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204 水中

大変お待たせしました!


色々とありまして…体調不良など…。

予定より遅くなってしまいました。申し訳ない…



本来閑話の予定でしたが、前回の閑話の続きが書けていないので本編になります。


 

 水の中は透き通っていた。目も開けられる。そしておっかなびっくりにだが息を吸い込んでみて一瞬焦ったが、普通に呼吸できた。


 口の中に水は入ってくるのだ。ただ喉辺りで水が堰き止められ空気だけが肺に入っていく。

 さらに口を閉じ、口の中に入った水を嚥下しようとすればできた。


【水中呼吸】のスキルを持っていれば口の中で空気と水が分離され、空気だけを取り込めるようだ。だからといって水を飲みこめないわけでもない、と。


【水術】のおかげかはわからないが、水中で目を開けてもボヤけることも、目に染みることもない。

 海水じゃないからかもしれないが。


 そう。海水どころか、本当にただ水なのだ。魔法で出した水、もしくは水道水? 


「ぼば…」


 ……喋れないよな。


 別に一人だから口に出す必要はないのだが、結構俺って独り言喋るからこれは不便かも…。まあ口を開けても気管に水が入るわけじゃないし構わないか。


 水上の方を見ると船からクー太たちが体を乗り出しているのが見えたので手を振ると、クー太が小さい手を一生懸命に振ってきたので今すぐ船戻って愛でたくなった。


 寂しい思いをさせたからな…。

 正直、召喚できたのなら送還も出来ないかと、試してみたかったが…クー太を帰らすという選択はない。

 じゃあ風月たちをあちらに送れるかと考えたが、呼び出したわけじゃないのに送れないよな? それは【召喚】とは違うし。


 次、ハクを呼んで送還出来るか試してみるか。まあ風月が【憑依】して魔力を譲渡してくれなければ【召喚】をするのは難しいからぽんぽん試せないが。

 全魔力を使えばできるだろうが、そうなったら確実に気絶するだろうし…。気絶耐性とかのスキルが欲しい。


 とまあ、ここで考えごとをしていても仕方ないので周りを見渡してみるとここはアホみたいに広いし深かった。


 とても透き通っているのに底が見えないのだ。

 大岩だらけで藻も草もない。というか見える範囲に魚すらいないのだ。

 魔物が蔓延っている方が安心できるほど静寂に包まれた水中だ。レベルや戦闘経験が無ければこんなところ怖くて探索なんてしたくないだろう。


 魔法を一通り試してみるが、火の魔法はすぐ消えるため使えず、土の魔法は使えるが表面から土がぼろぼろと水に溶け出してしまうので威力が落ちる。


 風と水魔法は問題ないが…地上で使うのとは勝手が違う。体も動かしにくいし、水中じゃ踏ん張れない。


 どれくらい戦えるか…なんとも言えないな。


 簡単に体を動かした後は探索だ。とりあえずダンジョンの光が届いていなさそうな深い場所は後回しにして水面近くを泳ぎ移動していく。


『ご主人よ。聞こえるかの?』


 しばらく泳いでいたら風月から念話が届いた。


『どうした?』


『クー太がのう…』


『…? なんかあったか?』


『お互いどんなことができるか話しておったのだが、我が念話もできるぞ、と言ったらご主人にまだ戻らないか聞いてくれと言われてのう…。今も肩の上で我の頬を叩きながら急かしてくるのだ』


『…こっちは未だ魔物の一匹にも出逢ってないぞ。というか全然時間経ってないだろ。もう少し我慢しろと言っておいてくれ』


『うむ…。はよ戻ってくるのだ。耳を齧られておる…』


『はいよ』


 まったく…。

【恩寵】使って【共生】を覚えさせて一緒に行動するか? だが、【共生】を確実に覚えるわけでもないし…試すだけ試すか?


