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23 想定外の紹介

 

 ミスった。齋藤さんにバレてしまった。


「お仲間ですか!?やっぱりお仲間いたんですね!中野さんがいなくなってもなんかずっと視線を感じていたので気になっていたんです!

 あぁ!!綺麗な狼?さん!蛇さんも真っ赤で綺麗です!きゃー!狸さん!?リスさん!?すごいすごい!可愛いです!」


 え…?なんでそんな反応になるの…?

 魔物に襲われて怖い目に遭ったんだよね君。

 理解できなさすぎて頭を抱える。俺がここにいる気がしたとか、クレナイの視線を感じていたとか……気配察知や野生の感でもあるのだろうか…。野生ではなく女の勘かね。


 クー太達は全員どうするの?とでもいうように俺のことを見ている。仕方ない、か。


「齋藤さん。この子達は俺の仲間だから街に戻っても言いふらしたりしないでくれ。もちろんお友達の彼らにも。お願いできるだろうか?」


「え?はい。それくらいなんでもないですよ!あ!でもでも撫でてもいいですか!?」


「お前達。この人に触られてもいいか?」


『いいよー』


『乱暴にしないならいいわよ』


『私は正直主様以外に触られるのは…』


『そうですね。まあ女性ですし構いませんよ』


『バッチコイなのです!』


 アキ。バッチコイってなんだ。


「この赤い蛇、クレナイは勘弁してやってくれ。他の子は構わないそうだ」


「えええ!?中野さんこの子達とお話しできるのですか!?羨ましいです!ズルイです!」


「いいから落ち着け。撫でていていいから話をしよう」


「あ、はい!すみません…」


「それでだ。何から話すかな。とりあえず送り届けた、というよりも方角を教えて猿とかに襲われないよう見張りながらコチラにきたが、それは彼らが俺が猿達を殺すと言ったら反発してきて俺とは一緒にいたくないと判断したからだからな。君もそう思うなら今すぐ戻って街にかえ…」


「なんですかそれ!?助けに来てくれたのにそんなこと言ったんですか!?ミミちゃんも!?後で文句言っておきます!私自身多分殺すとかは無理ですけど、それでも殺す気で襲ってきた猿を殺したからなんて」


 おおー。この子阿呆っぽく見えて意外と現実見てるのな。彼らへの怒りゲージが下がったよ。


「それならよかった。でだ、君らが街へ行くまで感知できる距離を保って移動しようとしていたのだが、俺もやることがあるから街に行くなら早く移動して欲しいんだ」


「あ、ごめんなさい。というかそこまでして頂かなくても!」


「俺も彼ら二人だけなら悪いが見捨てている。けど君とは約束したからな。途中で放り出したりはしない。それに俺も街に用があるからな」


「ありがとうございます…。でも本当ごめんなさい。あの二人を守ってくれて、そして私のことも守ってくれてたんですよね?あの時感じた視線があの赤い子…クレナイちゃん?でしたし…。本当ありがとうございます」


 まじでこの子何者だ?アキならまだしも隠密持ちのクレナイを…。


「それで一緒に街へ行くなら彼らには私から言いますので一緒に行きませんか?あっ。でもこの子達のことは秘密でしたね…」


 うーむ。その選択が取れるならクー太にもレベル上げしていてもらえるからそちらの方がいいのだが…。


「元からこの子達はここら辺で待っていてもらうつもりだったから彼らが納得するならそれでいいぞ」


「ありがとうございます!じゃあ中野さんも忙しいみたいですし早く行きましょう!狸さん、リスさん、狼さん、クレナイちゃんありがとうね!」


「ああ。紹介していなかったな。もうバレたから紹介するが、狸のこっちがクー太、こっちがランだ。狼はハク、リスはアキで、蛇がクレナイだ」


「私は齋藤メイです!みんなよろしくねっ」


「それと一ついいか?俺の気配を感じたことも疑問だが、なんでここにきたんだ?」


「それは…二人と合流して中野さんと会ったか聞いたんです。そしたら会ったけど、方角だけ教えてもらって別行動をして一時間以上も二人で歩いてきたって言うので…一時間以上、しかも歩きながら進んで一度も襲われなかったのは不思議だな、と。そしたら感じていた視線が消えたのでこっちに来れば中野さんがいるかな、と。そんな気がしたのでお礼を言いにこちらへ」


