198 耐性
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「わあ! 狸耳と尻尾がある! フーちゃんとお揃いだね!」
そう言って光から出てきたのは風月とはまた違った色合いの緑髪のキキだ。顎下くらいまで伸びたショートヘア。そして着ているものも何故か風月と同じような着物のような物。いや、浴衣か? よくわからんが。
「精霊は着物を着る習慣でもあんのか?」
「これかの? お主がイメージしたのではないのかのう?」
「あ、本当だ! 着物って言うの? 可愛いねこれ!」
「いや、イメージなんてしてないが?」
「ではお主にとって身近な服とか思い入れのある服装なのではないか? 我もそこのキキ、か? キキも契約したのは初めてだからのう。詳しくはわからぬが」
「いや、身近なわけ…」
もう亡くなったが、祖母が常に着物姿だったな。祖母のところにいる時はお袋も俺も浴衣着てたし…昔の俺は祖母に随分懐いていたと思うし、印象が強いと言えばそうだな。
「思い当たることがあるかのう」
「だからってなぁ…。今まで気にならなかったが、その服って魔力でできているのか? 着替えは可能なのか?」
「魔力で生み出されたものではあるが、既に実体があるからのう。普通の服と変わらぬぞ」
「そうか。もし汚れたり着替えたくなったら言ってくれ」
風月は全然汚れた姿を見てない。水浴びしなくても匂ったりもしないし、精霊だからと疑問に思っていなかったが…。
「【物質複製】か【想像具現化】を使うのだな? その時は頼むとするかのう。そういえばそのスキルを使っているところなど見ておらの」
使う必要がないからな…。望んで邪神に貰ったスキルなのに今のところ必要性を感じないのだ。
水は魔法で出せるし、食事は魔石か【亜空庫(大)】に入っている物で済む。他の石鹸だのの生活雑貨も同じだ。
「なになに!? そんな珍しいスキル持ってるの! …あっ、何て呼べばいいかな? ご主人様? マスター? そういえば名前聞いてないよ!」
「あ、ああ。名前はマコトだ。好きに呼んでくれ」
「うーん…じゃあマーくんだね!」
両の拳を胸の前でギュッと握って、確定ね! と言った感じで言ってくるキキ。胸は風月と比べると小さいのか、なんて考えていたらジト目で見られていた。
「今フーちゃんと比べたでしょ! ふーんだ! フーちゃんが大きすぎるだけだもん! わたしだってちゃんと掴めるくらいあるし! 確認する!?」
「……遠慮しておく」
「ご主人よ。すまぬな。騒がしいが悪い奴ではない。それに実力はちゃんとあるでな…」
「ん。構わないさ。ただこういう推しが強い…というか元気なタイプってあまり周りにいなかったからな…距離感は計りかねているが、大丈夫だ。もう俺の仲間だしな」
「そう言ってもらえると助かるのう」
「じゃあ【恩寵】使ってステータス確認したら移動だ」
ステータスは契約した当初の風月と似たようなものだった。
恩寵の説明をするとまたきゃーきゃー言っていたので、これに付き合っていては時間がかかりすぎるとパパッと【恩寵】を使った。諸々の説明は俺が次の階層で大穴を探している間に風月が説明してくれるというので任せた。
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個体名【キキ】
種族【上位精霊(樹木)】
性別【メス】
状態【 】
・基礎スキル:【木魔法Lv★】3UP
【精霊魔法Lv7】3UP
【覚醒Lv6】3UP
【樹魔法Lv4】new+ 3UP
【狸化Lv4】new+ 3UP
・種族スキル: 【転生】【分霊】new
・特殊スキル:【憑依】【共生】new
・称号:【契約精霊】【恩寵を受けし者】new
