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閑話 風月

197話、198話に関係した風月視点です!


明日は本編です。

 

 ご主人が【精霊召喚】を行った。

 そして魔法陣へ我の魔力を流す。


 記憶にある精霊の気配を探りながら、魔法陣を書き換えていく。ランダムに精霊を召喚する魔法陣を指向性を持つものにしていく。


 召喚対象をランダムから水属性の精霊に。格は中位精霊。そして我と友誼を結んだ者。


 精霊は魔素で構成された種族である。そのため永きを共にいた者は魔力によるパスができる。支配関係ではない上、スキルを用いた物ではないから…何となく居場所がわかったり、強い感情が伝わってくる程度のパスだが。


 っ! 見つけた。 書き換えた魔法陣を壊さぬよう魔力は流し続け召喚を待つ。


 む…? 拒否…しておる?

 こちらに来ようとしないのう…。


 ご主人より魔力量が多いから召喚を拒絶することは可能だ。だが、我の魔力が混じっておるのだ。しかもご主人の魔力からは負の感情がほとんど混じっておらぬから拒否する理由がないのだが…。


『やっ!』


「むっ?」


 水の精霊の拒絶の感情が魔法陣を通して流れてきた…。解せぬ…。


「どうした? 失敗か?」


「いや…召喚する対象を我の知己に設定はできた。できたのたが…」


 むぅ…。納得いかぬのう…。

 契約している身ではあまりご主人から離れられないというのもあるが、ここは閉鎖されたダンジョンだ。召喚魔法陣を介さずに干渉することも、ましてや直接会いに行くのは難しいしのう…。諦めるか。


 魔法陣は未だ設定した相手の元に繋がっている。だが、完全に拒絶された今この召喚陣では誰も召喚できそうにないの。


「なんだよ。はっきりしろよ」


「物凄く抵抗されておる」


 というか拒絶されておるが。


「はあ? 抵抗してきてるならそいつはやめて他のやつにしろよ」


 やはりそれしかないのう…。


「うむぅ…護衛にはぴったりだったんだがのう…。わかった。一度発動をやめてくれ」


「…途中で発動をやめても大丈夫か? 爆発したり…」


「そんなことにはならぬから安心するのだ」


 意外と心配性のご主人だのう。

 それにしても…。


「何故拒絶されたのかわからぬ…」


「実は嫌われてたとかじゃねぇか?」


 !?


「なぬ!? それはない! まず、我が嫌われるような精霊に見えるのかのう!?」


 親友や家族と言っても過言ではない相手なのだ。それは、ない!


「……」


「その目はなんだのう!?」


 そんな胡散臭そうな目で見てきおって! 失礼ではないかのう!?


「気にするな。それよりもう一度やるぞ?」


「む…。あいわかった。次こそ任せるのだ」


 水の精霊が無理なら防御系スキルが得意なあやつかのう…。ただのう…優しい子なのだが、うるさいのが玉に瑕、といえば良いか、ご主人と相性が良いかわからないのがのう…。


 いや、ご主人なら大丈夫だろう。上手く手綱を握ってくれるはずだ。


 改めてご主人が展開した魔法陣に干渉していく。

 木属性の精霊。格は中位。そして書き換えが終わりすぐに召喚に応じてくれた。


 現れたのは我とは違った色合いの木の精霊。

 知己であっても感謝はせんとな。


『木の精霊よ。よく来て…!?』


 声をかけた瞬間こちらに向かって飛んでくる木の精霊。

 予想外のことに上位となった我も反応が遅れ突き飛ばされた。


「ぐっ。お主! 何をするのだ!」


『ひどいひどい! みーちゃんのこと先に呼んで、わたしは二番目!?』


 みーちゃんとは我が呼ぼうとした水の精霊の愛称だ。此奴が呼んでおるだけで正式な名ではないが。


「なに!? 何故知っておる! というかそんなことで怒るではない!」


『みーちゃんと一緒にいたからだもん! みーちゃんといたら魔法陣が現れるし、フーちゃんの魔力が混じってたもん!』


 すぐ近くにおったのか。それはわからんかったのう…。


「むむむ!」


 ぐりぐりと体を押し付けるのはやめるのだ! それよりもだ!


「何故彼奴が拒絶したのか知っておるか?」


『知らない! 知っててもフーちゃんに教えてあげないもん!』


 くっ。


「これ! 拗ねるでない!」


『フーちゃんはわたしよりもみーちゃんに会いたかったんでしょ!』


「我にも事情というものがな…」


『言い訳なんて聞きたくないもん!』


 こやつは…!


