんやりと照らされていた。


「急がないと怒られるの!」


入り口で話しかけられたりする時間すら惜しいと思い【隠密】を使い一気に地下を駆け抜ける。

地下を出るとやっぱりもう暗くなっていてすぐさまコートを脱ぎ飛ぶ。

走った方が早いけど、だいぶ遠くまで来ちゃったから森の近くまで飛行して行くしかない。


早く帰らないといけないのに飛行速度が遅くてもどかしいの。


しばらくして森がはっきりと見えるようになって、視界を塞ぐ建物もなくなってきてからは【魔装】も使って駆け抜ける。


『ラック遅い』


「っ!?」


森に入ったところでクロが影から現れた。


『ご主人様心配してた。私探してた』


「お、怒ってなかったの!?」


『怒ってはない。ただ遅いから心配してた。けどルリが過保護すぎるって。少し遅くなったくらいでうるさいって』


ル、ルリルリ神なの!

今度お手伝いいっぱいするの!


「よかったの…」


『私に感謝。ご主人様が心配するからラック探してた』


「あ、ありがとうなの。心配かけてごめんなの!」


『ん。じゃあ先戻る』


「わかったの! ワタシもすぐ戻るの!」


ものの数分…もかからず、数十秒で森の入り口から城門へ辿りついた。


急いでたから途中何本か木を折っちゃったの…反省なの。

怒ってないとは聞いたけど、だいぶ遅くなったからおっかなびっくり城の扉を開けるとそこにはご主人様が立っていた。


「た、ただいまなの」


「全く…遅くなるなら出かける前に言ってくれ」


「わ、わかったの! で、でもなんで念話とかしなかったの…?」


「無事なのはわかるし、たまには俺に干渉されずに遊びたいのかと思ってな。お袋にも言われたが過保護なのもどうかと思ったしなあ…」


「ありがとうなの。でも別に干渉されたくないなんて思ったことないの。ご主人様大好きなの!」


「そうか…。まあなんにせよ、おかえり」


「ただいまなの!」


その後ランやクー太に文句を言われ、何してきたか話をした。


…ただボスが協力したい、みたいなことを言っていたのを伝え忘れたのはわざとじゃないの!



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