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193 精神攻撃


現れた敵の姿は黒いローブを纏った人型の黒い靄。


レイスや死神などのイメージだな。


「ふむ。レイスだのう…。風の魔法は相性が悪いからご主人任せた。と言いたいとこだが…」


あ。レイスなのか。


「言いたいとこだが、なんだよ」


「光属性の魔法しか効かないのだ」


「【精霊魔法】で光属性の魔法を扱えないのか?」


「もちろん扱えるぞ? ただ攻撃魔法は苦手…というか無理だのう。光属性は補助魔法しか使えぬ」


…どうしろと?


邪神が俺を鍛えるために配置した魔物だとしたら性格悪すぎるだろ。俺が使えない属性しか効果のない魔物を配置するとか。


「そういえば…ルナが光属性使えるな。ルナやってみてくれるか?」


『任せてっ』


「じゃあ…俺がルナを抱えて結界の外にでて攻撃させるから、お前たちは結界内にいてくれ」


ルナが結界内から魔法をレイスに当てるのは無理だし、ルナだけ外に放り出しても機動力が無さすぎてすぐやられそうだ。


「風月。こいつらどれくらい強い?」


「魔法は強力だが、身体能力は高くないのう。お主の速度なら捕まることはないだろう」


いやに詳しい。鑑定したから知った訳ではなく見たことがあるのだろう。


「なら問題ないな。行くぞルナ」


『うんっ』


結界から出ると抱えているルナが光の球を作り放つ。


大した速度じゃない。ボールを軽く投げたような速度で飛んでいきレイスに当たる。


アァァァァ


掠れたような声を上げレイスが消えた。


「よわ」


『よわーい!』


言っちゃ悪いがルナのへなちょこ魔法で一撃って…。


するとレイスたちは一斉に手を突き出し黒い靄を放ってきた。


「っと。避けながらだからやり難いかもしれないが頼んだぞ」


『うんっ』


動きながらだとやはりルナの攻撃は当たりにくい。


『風月』


『む? 念話かの? ああ。我が結界内におるからか。どうしたのだ?』


『この靄はどんな効果だ?』


『それは知らぬ。そんな物に触れたことはないのでな。まあおそらくは闇属性だから精神に作用する物だとは思うがのう』


それならシルバの精神結界内からルナに攻撃して貰えばよかったか? 精神結界内から魔法を結界の外に撃てるのかはわからないが。


『レイスはのう…たしか幽霊の上位種族だったはず。それに光属性の攻撃魔法にめっぽう弱い分、魔法の威力は強力だぞ。お主の精神耐性でもどうなるかわからぬから気をつけるのだ』


…精神耐性高いから当たっても大丈夫かな、なんて思ってたんだが、しっかり避けておかないと駄目か。


避けるといっても中々大変だ。【火球】のようにボール状で飛んでくるのならそれを避ければ良いだけなのだが、レイスは【火炎放射】のように靄を放出しているのだ。靄が辺り一体に広がる。なんてことはないが、線状に放つのだ。それを二十体近いレイスが同時に行っている。

つまりこの森という行動を制限されている場所で全てを躱すのは不可能。それでも今のところ躱せているのはルナの光の球が当たるとレイスも消えるが、靄も消えるからだ。


だが…。


「ルナ。もう少し連発できないか?」


ルナの魔法発動速度は速くない。だから靄が消え逃げ場ができるとはいえ、どんどんそれも狭まってきている。


『ルナ全力だよっ!?』


…ルナに怒られた。


「すまん」


そうして、速いとは言えないが遅くもない靄の射線を掻い潜っていく。


「あーくそっ。木が邪魔だな…」


全て切り倒すか…? ダンジョンだし、誰に迷惑がかかる訳でもその土地に影響がある訳でもないし…いや、今魔法を使って視界を塞ぐのは悪手か…。


『ご主人!』


『ど…!?』


どうした? そう念話を飛ばしてきた風月に問おうとしたところで全身に鳥肌が立ち、悪寒と吐き気、頭痛を感じた。


まずい…!


