閑話 ラック閑話(祝二巻)
お久しぶりです…!orz
更新が滞ってしまって申し訳ないです( ;∀;)
本日、【ファンタジー化した世界でテイマーやってます!】の二巻が発売となります!
是非とも手に取っていただけると嬉しいです!
皆様今後ともよろしくお願いします!
今回は閑話でラック視点です!
本編に一切関係ない…というわけではありませんが、関係あるかと言われたらあまり…といった感じですね。久々のベータ君登場です!
「あっ。ラックちゃんお出かけ?」
お城を出ようとするとご主人様のお母さんに見つかった。
「そーなの!お出かけなのー」
「マコトは?」
「二度寝するって言ってたの。とっても珍しいの」
「あらあら。それは確かに珍しいわね。じゃあラックちゃん一人なの? 気をつけて行ってくるのよ?」
「大丈夫なの! ワタシ強いの!」
「ふふっ。知ってるわよ。けど心配くらいさせてね?」
「…? わかったの! 行ってきますなのー」
城を出てまずは城の周りを飛びながら皆を観察なの!
いつもご主人様たちと一緒だから後から仲間になった子たちとはあんまり話したことないから今日はこみゅにけーしょんをとってみるの!
ご主人様が戦いに出ない稀な日だし、普段しないことをしてみるの! だから今日はワタシも戦闘はしないの!
「ふんふん」
ふわふわと飛びながら城壁の中を飛ぶ。上空を飛ぶワタシに皆は気づかず各々のんびりしているの。
まず赤い蛇…アカイチたちは一塊りになって…蠢いてるの。何してるのかはわからないの。
リョクイチたちの塊は蠢いてないけど、一塊りになってジーっとしているの。
クロイチ…たちは見えないからきっと影の中なの。シロイチたちは数が少ない上に一塊りになっていないから何処にいるかはわからないの。
「アカイチー。何してるのー?」
『ラック殿! おはよう御座います!』
「おはよう、なの。それで皆で何しているの?」
『穴を掘っていました!』
「穴…なの?」
『はい! 城壁の中にも巣穴を作っていいって言われたので、ここに作ろうかと思いまして!』
蛇って穴を掘ってお家を作るの? 初めて知ったの。
「あれ? でもクロイチとかリョクイチたちは穴掘ってないの」
『ああ。クロイチたちは城の影や木の影なんかで生活しておりますから。リョクイチたちは草木が周りにあれば巣穴がなくとも気にならないようでして』
「ハクイチたちは?」
『彼女たちは色々なところを転々としておりますね。我らの使っていない巣穴や人間のところ、あとは人面樹殿たちに絡みついていたり、城内でもどこでも寝れる性質のようですよ』
「へえ…皆好みが違うの。教えてくれてありがとうなの」
『はい! いつでもお聞きください!』
尾っぽを使って器用に敬礼するアカイチ…と他の赤蛇たちに手を振って上空に戻る。
意外と広い城壁内には様々な魔物達がいる。
蛇系の魔物に、さっきアカイチが名前を出した人面樹たち。その人面樹たちの周りには虫系のカブトムシとクワガタムシの魔物達や、アインスやツヴァイ、イタイチだと思われる個体を筆頭にしてハクビシンやアナグマ…ムジナって言ってた気がするの。それとイタチやタヌキも見えるの。
「あっ。ハクイチ…っぽい子が見えたの」
蛇系の魔物たちって難しいの。よく見れば皆どこか柄が違っていたりするからわかるにはわかるけど…ぱっと見じゃ区別つかないの。
ご主人様なんて絶対わかってないの! 他の皆は…獣の勘? みたいなので判別しているけどワタシには無理なの!
「他には…端っこにある塊…ウワバミの子なの」
うーん…名前なんだったけ…なの…。あの子いつも一人だし、動いてるとこって最近見ないの。
「話に行ってみるの!」
ふんすっ。
誰かと関わるのが好きじゃない子かもなの。拒絶されたらショックだけど気合いいれて行くの!