 それにしても、ほんっとーに何もいないな…。

 あるのは岩だけ。植物も魚も魔物もいない。

 やっぱり海底まで行ってみるしかないか…。


 本当は行きたくなかったが…腹を括って潜っていく。


 五分ほど全力で脚を動かし潜る。すると、俺は【暗視】があるから視界は問題ないが、暗くなってきたのはわかった。ここら辺から光が届いておらず見えなかった場所だろう。


 大穴を、または結界を抜けるような、トプンッという感覚が体を襲った。


「ぶぼぉ!?」


 おいおい。多すぎだろ!?


 一気に暗くなってきたので【暗視】を意識して瞬きをした瞬間、至る所に魔物が見えた。

 …全てが魔物ってわけではないのか? 海の生物のごった煮状態である。


 まず、一番目につくのは巨大な…おそらくクジラ。二本の角が生えていた。更にはシュモクザメっぽいやつや、サメと同じくらい大きな…タイ? なんの魚かわからんがデカい。

 てか海水じゃないのにこいつらなんともないのか…?


 デカいやつはそう多くない。だが、魚の群れがめちゃくちゃ多かった。

 圧倒されていると魚の群れが目の前を通過する。


「!?」


 めちゃくちゃ凶暴そうなんだが…。

 鋭い牙に鋭い一本角。…ピラニアの角付きみたいな感じだ。大きさは大したことはないが群れで来たら怖い、な。


 にしてもなんでこいつら襲ってこないんだろうな…?

 全て目が悪い…とか?


 試しに光魔法を放ってみると…。


「ゴボッ!?」


 やばいやばい! 


 視界にいる全てのやつらが一斉にこちら向いた。

 水中でこの数は無理。というかどれくらい強いかもわからないのだ。魔物が全て、鬼王みたいな強さだったら本気でやばい。


 すぐさま浮上するが、やはり水中。魚の方が速い。


 ピラニアっぽいやつらが噛み付いてきたと思ったらふくらはぎに激痛が。


「ごぼっ!?」


 脚を見ると深くはないが、ズボンが破れそこから血が…噛みちぎられていた。


「ぼばびばばーぼ!?」


 馬鹿じゃねぇの!? なんつー威力だよ! 【痛覚軽減】がなきゃ痛みでパニックになって溺れるわ!

【回帰】を発動しながら風魔法と水魔法を適当に下へ放ち離脱する。


 バシャンッ!


 下に向かって風球やらなんやらを放ちまくったおかげで勢いよく海上まで飛び出た。

 そして宙に浮いたまま追いかけてこないか見ていたが、光の当たる部分にはやってきてないようだった。


「はぁはぁ…。なんだよあれ? あんな小さい魚に噛みちぎられたぞ?」


 あの魚がどの程度の強さかはわからないが、少なくともサメやクジラの方が強いだろう。


 あれ? 勝てる気がしないんだが…。

 【硬化】使っていれば大丈夫か…? 不安だ。


「いや、慣れない水中戦だったからだ。勝てる。つーか勝てなきゃ邪神を恨む」


『えー? 恨まないで欲しいなあ?』


 !?


「邪神!?」


『ニヒリティと呼んでくれるんじゃなかったのかい?』


「そんなことどうでもいいわ! お前に言いたいことが山ほどあるんだが!?」


『君の話ももちろん聞くけど、先に僕の話をいいかい?』


 …なんか腹立つな。俺の話を聞けよ。


「なんだよ」


『ははは! 君が取り乱すのが見れて嬉しいよっ。まずは、魔族が更に地球にやってきた。今そいつは廃墟と化している街を遊び半分で壊して回っていてね。幸いなことに既に人のいない島に現れたからまだ人的被害は出ていない。けど、そう遠くないうちに人間を…生物を狩り始めるだろうね』


「うん? 前からいた魔族はどうしたんだ?」


『そいつは今行方不明だ。おそらく僕らを警戒して潜伏してるんだと思うんだけど…。とりあえず新しくきた魔族は考えなしなのか、僕らが大したことができないのを知っているのか暴れている』