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目新しいスキルは【樹魔法】だが、これは【木魔法】では操ったり作り出せない草花も対象になり、効果範囲や魔力効率が上がるらしい。
スキル詳細には他の魔法と同じように簡単な説明しかなかったのでこれは風月が教えてくれたことだ。
「風月。キキのこと頼むな。シルバ! …は大丈夫だな」
『ぅ…。ちゃ…と、っぃてく…』
ちゃんと着いていくから大丈夫って言いたいのだろう。
ルナは手のひらサイズになってくれたのでポケットへ。小豚になったカシを抱いて大穴へ飛び込んでいく。
二十一階層でだいぶ長居をしてしまったので、二十二階層から三十階層までは余計なことはせず、風月と【共生】し、キキにはルナ、シルバ、カシを任せて一気に駆け抜けた。
本当は全員が【共生】できるなら【共生】した状態で移動できれば良いのだが、カシが【共生】できないので全員で留守番させたのだ。
小豚とはいえ、カシを抱きながら全力での移動や戦闘は難しい…というかカシが目を回す。
そうして単独で移動したが、戦闘で苦労することはなかった。だが二十一階層で魔法の訓練をしなければ苦戦していただろうと思う。
二十二階層から三十階層は階層毎に出てくる魔物が違うが、どの階層も一種類だけ。二十五階層まではアンデット系の魔物、二十六階層からは状態異常系攻撃が得意な魔物が多かった。
しかもテイム欲が湧かない相手とダンジョン産の魔物ばかりだったのでテイムできなかったのが残念である。
二十一階層のレイスから、包帯男…ミイラに魔道死体の上位種らしきグール。そしてアークスケルトン。
この三種は異常状態攻撃などはしてこなかったが、生命力が強く、物理攻撃だと中々死なないのだ。
そして二十五階層は中身のない動く鎧のソウルアーマー。防御力も攻撃力も高かったが、魔法耐性は低い相手だった。
二十六階層からは【恐怖咆哮】のような恐怖を誘う不快音を出す大きな二足歩行のニンジンみたいなマンドレイク。
眠気を誘う歌を歌う、人の要素など微塵もない魚のようなセイレーン。
石化の息を吐き出す巨大なニワトリ…のようなコカトリス。
全身から毒液を流しているデカいミミズのポイズンワーム。
そして今いる階層にはサソリキメラという尾っぽにあたる部分が毒々しい蛇と融合したようなサソリだ。
大半の攻撃はかわしたし、攻撃があたっても【精神耐性】と【毒耐性】のおかげか異常状態には掛からなかったが、新たに【恐慌耐性】【睡眠耐性】【魅了耐性】【石化耐性】【麻痺耐性】を得た。この耐性スキルたちはどのスキルも魔法による異常状態攻撃への耐性を上げるらしく、麻痺毒のある植物を食べたりしても効果はないらしい。
風月と【共生】していると鑑定が使えるし、俺の知らない知識でフォローしてくれるから助かる。ずっと俺の中に居てくれて良いと思えるほどに有能だ。
そして現在、三十一階層への大穴の手前で全員集まっている。
「ご主人よ。そろそろ寝なくてよいのか?」
「んー。どうかな。自分でも限界がイマイチわからないんだよな」
「マー君! 休んだ方がいいよ! 人間…じゃなかったか。元人間なのに何日も不眠不休で活動ってどんな体してるの!」
「あ? 風月、説明してくれなかったのか?」
「したぞ?」
「聞いたよ! そういうスキルを持ってるからって! でもでも、絶対寿命縮めてるって!」
「……俺確か寿命ないよな?」
「精霊種だからないのう」
「そーゆー問題じゃっなーーい! 寿命がなくってもご主人様であるマー君が過労で死んじゃったらわたしたちどうするの!」
あー…過労死って死に方があったか…。まあ本当に限界なら勝手に意識が落ちるしあんま気にならないんだが…。
「じゃあ少し休むよ。ルナたちのこと頼んだ」
そして久々に休憩を取ろうと横になった瞬間意識が途切れた。
明日は閑話予定です。