「ねぇ! なの!」
声をかけるとびくりとその巨体が揺れる。
「おはようなの! 何してるの?」
『ラ、ラックさん…おはようございます』
「名前なんだったけ、なの!」
『!? ま、まあ僕体が大きいだけで存在感ないですし…覚えていただいてないのは仕方ない…ですよね』
「ご、ごめんなの! でもでもっ、ウワバミくんとワタシってゆっくり会話したことあんまないから仕方ないと思うの!」
凄くショックを受けている様子のウワバミくんを慌ててフォローする。
そこまでショックを受けるとは思わなかったの…。
『いえ、いいんです…。確かに僕あんまり皆と積極的に関わらないから…。えっと名前はベータです。それとウワバミからオロチに進化しました。何しているのかと言われると…前より大きくなったんで、こうやってとぐろを巻いていないと邪魔になっちゃうので…』
なんかとっても悲しそうなの…!
「こんな隅っこにいるから気が滅入るの! 外に狩りに行こうなの!」
『こんな隅っこでも落ち着くので…それに外に出るってことはこの体を動かさないといけないわけで…皆の邪魔になってしまいますので…。あと城の周りの自然を壊してしまいますし…』
ネガティブー!?
これは不味いの! この一角だけどんよりしているの!
「ちょっと待っているの! すぐ戻るからここにいてなの!」
『あっはい。あ…でも前に食事した時たくさん食べておいたのでしばらくはここにいる予定なので…』
「食い溜め!? 食事はちゃんとしろなの! いいから待ってろなの!」
またなにかネガティブなことを喋っているのを尻目に飛び上がり、城の上。ご主人様の部屋へと飛び込む。
「由々しき事態っ!」
『うるさいわ…』
「なの!?」
飛び込んでセリフを言い切る前にランの尻尾から火の玉が飛んできた。
「危ないの!? じゃなくてご主人様! 由々しき事態なの!」
「あ…? ラック…? なにがあった? 敵か?」
頭を振ってすぐに意識を覚醒させるご主人様。
「違うの。身内のことなの!」
「身内? 何があったんだ?」
かくかくしかじか。さっきウワバミ…ベータと話したことを話す。
「お前…酷いなおい。ウワバミ…いやオロチはあいつ一匹しかいないんだから覚えておいてやれよ」
責められたの!?
「そ、それはいいの! じゃなくてベータが動き回れない環境は良くないと思うの!」
「いや…俺が制限してるわけじゃないしなぁ…。まあ確かに、ここら辺は木々が密集してるからあいつが動き回ったら自然破壊になるわな…」
「そうなの! 解決策がほしいの!」
「別に俺的には周りの木を薙ぎ倒してもいいと思うんだが…」
『それは…ダメ』
横からフェリちゃんが話に加わってくる。
『ここら辺…の木々は…皆の巣。だから、だめ』
確かにその通りなの…。
「あー…じゃあこうすればどうだ?」
ご主人様とフェリ。途中からクロとハクも混ざってあーだこーだと会話する。
そして話合いが終わり、ワタシはその結果をベータと他の皆に話に行く。ご主人様たちはというと三度寝するらしい。
「ベータ! いい報告を持ってきたの!」
『あ、はい。他の方に話しているのが聞こえてました。僕なんかのためにありがとうございます…』
ご主人様たちとの話し合いの結果、ベータの居場所から城門まで、城門から真っ直ぐ。そこの二箇所には巣を作らないように。また巣があるなら移動するようにと告知をした。
ご主人様からの命令と言えばどんな理不尽な命令でも誰も文句を言わないから便利なの。
そして皆に話して回ってベータのところへやってきた。
「卑屈なの!? 体動かしてこい! なの! ジッとしてるからネガティブになるの!」
『わ、わかりました。えっ…と、本当に動いても文句言われないでしょうか…』
「ぐだぐだ言ってないで早く行けなのー!」
『は、はいぃぃ!』
ふぅ。イライラして大声を出してしまったの。
まったく!