「それで? 倒しに行けってのか?」


『いや、ただの報告さ。以前君も会った人間たちに協力を要請しているし、他にも協力者がいるからね。君にはそのままそこで訓練してほしい』


「じゃあなんで連絡してきたんだ? 力を温存してんだろ?」


『ダンジョンを作った分は回復したからね。大丈夫だよ。ただ出来るだけ急いで欲しいと思ってね。そこで提案がある』


「お前からの提案とか…聞きたくないんだが?」


『えぇー。そう言わないでよ。君にメリットはあるよ?』


 本当かよ。


「聞くだけ聞いてやる」


『マコト君は、ここまでで魔法の訓練、スキルを使用できない状態での戦闘をしてもらった。更にはテイマーのレベルを最大にしてくれたしね。とりあえず僕の希望は最低限達成しているんだ。だからここからはクー太君たち主力メンバーで攻略してもらえないかな?』


 …こいつ何言ってんだ?


「主力メンバー…ハクやランたちが召喚出来ないのはお前のせいだろ? それに攻略もなにも、今躓いたばかりなんだが?」


『僕、直接は何もやってないよ? ただダンジョンという閉鎖された場所だからより多くの魔力を必要とする。だからダンジョンに入ってすぐ召喚…じゃなくて[転送]を使おうとした時は君の魔力じゃ足りなかったんだよね。【テイム】は召喚するためのスキルじゃないからね。【召喚】のスキルよりも[転送]の魔力効率は悪いんだよね。まあ仮にダンジョンに転移させた頃に【召喚】を使っても魔力は足りなかったと思うけど』


 チッ。


 間接的にそうなったって言い方しやがって。お前が原因だろうが。


「それで?」


『君の主力メンバー…全員は無理だけど、ルナ君たちと入れ替えるようにして連れてきてあげる。召喚するより入れ替える方が力を使わないからね。それでこの先のダンジョン構造を変えておくよ。下階層への道のりも単純な物にしておくし、魔物も数を減らして経験値の多い強い敵にね』


「…まあそれなら、いいか」


 つか本当なんでそこまですんのかね。こんだけ協力したくないって言ってんのに。


『た・だ・し!』


「あぁ?」


『君が【水中呼吸】と【水術】のレベルを八くらいまで上げたら、って条件付きだけどねっ』


「お前…まじで殴る」


『えぇ!? なんでだい!?』


「お前…勝手に連れてきて、強くなって欲しいとお願いしてきて。今度は早く攻略してくれ? 更に水中関係のスキルを上げないと駄目だ?」


 ふざけるのもいい加減にして欲しい。


「こちとら何一つ望んでないって、何度言わせんだ!? 確かにルナやカシ、シルバに会えたことは感謝してもいいかもしれないがな…! それにダンジョンで色々な魔物も見れたし、足りない物を自覚して更に強くなれたことは確かによかったが…それでもあれやれこれやれって、俺は了承してねぇぞ」


『そんな感謝してくれなくても良いんだよ? でもそんな喜んでくれたなら良かったよ!』


「喜んでねぇし、感謝もしてないわ!」


『えぇー? どう聞いても喜んでるんだと思ったんだけど?』


「…俺が気に食わないのは俺が魔族と戦う前提でお前が行動していることと、あいつらに会うのに条件をつけることだ。ここを早く攻略してほしいのはお前の都合だろうに。俺は【召喚】のスキルを覚えたし、のんびりしてても今すぐダンジョンから追い出されてもどっちでも良い」


『まあ…君はそうなるよねぇ。…あ! じゃあ君のやる気を出すために良いことを教えてあげるよ!』


「…なんだよ」


『僕ら神族や魔族はテイムできない。ただ契約はできるよ? 頑張れば魔族を仲間に…』


「いらん」


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