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187 |樫《かし》

18時投稿、間に合いませんでした!(>△<;)


 


 テイムできない理由だが…。

 オークにテイムされる気がないのか、スキル自体使えないのかわからないが。だが…確実に後者だろ。跪いてるのにテイムされる気がなかったら驚きだわ。


「意志の疏通はできないが…俺の言っていることがわかるなら、ついて来い。ただ邪魔はするなよ」


「ガァッ」


 伝わったのか俺が背を向け歩き出すと、ひと鳴きしてついて来た。

 …こいつら本当に仲間意識ないんだな。仲間を殺した俺に服従するとか。まあ…降伏したのに殺すのも何だし、良いんだけどさ。ただ後ろから刺されないように気をつけないとな。


 ちなみにゴブリンのドロップアイテムはさっきの三匹と同じく槍の穂先。そしてオークからは何かの液体が入った小瓶だった。


「さて…風月は…」


「ブモッ!」


「ん?」


 鳴き声をあげたオークの方へ振り向くと右の方を指差していた。


「風月たちか。ありがとうな。というか本当に言っている意味がわかるのか?」


「ブ」


 短く鳴いてコクッと首を縦に振るオーク。厳つくて深緑よりも黒に近い色をした豚顔。可愛くないが…なんとなく愛嬌を感じる俺は変だろうか…。


『ご主人よ。こちらは散ったゴブリンは倒したぞ。追った先に他にもゴブリンとオークがおったからルナに倒させたが…そっちに行っても良いか? 何やら戦っている気配はないが』


 結構離れた位置からそう念話が届いた。

 来て構わないが…今の俺は【念話】使えないんだがな…。大声出すか? 手でも上げれば伝わるか? 


『そういえばスキルが使えないのだったか。そちらに行って良ければ手をあげてくれるかのう』


 読心のスキルでもあんのかと思うほど、意思を汲み取ってくれた風月。俺は手を挙げた。


 そしてシルバとルナを抱えた風月が戻ってきた。


『そやつはどうしたのだ? 我やルナとシルバのようなお主の配下である気配がないが』


「なんか跪いて降参したっぽいから連れて行く」


『…軽いのう』


「良いんだよ」


『ダンジョンの産まれだと地上に連れては行けぬぞ?』


「え。ダンジョン産って可能性あるのか…?」


『それはあるのではないか? ダンジョンで産まれた者と外から連れてこられた者。違いは死んだ時に消えるか消えないかだけだろう?』


「それはそうだが…」


 自我がはっきりとしているみたいだったし、勝手に外から連れて来られた奴かと思ったんだが…。


「鑑定してみてくれるか? それと意志の疏通は出来るか?」


『ふむ…種族はハイオークリーダーだの。好物が魔石らしいぞ』


 ハイオークリーダーね…。そしてやはり鑑定に出てくるのは好物なのか。


『意思疎通もできるのう。念話でだが。随分と知能が高いぞ?』


 まじか。…まさか元人間…じゃないよな?


『オークの進化種だろうから知能は高いのだろうな』


「お前…元人間か?」


「ブモ?」


『どういうことだ? と言っておるぞ。元人間のオークなんておるのか?』


 風月にそこのところは話していなかったか。魔素の影響で魔物になった人間がいるという話を簡単にする。


『そういうことか…。こやつは産まれた時からこの姿だと言っておるぞ。それと弟子にしてくれとも』


「は? 弟子?」


『うむ。強くなりたいからついていきたい。弟子にしてくれと』


「強くなりたいならそこら辺で魔物でも狩ってろよ。面倒くさい」


「ゴッ!? ブモッブモッ!」


「…おい。風月こいつなんて言ってんだ」


『そんなこと言わず共に連れて行ってください。と言っておるのう』


「やっぱり言葉は理解してんのか?」


『みたいだのう』


 仕方ない…。俺はオークと向き合う。見上げるような形になるが。


「条件がある。しばらくはただついてこい。戦闘は俺の指示に従え。今は無理だが、俺のスキルが使えるようになったらテイムする。弟子ではなく配下になれ。そしたら強くしてやる」


