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閑話五十日目

閑話続きます。


次は本編の予定です!


マコトが消え五十日目。


「ルリさんおはようございます」


後ろから声をかけられ、ルリが振り向くとそこには藤堂がいた。


「おはようございます。藤堂さんは見回りですか?」


「いえ、洗濯班の手伝いが終わったので畑班の手伝いをと思いまして」


「料理班と調達班の方はいいのかしら?」


料理班とはその名の通り皆の料理をつくるグループである。魔物達は魔石を食べたり、狩りに出た時に適当に食べ物を口にすることで過ごしていたが、人間の作る食事にハマった者が割と多いため魔物たちの分と人間たちの分とでそれなりの量を作る必要があったりする。

食材はルリが街から調達してきた物に皆が集めた木の実、またイノシシの魔物を狩ってそれを食べていた。


何故拠点周りにはいないイノシシかというと、マコトの魔物たちの中にイノシシの魔物がいないためだ。

マコトが仲間にしている魔物と同種族は食べない、という暗黙のルールができている。

また、マコトがテイムしていないサルや虫などの魔物は誰も食べようとしないため今のところイノシシ一択なのである。


調達班は食材となるものを森から集めてきたり、街に行って食べられる食材や医療品、生活雑貨などを集めてくる者たちのことだ。


「大丈夫です。何かあれば知らせが来るでしょうし。マコト君の魔物達もついていますから」


「そうなのですね。マコトの魔物たちは皆働き物で助かりますね〜」


「本当に…彼らと、いえ、マコト君がいなかったらここにいる人たちの大半は生き残れなかったかもしれませんし、本当感謝しています」


「ふふ。それはマコトに言ってあげてくださいな」


そうしてルリと藤堂が話しながら歩いているとある一箇所に向かって魔物達が集まり出した。


「何かあったのかしら?」


「まだ外部からきた人ですかね…。あまり増えても困るのですが…」


また面倒ごとかと、ため息を吐きながらそちらに向かう藤堂と、通訳必要かしら? と小首を傾げながら向かうルリ。


「だーかーらっ! 敵対する気はねぇーつってんだろう! てめぇらのボスと話があってきたんだ!」


そう、しわがれ声が聞こえてくる。

ボス…というのはマコトのことだろうかと思い、急ぎ足になるルリ。


ルリと藤堂が魔物たちをかき分けて進むと、腰くらいまでの背丈のカッパが居た。


「…カッパさん…かしら?」


「頭に皿がありますし…緑色ですし、嘴ありますし…カッパなのでは?」


二人は呆然と、騒動の原因に視線を向ける。


「おおっ! 人間か! あんたらがここのボス…ではないな。ボス出してくれんか?」


「え、ええ。私、おそらく貴方がボスと呼ぶ、この子達の主の母です」


「ボスのかーちゃんか! ならボスを呼んでくれ」


「今留守にしていますので、私が代理を務めています。ルリと言います。こちらは人間の方の代表で、藤堂です」


「と、藤堂です」


「ちっ…。やっぱりいねぇのか。俺はカッパだ!」


見れば分かる。


そう、皆の気持ちが一つになった。


「カッパさんは…どういった御用で? やっぱりいないとは?」


「あー…ボスがいねぇなら話しても仕方ねぇ気がするんだが…。まずこのどデカい建物…ができる前から、ここらに一際デカい力と、近しい力がいくつもあるのは把握していた。段々とそれが数を増やし、城ができたのも知ってる。だからそのデカい力がしばらく前に無くなって不審に思っていたんだが…やっぱりいねぇんだな。ってことだ。死んだわけじゃねぇならいい」


「そうでしたか…」


「ボスのかーちゃんはどこまで決定権もってんだぁ?」


「基本的に魔物たちに関してだけですね。こちらの藤堂さんは人間に関してだけです。ですが、マコト…ここのボスはあまり細々したことに興味がないので大体は私たちで決め、事後報告という形が多いです」


「ほおー。なら良いか。同盟したくてな。俺と俺らの仲間をここらに住まわせてくれねぇか? その分食料など融通する」


「…それくらいでしたら構いませんよ?」


「おお! 話がわかるじゃねぇか! …っと。なんであいつが来るんだ…?」


「あいつ…?」


カッパが後ろを見てそう呟くので、皆そちらを向く。

するとしばらくして巨大鳥…確かガルーダさんがやって来た。


『カッパよ。何しておる。敵対するなら我が相手になるぞ』


「はんっ! 敵対すんだったら奇襲してるし、水場じゃないとこでこんな数と争うかよ! それよりてめぇは何しに来た」


『我はここの主から、留守の間気にかけてくれと頼まれているからな』


「ちっ。知り合いかよ…。まあ来たのがてめぇでよかった。こっちに敵対する気はない」


『なにがあったのだ』


「まあ色々だ。後で話してやる。とりあえず俺は仲間とここらに住まわせて貰いてぇだけだ」


「それは構いませんが…水場…川などはかなり離れています。大丈夫ですか?」


ルリは水場じゃないところで戦わない。その言葉を聞いて、やっぱりカッパには水が必要であると思い、近くに水がないことを伝えた。


「まあそれは仕方ねえ。こんなどデカいもん立てたやつなら池くらい作れるだろうし、頼もうと思っていたんだが…いねぇもんはしかなねぇ。しばらくは水場じゃ無くても過ごせるから大丈夫だ」


『マコトの母よ』


「なんでしょう」


『マコトはいつ帰ってくる?』


「それは…わかりません。ですが…クーちゃんやランちゃん、ハクちゃん、ラックちゃん、フェリちゃんがマコトに召喚されたみたいなので、あのメンバーならそう遠くないうちに問題解決して戻るかと」


『なに…? 彼奴ががおらぬのか……本当にいないようだな。気配がない。カッパ。我もしばらくここに残る。ここの最大戦力が抜けた以上、我には守る義務がある』


「俺に言わなくていいだろぉが。そこのボスのかーちゃんに聞けや」


『ふむ…。マコトの母よ。構わぬか?』


「ええ…あ。でもクレナイちゃんに聞いて貰っていいかしら」


『クレナイ…赤蛇はおるのか。なら後ほど聞こう。カッパが近づいて来たから慌てて来たのでな。一度戻ってまた来る。赤蛇に伝えておいてくれ』


「わかりました」


そう告げて、飛び去るガルーダ。


「あいつは変わんねぇなぁ…。じゃ、俺も仲間を連れてくる。ここの住民に俺らが来ること言っておいてくれよ。攻撃されちゃたまんねぇ」


「ええ。もちろんです」


そしてカッパも去った。


「皆、ここにいない子に伝えて貰えるかしら? 特にクレナイちゃんに。まあ気づいているわよね。じゃあお願いね〜」


ルリが魔物たちにお願いすると、皆一斉に散って報告しに行った。


「ルリさん凄いですね」


「なにがかしら?」


「私…混乱してしまって。カッパっていたんですね。初めて見ました」


「存在したわねぇ。とりあえず皆に伝えに行きましょう?」


「そうですね」


そしてマコト不在の間にカッパ達が城壁の周りに住み着くこととなった。

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