「気配察知とかスキル持ってる?」


「スキル?ってなんですか?あ、もしかして!ステータスオープン!…⁇でません。ハクちゃんやクレナイちゃん、あの猿や蜘蛛みたいなのがいるからファンタジーな世界になったのかと思ったのに…」


 わあお。この子図太い上に順応がめちゃくちゃ早い。

 しかもアニメや漫画好きか。

 器が大きいのか阿呆の子なのかわからんけど…いや、アキと近い匂いがするし後者だろう。

 まあこれならコチラも説明が楽だ。

 川で汲んできていた水を少し飲みながら説明する。


「漠然とステータスオープンというんじゃなく、自分の、齋藤メイのステータスをって気持ちを強く持って、ステータスオープンって言ってみて」


「はい!私のステータス、オープン!わっ!?なんか出ました!すごいすごい!」


「それは良かった。俺からは見えないんだな」


「そうなんですか?あ、気配察知はないです。けど【直感】ってスキルがあります!」


 直感…ね。やっぱり勘とか系か。


「直感の詳細を見たい、と念じてみて」


「直感の詳細オープンッ!」


 そんな力んで口にせんでも…。

 まあいいか。てかあまり遅いとあの2人が様子をみにきそうだし、これ確認したらすぐ行こうか。


「出ました!レベルが上がるほど勘が当たりやすくなるそうです!」


 予想以上にすごいスキルが来た。勘が鋭くなる程度だと思ったのだが…レベルが上がると当たりやすくなるとは…。


「そうか。まあステータスの見方はそんな感じだ。それに君が俺らを見つけられたのも納得した。そろそろ彼らのところへ戻って移動しよう。あまり遅いと彼らがコチラにきてしまうかもしれないし、それにもう16時を回ってるし日が落ちてしまう」


「あ!ごめんなさい!じゃあ行きましょう!みんなまたね!」


「クー太、ラン、クレナイ、ハク、アキ。レベル上げしていてくれ。ただ無理はせず、日が落ちたら狩りは控えておけよ。俺が近くに来たのがわかったら集まってくれ」


『頑張るー。あ、それとアッチの方向に行けばボクと会ったところだよー』


『わかったわ。ご主人様も気をつけてね』


『かしこまりました』


『お1人で大丈夫ですか?』


『いってらっしゃいなのです』


「ああ。大丈夫だ。それに今ならここらの相手なら逃げれば振り切れるだろうしな」


「はぁー。本当にお話ししてる…。いいなぁ…」


 なんかめっちゃ羨ましそうにしている。

 置きっぱなしにしていた鞄を拾い上げ齋藤さんに声をかける。


「じゃあ齋藤さん行こうか」


「はい!」


 クー太たちと別れ彼らのもとへ向かう。

 彼らの元へくると二人は驚いたかのように目を見開く。


「中野さんは遠くからミミちゃんと高山さんに危険がないか見守ってくれてたんですよ!私も助けてもらいましたし。だから一緒に街に行くことにしました」


「え…。ついてきてたの…?気づかなかった…」


「追いかけて来ていたのか!?メイちゃん、彼は動物達を殺したんだ。危ないから…」


「何言ってるんですか!?中野さんが猿を倒してくれてなきゃ今頃私たち猿に襲われていたかもしれないんですよ!?」


「だ、だが…」


「ああ。警戒するのは構わない。ただコチラにも事情があってな。齋藤さんから一緒に、と誘われたので一緒に街には行くが出来るだけ離れて移動するから気にしないでくれ」


「それならば…」


「中野さん…」


「齋藤さん、構わないよ。それより早く移動しよう」


「わかりました。ミミちゃん、高山さん。行きましょう」


「わかった」


「う、うん」


 森田さんは自己主張が弱いのか人見知りなのか全然喋らないな。初めは俺を警戒して高山さんに会話を任せていると思ったのだがどうやら違うようだ。


 日が完全に落ちる前に戻ってきたいなー。

 それから移動を始める。齋藤さん、森田さん、高山さんが前を歩き、俺はその後ろを十五メートルほど空けてついていく。

 一応方角を間違えていたら、口を出すつもりだったが大丈夫そうだ。


 街に行ったら近くにホームセンターあるかなー。なかったらタクシー捕まえるかね。それとも今なら走った方が早かったり…?一度全力で走ってみたいな。


 小型の照明をいくつか買っていけばある程度の範囲は照らせるかな?火事にならなそうなとこがあれば火も焚いて。

 理想は俺が戻るまでにクレナイとハクが進化可能になっていることだよな。そしたら焦る必要もないし……あ。ポケットが重いと思ったらクー太と倒した大猿の魔石が入っている。

 あー。渡すの忘れた…。

 少し邪魔だが戻って渡せばいいか。ポケットから魔石を一つ取り出し、残りは鞄の小さなポケットに放り込む。

 手でコロコロ転がしたり、裾や袖で磨いてみたり。特に何かが変わるわけじゃないが暇なので、ただの手慰みだ。


 これ…食べられるのだろうか?洗ってないからな…いや、水で軽く流して擦って食べてみる、か…?