腰に手を当て早くしないと怒るぞと言う雰囲気を出し…ううん。これ以上ウダウダしてたら本当に怒っちゃうかもなの。
ベータはモゾモゾと動き始め、頭から滑るように城門へ向かっていく。
城壁内にいる魔物達が道を開け見ているのが気になるのか少しビクビクしている。
図体だけデカくて臆病なの…。よくこれで進化してきたの…。確かベータって野生の時点でウワバミになっていたの。つまりそれだけ戦いを重ねてきたはず…なの?
「まっいいの。ほらっ。早くするの!」
ベータの頭部付近を飛びながら追従する。
それにしても長いの…城門から一番遠い端っこから城門まで体を伸ばしているのに、まだ尾っぽの方は端っこにある。
もしかしたら百…二百メートルくらいあるの。
クレナイより大きいの。
たまに後ろを振り返りながら城門を抜けると、人間達が不安そうに見ている。魔物に慣れたとはいえ、おそらくご主人様の配下で一番の大きさを誇るベータを見て怯えるのは仕方ないの。でも怒ったご主人様の威圧感はもっとやばいの!
なんのスキルか詳しく知らないけど色々と威圧系と纏い系のスキルを重ね掛けしたご主人様…あれは魔王なの。
…間違えたの。ご主人様は既に魔の王だったの。
あれ? じゃあなんて表現がいいの? 覇王…魔神…死神…うーん。
あっ。破壊神!
「ふんふん! 破壊神があってる気がするの!」
『僕…のことじゃないですよね…?』
脱線したの。
思わず漏れた言葉にベータが反応する。
「違うの。怒ったご主人様を表現する言葉なの! 的を得ていると思うの!」
『破壊神…僕は怒ったご主人様は見たことないのでなんとも…』
「多分ベータじゃ失神するの。見なくていいの」
『わ、わかりました。それで…ここからどうすれば…一応、ご主人様が定めた城周りから尾も離れましたが…』
「じゃあ木々を薙ぎ倒しながら城を中心にしてぐるっと周るの!」
『わかりました』
ベータが薙ぎ倒した木々は後で藤堂たち人間と魔物たちが回収するから放置なの。ベータには三周くらいしてもらって地面を均すの。その後にご主人様の亜空庫の肥やしになってる除草剤を撒いて、土系統の魔法が使えるメンバーでちゃんとした道を作る…予定なの!
ご主人様に任せたら面倒くさがってしばらくやらなさそうだからワタシが支持だしたり頑張るの!
それからベータが二周、三周として、今度は街への道を作る。そこも何度か往復する。
「よし! おっけーなの! 後は好きにしていいの!」
『好きに…どうしましょう…』
まったく、ベータは決断力もないの!
「行きたいところはないの? たまに狩りに行ってた場所とかに行けばいいの!」
『城に来て…狩りはしてなくて…』
「どういうことなの? まさか城に来る前に食い溜めしたっきりなの!?」
『あっ、いえ…前回の食事は城壁から体を出して周りにある草木とたまたまいた野生の魔物を少し…』
雑食!?
「えっえ…草と…木、なの!?」
『あ、はい。あんまり好きではないのですが…まあお腹に溜まるし…それに何故か草木を食べると腹持ちしますし、排泄とかも一切なくなるので…』
っ!? 消化に悪いの!?
いやいや、きっと違うの。根本的に魔物たちってあんまり排泄行為はしないし、それは種族の性質…なの。多分。
腹持ち…いや、やっぱり消化が悪いだけな気がするの…。
「木とか食べて…お腹痛くないの…?」
『いえ、ただ…』
「ただ…?」
『尻尾の先が緑色になってる気がします。多分それだけです』
バッと振り向いて尻尾の先を…見えない!