「ブモォ!」


『喜んでおるぞ』


「…もう少し見た目がなぁ…せめてもふもふ要素があれば…」


「!?」


 あ。なにやらショックを受けたかのように目を見開くオーク。まあいいか。


 とりあえず次の獲物を探しながら名前を考える。

 何が良いかなー。〝カシ〟かな。


 由来? オークで一番初めに出てきたのがオークの木。日本だと確かナラかカシの木だろ? てことでカシで。


 我ながら安直だよなー。でも漢字二文字とか三文字とかで由来もちゃんと考えて…なんて面倒だし、思いつかない。まあ番号よりいいだろ。


「そういうことで、お前の名前はカシな」


「ブモ?」


『何がそういうことなのかさっぱりなのだが? オークも戸惑っておるぞ』


 風月がそういうとルナとシルバもその横で揺れる。頷いているつもりだろうか? 


「気にするな。とりあえずカシって名前だ。不満があるなら一度だけ聞いてやる」


 一度だけ変更できるからな。


「ブモッ!」


『文句はないようだのう』


「ならいい。ほらさっさと訓練しながら大穴探すぞ」


 スキルが使えないとやはり落ち着かない。早くこの階層から移動しよう。


 この階層はオークとゴブリンのみらしい。

 カシはハイオークリーダーらしいが、今のところ、風月が鑑定した限りでは同じ種族はいなかったらしい。どれもただのオークだと言っていたからカシはこの階層では珍しい個体なのだろう。



 そして魔物たちが持っている武器は剣、槍、棍棒の三種類だった。


 棍棒だと、棍術と棒術の両方が使えるのだろうか? というか棍も棒も同じだと思うのだが…気にしたら負けだろうか?


 そして戦闘する際、槍相手には俺も槍を使った。

 また、剣には剣で。棍棒には棒で戦う。

 俺の持つ無銘剣は両刃の西洋剣。ただし俺の背丈並みにデカいものだ。


 無銘棒は一時期…一瞬? 俺が使っていたバットのグリップよりも太めで、長さは俺一メートルほどか。

 ゴブリン相手に使ったのだが、かなり振り回してやすかった。

 先端はグリップよりも僅かに膨らんでいるせいかバランスがよく、長さも重さもちょうど良い。それにグリップは滑らないように出来ているのだ。


「無銘拳鍔はしばらく封印だな。無銘棒がこんなに振りやすいとは…」


 他の武器も一通り出してみたが、どれも華美な装飾はないが、なかなか扱いやすかった。

 ただ、刀だけはどうも使いにくい。切れ味はいいのだ。ただいつものように力任せに振ったら折れるぞ。と俺の感覚が訴えている。それほどまでに薄い刃なのだ。


「というか…風月」


『んんー?』


 ルナを抱えながらシルバと共にふわふわと宙に浮きながらついてきている風月に声をかける。


「上空から大穴探してくれよ。見通しいいし、早く下に降りたいんだが」


『ふむ…却下だのう』


「…おいこら。面倒くさがるな」


『…その言葉、お主にだけには言われたくないのう。事あるごとに面倒と呟きおって。それにそうではない。スキルを使えないというのは存外、お主の訓練に適しておると思ったからのう。そのまま武器の訓練をしながら地道に探すのだ』


「めんど……ケチだな」


『面倒なのを我のせいにするではない!』


「はいはい。シルバ頼めるか?」


『なっ! お主! シルバやらなくて良いぞ!』


『だ…め』


 !? シルバが拒否、した!?


『ふふん。我もシルバはお主のためを思って言っているのだ! シルバ偉いのう』


『ぅ…ん…』


「ブモォ」


『お主は黙っておれ!』


「ん? カシなんて言ったんだ?」


『お主が気にすることではないぞ』


 なんだよ。気になるな。


 仕方なくゴブリンとオークを倒しながら歩き回って数時間。ようやく大穴を見つけた。



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