 とりあえず水を出してかけて、服の比較的汚れていない部分で擦っていると声をかけられる。


「中野さん?何やってるんですか?」


「ん?ああ、暇だったんでな。特に意味は無いから気にしないでくれ」


 そう言って魔石をポケットにしまう。

 齋藤さんと森田さんが目の前にいた。高山さんのことほっといていいの?仲間外れにされるの嫌がるタイプな気がしたけど。


「それでどうしたんだ?」


「少し休憩しませんか?私もまだ足が痛みますし…。あとは…ほら」


 そう言って森田さんの背中を押す。


「さ、先ほどは失礼な態度をとってごめんなさい。助けてくれていたって聞きました…。ありがとうございます」


 深く頭を下げてきた。ちゃんと御礼と謝罪ができるんなら俺も苛立ちをいつまでも引きずることはない。


「そうか。謝罪も感謝も受け取るから気にしないで大丈夫だ」


 出来るだけ優しく言うと安心したのか、ふぅ。と息を吐いた。


「じゃ、じゃあ高山さんのところに戻ります」


 そう言って戻っていく。まだ休憩の返事もしてないけど…。


「中野さん、ごめんなさい。ミミちゃん人見知りで…。悪気が無いと思うんです」


「ん?ああ。それは気にしてないよ。それより休憩だっけ?あまり長くは勘弁してほしいが何分か座って水分補給するくらいなら構わない。それでいいか?」


「はい!中野さんはこっちには…」


「あぁ。行かないかな。どうも高山さんとは相性が悪いみたいだ」


「そうですよね…。なら!はい!飴2つあげますね!ついてきてくれてありがとうございます!」


 そう言って齋藤さんも小走りで戻って言った。

 気を使わなくてもいいんだが。飴を口に入れて近くの木に座らずにもたれかかる。

 いつ着くのやら…。今は十六時を過ぎてもうすぐで十七だし、十八時には街に行けるだろうが確実に日が暮れるなぁ…。


 ボケーっとしながら彼女らの休憩が終わるのを待っているとガサガサと音が聞こえた。

 魔物か?

 何かあったときのために彼女達のほうへ向かう。


「あれ?中野さんどうされたんですか?」


「風とかの音じゃない、不自然な音が聞こえたからな。魔物が出たら対応できるようコチラにきた」


「!?またあの猿ですか…?」


「え…」


 女性2人は不安そうにする。高山さんは何も言わないが強張ったのがわかった。


「いや、多分蛇とかだろう。ここらで猿は見かけたことがないしな」


「え、それって…」


 クレナイちゃんみたいな蛇ですよね?って言いたそうな齋藤さんに頷いておく。

 森田さんと高山さんは蛇と聞いて安心したようだ。

 感覚麻痺してないか?まああの大きな猿に集団で襲われたなら蛇くらい、と思うかもしれないが、クー太くらいの太さで一メートルくらいの蛇だからな。


 普通の蛇だって毒持ちがいるし安心できる要素はないと思うのだが…。


 少し待ったが何も現れない。


「すまない。勘違いだったみたいだ。そろそろ移動しないか?」


「いえ、何も出ないに越したことはないです」


「無闇に彼女らを不安にさせるようなことは控えてくれ。その格好を見るに別にその道のプロというわけではないのだろう?」


「あ、あの高山さん…」


「森田さんもはっきり言っていいんだからね」


 コイツは何を言っているんだろうか。森田さんは止めようとしたみたいだ。齋藤さんは信じられないと言った表情で高山さんをみている。


「それはすまなかった。それよりも移動しよう」


「ふん」


 本当この人はなんなのだろう。

 まあいいか。あと少しの付き合いだ。

 変な空気のまま先ほどと同じく俺だけ少し離れて移動を開始する。


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