「待ってろなの!」
飛んで尻尾の先までくると、確かに緑色に……オロチって食べる物で体色が変わる不思議種族だったの。
なんかもういいの。
ベータの頭の方へ戻ってくる。
「オロチって変な魔物なの」
『や、やっぱり進化後に色が変わるのっておかしい…ですよね?』
「きっとそういう種族なの。気にしたら負けなの」
『は、はあ』
「気を取り直して行くの! 前にいた住処でも、好物があるところでもなんでもいいの!」
『わかりました。じゃ、じゃあ行きます』
「あ、今度は出来るだけ木々を薙ぎ倒さないで行くの。ぶつかっちゃったものは仕方ないけど、わざとぶつかることないの」
『わかりました』
それからベータは木々の間を縫うように…体は動かすけれど、バキバキとズドンという音を響かせながら移動して行くの。
これ…わざと…なの?
頭部の方は普通に避けるのに尾の方が木々を薙ぎ倒していくの。
つまり…ベータは不器用なの! それか感覚が鈍くてぶつかってる自覚がないとかなの! なんで一番太い胴体部分は木々の間を抜けられてるのに尻尾で薙ぎ倒すの! どんな尻尾なの!
もう突っ込まないの…そう思って見守りながら追従して行くと目の前から魔物がやって来た。
「ミ、ミミズなの…キモいの」
ミミズが見えた瞬間、ドンッという音と共にベータが一瞬で前方へ進みミミズが消える。
「ええええ!?」
あれぇ!?
「あ、ありのまま話すの!
今ワタシベータの頭の上を飛んでたの! 今目の前にベータの尻尾があるの!
な、何言ってるかわからないと思うけどワタシも何したかわからなかったのっ」
…ハッ!? 動揺してしまったの…。
すぐさまベータの頭部へ向かう。
「べ、ベータ。何したの。胴体が膨らんでるけどもしかしてミミズ…食べたの?」
『はい。これお腹に溜まるんです』
やっぱり雑食なのー!
あれ? 蛇って元々雑食…? わ、わからなくなってきたの。肉食だと思ってたの。
「ま、まあそれはいいの。そんなの美味しいの? とか聞きたいことはあるけど、とりあえず今一瞬で移動したのはなんなの」
『発条ってスキルらしいです』
スキルなのはわかってるの。どんなスキルなの。
そんな思いが届いたのかベータは説明してくれた。
『…スキルを発動すると体が一緒捻れる感覚があるのですが、前方へ一瞬で移動出来るみたいです。僕も初めて使ったんで…でも獲物が逃げようとしたら一瞬で追いつけそうですし…いいですねこれ』
凶悪なの…!
ベータとはレベル差がかなりあるのにほとんど見えなかったの! 遠距離タイプとはいえ、元が蜘蛛だし、ご主人様の魔力で産まれたからワタシの基礎能力はかなり高いの。もちろん動体視力も結構いいの。なのに見えなかったの…。不意打ちでやられたら飲み込まれるの…!
対策が必要なの!
『えっと…移動しても…?』
「好きにするの。ワタシは一旦ご主人様の元に戻るの」
『わかりました』
「あ、でも山の上の方や鳥達のエリアはいっちゃ駄目なの」
『はい。わかっています』
「ならいいの。後は勝てそうにない敵が出たらすぐに逃げるの。それだけ気をつければどこに道を作ってもいいの」
『わかりました。では…』
「行ってらっしゃいなのー…さて…予想外の収穫なの」
ご主人様にベータクラスの魔物でもワタシ達が目で追えないスキルを使ってくる可能性があることを報告するの。
対策は…もっと鍛えるくらいしか思い付かないけどまあいいの。今の強さに驕って胡座をかいてちゃいけないってことを認識することは大事なの。
「よしっ。ご主人様に報告しに行くの!」