「ルナすまん…!」


『ひゃあ!?』


ルナを風月の下へ投げる。風月なら上手くやってくれるだろ。


「うぇっ…。気持ち悪りぃ…」


集中力が低下してるのがわかる。避けきれない。


「【結界】!」


やはりレイスの攻撃は結界で防ぎきれなかったようで僅かに結界を透過してきた。


「ぉぇ…。なんだこの気持ち悪さは…」


結界を透過してきてきたとはいえ、全てではない。ある程度は防げたのに先程よりも酷くなる頭痛と嘔吐感、目眩に悪寒。


「【魔圧】【邪纏】! 【精霊…ぐっ…」


慣れない【精霊化】は今の状態で厳しかった。


「悪質だなおい…」


ただ攻撃が止んだのが幸いだ。光属性でしか倒せなくとも【魔圧】【邪纏】を使えば怯むとは思っていたのだ。ただルナ達がいるからやる気がなかったんだがな…。


【魔圧】【邪纏】を使いながら呼吸を整える。


「気持ち…わるい…やば…」


「ご主人」


俺を呼んだ声の方に向くと風月が横にいた。


「なに…してんだ。ルナたちは…」


「結界を張っておるから安心せい。それよりもお主だ。できればシルバに【精神結界】を張ってもらった方が良いのだが…レイスと同様にお主の圧で動けないようなのでな」


「…怖がらせたな」


「本当だ。【魔圧】【邪纏】だろう? 対象をレイスにだけ絞って…ってああ。精神が乱されておるから出来なかったのか」


「うっ…。精神攻撃を、受けていなくても…完全に、指向性を持たせるのは無理だ。どちらにせよ、怖がらせる」


「まあ直接向けられてなくとも魔力の低い者は無理だろうな。強いてお主に殺意がないのが救いだが…。シルバの【精神結界】には劣るが…ん」


「んっ!?」


ちゅ。


突然風月が口づけをしてきたのだ。


「…おいこら。なにしてんだ」


「【精霊の加護】というスキルだ。唇による接触が必要だから仕方なかろう? 我とてご主人と睦み合うのならもう少し雰囲気というものをだな…」


なんかアホなことをぶつぶつと言っている風月は放っておいて…楽になった体を確認する。軽く頭痛はするが、嘔吐感と目眩は消えていた。


「聞いてなさそうだのう…。まあ良い。これは魔法耐性を極端にあげるものだが、残念ながら精神作用のある魔法に効き目は少ない。だが、多少は楽になったのではないか?」


「ああ。だいぶ楽になった」


ただ唇による接触が必要なスキルなんてあるのか…ん?

唇による…ってそれはつまり風月の唇が触れるなら場所はどこでも良いんじゃないのか?


「なあ。唇で触れる場所は俺の唇である必要はあるのか?」


「……さて。我はルナを連れてきてやるから少し休んでおれ。ルナが来るまではスキルは発動しておくのだぞ」


「あ…? おいこら。お前何のために口にキスしやがった!」


ふんふーんとすっとぼけてルナのところに向かう風月。後で引っ叩く。


落ち着いてきたので水分補給しつつレイスたちを見る。

レイスたちは…ただの靄で顔のパーツがないのでわかり難いが俯いて怯えているようだ。アンデットが怖がってどうするんだ。そう思わなくはないが、動きを止めてくれて助かった。

一体だけの攻撃なら耐えられるだろうが、この数の精神攻撃は無理だったな。風月に後で精神攻撃への対策とかスキルの取得の仕方でも聞いてみるか。


その後ルナを連れて風月が戻ってきた。ルナも顔がないのでわからないが、怯えているように見える。


「風月はシルバとカシのとこにいてくれ。ルナ、すまんな。おいで」


風月からルナを受け取りスキルを解除し、木々の枝を切り払う。


『ぷはぁっ! ご主人様の魔力凄いね! 怖かった!』


全然怖がっていた感じではないが、強がっているのだろうか。


「怖がらせてごめんな」


『ううんっ。大丈夫! 怖かったけど、ご主人様が怖いんじゃなくって…えーっと、魔力そのもの? 魔力の圧力みたいなのに本能が怖がった? みたいな感じ!』


…わからん。


『えーとえーと…怖い気持ちはないんだけど、体が動かなくなっちゃったのっ』


あぁ…。つまり俺が怖くて怯えていたわけではなく、スキルの効果で本能が危険信号を発して動けなくなったってことか。

ルナは俺は怖くないから大丈夫って言いたんだろう。本当、うちの子たちは優しい子だな。


「ありがとうな。さて、やれるか?」


『任せてっ!』


そうしてだいぶ時間はかかってしまったが、無事…とは言えないかもしれないが、なんとか戦闘は終了した。


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