「く…。悪かったと言っておろうに。それに呼び出したのは我ではない。そこにいる者だ」


『え? なんかいる!? …人間? スライムに燐火?』


 意識が逸れ、やっと我から離れてくれた。

 それにしても、なんかいるとは失礼だのう。一応召喚主…ご主人なのだが。


「ちゃんと鑑定するのだ」


『えー? むぅ…え!? こっちは…ハイオークジェネラル!? オークが人化してるの!? じゃあこっちの子は…精霊種…!? この子がわたしのこと呼んだの!?』


「うむ」


 まあ驚くのは仕方ないのう。

 野生のオークで人化することなぞないし、マギアのテイマーのことはよく知らぬが、基本戦力としてテイムするのだから【人化】のスキルを持っていてもわざわざ力の落ちる人の姿にさせる必要がないからのう。


 それに元人間でわざわざ狸人なんて種族に進化した後に精霊種になった者なんぞ中々お目にかかれぬ。

 人とは普通ハイヒューマンにしか進化せぬと思っておったしの。


『じゃあそっちの二匹は…天火と…キングミミックスライム! しかも銀色と金色! なにこの珍しい組み合わせ! すごーい!』


「まあ珍しいのは間違いないのう…」


 珍しいどころではなく。銀色の天火、金色のキングミミックスライム。どちらも野生では絶対見られないだろうのう。


『あはは! なにこの不思議なパーティ! あ、あれ!? フーちゃんも人型だし、耳と尻尾が生えてる!?』


「今更かのう!?」


 この尻尾と耳は中々気に入っておる。ご主人は普段隠しておるがお揃いだしのう。それに自身の尻尾をクッションにすることもできるのだ。


「とりあえずお主はご主人とも会話するのだ。詳しくは後で説明するでな。まだ話終わらねえのかよって視線が凄い」


『はいはーい。でも! ちゃんと説明してね! あとみーちゃんこと先に呼んだお詫びも! 納得してないんだから!』


「仕方ないのう…。後で水の精霊が召喚を拒否した理由を教えてくれるのなら、な」


『あっ。それはね、今みーちゃんが精霊獣の卵の世話をしてる真っ最中だったからだよ! 今この子を置いてなんていけないって』


『むっ! 精霊獣の卵が孵るだと?』


 精霊獣はご主人のように進化して精霊となった動物ではなく、発生は我らと同じ。魔素の塊だ。だがそこから長い年月を掛け自力で肉体を得た獣。上下関係は無いが、あえて言うなら格上の存在である。

 しかも数が少なく、自身が不老なため子を成すことにあまり意味をなさぬ。だからその卵は珍しいのだ。


 また折を見てご主人に召喚してもらうことにするかの。

 木の精霊がご主人に向かって飛んでいく。


『初めまして! 精霊種くんがわたしのこと呼んだんだよね? よろしくねー!』


 そのまま勢い良く自己紹介を済ませ契約した。

 名はキキらしい。キキ…悪く無い響だが由来が樹木の別の読み方とは…我ご主人は安直だのう。


 そして次の階層へ。

 ご主人と【共生】し、ルナたちのことをキキに任せ移動した。


 ただずっとではない。途中我だけキキたちの元へもどった。


「あ! フーちゃんおかえりー! マー君は?」


「まだ探索しておるよ。どんな魔物がでるかはわかったのでな。我はこちらの様子を見に来た」


「そっかそっか! じゃあ色々と教えてよ! 【恩寵】って本当なんなの! 転生出来ちゃったし!」


「うむ」


 キキに【恩寵】について我の知っていることを話しながらご主人についても教える。

 スキル内容などもキキに教える許可を得ておるからそれもだ。


 あとはダンジョンの外におるご主人の仲間に関してだが、これは我も詳しく知らぬしのう。


 だから主にダンジョン内での行動、どんな人柄か、どんなスキルを持っておるのか、それとご主人から聞いた地球のことを語った。


「ほへー。マー君凄いんだねえ。そのうちわたしたち精霊よりも魔力量が多くなりそうだね!」


「それは…確実になるだろうのう。我らの力の一部、経験値などもご主人に還元されておるようだし、そう遠く無い未来我らの魔力量も超えるであろうな」


「なら魔族相手でも勝てるかもね!」


「ぬっ? 魔族のこと知っておるのか? 我は詳しく知らぬのだが」


「マギアに魔族が入ってきたでしょ? 見に行ってみたんだ! 私たちより魔力量多かったし、すっごく強そうだったよ!」


「お主…」


 我は額を抑え頭痛のしそうな頭を振る。


「何故今そんなことしておるのだ。次元の穴がいくつも開いて不安定だということくらい知っておっただろうに」


「こっそり行ったから大丈夫だよ!」


 そういう問題では…。


「まあ良い。とりあえずここでルナたちを守ってくれるというならついでに訓練も頼めるかのう?」


「訓練? 魔物倒させるの?」


「うむ。ルナたちも暇であろうしの。我もご主人と共に行動した後、途中で戻ってきて手伝うでな。頼めるかのう?」


「良いよー! 木で拘束した魔物を攻撃して貰えばいいかな?」


「それだと…いや。それで頼むとするかの」


「まっかせて!」


 それだとレベルが上がるだけでスキルや戦闘勘などは成長せぬが…そこは我がやれば良いかの。

 キキはそういったことは苦手だし、レベル上げと防衛を頼めば良いだろう。


 ご主人が張り切っておるのだ。我らも訓練してご主人が必要とした時に足手纏いにならぬようにせねばの。




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