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184 全共生

 


 とりあえず全員、魔動死体や魔動骸骨の攻撃の届かない空中に浮きながら移動した。

 戦闘に関しては俺と風月、ルナは手出しをせずシルバに任せていた。

 とは言っても、シルバは漂って魔動骸骨の上空を漂っているだけだが。漂いながら現在使ってるスキルは【吸魂】。


【光吸収】と【熱吸収】は道中いた燐火に効果があったが、今【吸魂】の対象となっている魔動骸骨には効果はなかった。

 もちろん燐火に【吸魂】も有効だった。


【吸魂】を発動してから二分ほど。


 骸骨の眼窩に薄らと灯っていた灯りが消え骨が崩れ去る。


『ぉゎ…』


 終わったって言ったのだろう。小声で聞き取り難いが、これは慣れだな。念話のようなもので耳で聞くわけでもないのに小声で聞き取り難いってのも不思議だが。伝える意思が弱いのだろうか?


「おし。よくやった。次は魔動死体に試してみよう」


『ぅ…ん』


 燐火に対して【吸魂】【熱吸収】【光吸収】の三つを使った結果はどのスキルでもだいたい二分ほどで倒せた。

 スキルレベルはもちろん関係あるが、敵の魔力やレベルによって倒すまでの時間に変化があるかはまだわからない。ただ二分間上空に漂っているだけで倒せるならまあ悪くはないだろう。


 そして魔動死体。見つけた個体の上空に先程と同じように陣取りスキルを使うシルバ。


 一分、二分、三分と時間が過ぎ、五分以上経っただろうか。風月が『まだかのう』と痺れを切らすほどの時間が経っても魔動死体は倒れなかった。


「ゾンビには効かない、か…。じゃあ【亡者純化】だ」


『ぅ』


【亡者純化】は先程まで試していた三つのスキルとは違いエフェクトがあって分かりやすかった。

 シルバから魔動死体に向かってキラキラとした光の粒が降り注ぐ。


 ゾンビは唸りながら悶えて十秒経たずに崩れ落ちた。


「はや…」


『すごいのう。そやつは死んだのかのう?』


 無銘槍を取り出し上空から突いてみるが特に動かなかった。


『ご主人様? これ、分解する?』


 ルナは魔石を取り出すために分解してくれるって言いたいのだろう。だが…。


「やらなくて良いぞ。別にどうしても欲しいってわけではないからな」


『わかったっ』


 その後シルバにはこの階層を移動して狩りを続けるように言う。念のため風月にシルバの護衛としてついていくように言って俺の中から追い出す。


「ずっとご主人の中で何もしないってのも良くないしのう。手伝ってくるとしようか」


「お前は魔物を倒してもレベルが上がるわけじゃないんだから戦闘はシルバに任せろよ? もしシルバに攻撃してくるような奴がいたら守ってやってくれ」


「任せるのだ」


 二人を見送ったら、俺はルナのレベル上げだ。


 いつも同じ様に俺が瀕死にさせルナがトドメだ。ここの魔物が弱く、この作業をやっているおかげでかなり手加減が上手くなっている。


 ルナの魔力がなくなるまで同じことを繰り返すとシルバを抱えた風月も戻ってきた。


「…シルバ大丈夫か?」


 光が物凄く弱々しい。


『ぅ…』


「魔力をギリギリまで使ったからのう。それにしても我が触れても熱くないのだな」


「シルバ自身で熱量や燃焼するかどうかオンオフできるんじゃないのか?」


『ん…』


「便利だのう。ルナも魔力がギリギリだのう」


 ギリギリまでやったからな。今、ルナは腕の中で眠っている。話しかけても反応しないから眠っていると判断しているだけだが。寝息も聞こえないし。


「ご主人よ」


「ん?」


「シルバもルナも我と一緒に【共生】でお主の中で休憩させることはできないのかのう?」


 あー…そういえば試してないな。複数同時に【共生】可能なのか。


「やってみてくれるか?」


「うむ。シルバ、【共生】を使うのだ」


『…ょぅ…ぃ』


 きょうせいと言ったんだと思う。シルバが光の玉となり俺の体内に取り込まれた。


「では我も行くかのう。【共生】」


 風月も光の玉となり、俺の中に入る。


「どうだー?」


『うむ! 問題ないぞ!』


『ぉち……く』


『シルバも落ち着くようだ! それよりお主に何か変化はないかの?』


 変化?


「いつも通り風月が【共生】したから翼は生えているが…あ…」


『んん? どこか変わっておったか?』


「ああ。両足…くるぶしから下に銀色の炎が纏っているな」


 足を動かしてみるが消えたり熱かったりすることもない。というか…。


 トンッ。


「この銀色の炎を纏っているからだと思うが…宙を蹴れるんだが…」


『ふむ…? ちょっと待っておれ』


 そう言うと風月が出てきた。


「ほほう。本当に燃えてるの。というかお主自前のスキルで飛んでおるのか?」


「そりゃさっきまでお前が中にいなかったしな。そのまま【重力操作】を使ってるぞ」


「そのスキルの発動を止めてみるのだ」


 なんだ?

 とりあえず【重力操作】のスキルを解く。それと同時に僅かに浮いていたため落下…しなかった。


「え?」


「やはり…シルバが【共生】していれば宙に浮けるのだな! 飛ぶのではなく宙を歩く感じかのう?」


 一歩踏み出すと、地に足がついているわけではないのに地を踏みしめたような感覚がある。


「おおー。これは凄い。飛ぶのとはまた違った感覚だ!」


 というか普通に歩いているつもりなのに浮いているのだ。飛ぶよりもこちらの方が落ち着くかもしれない。


「上昇、下降はできないのかの?」


 右足を出すと、どこかで止まることなく左足と同じ高さに落ちてしまう。


「無理そうだのう…」


「少し待て」


 膝を曲げ右足を上げると、今度は階段を登るように、そこを踏みしめるイメージをする。それと同時に足の裏にしっかりとした感触があった。

 その右足を軸にまた階段を登るよう左足を上げるとまたもや右足より少し高い位置で左足が止まる。


「登れそうだ。階段を登るイメージ…足を上げた先に足場があるイメージをしたら出来た」


 おそらくだが、足に纏っている炎は宙に浮く能力で、移動可能な理由は【空中移動】のスキルなのだろう。声に出して発動しなくともイメージだけしていれば移動できるということは常時発動型か。


「ふむふむ。これで空中戦が更に楽になるのではないか?」


 確かに、普段は【重力操作】か風月のスキルで飛び、細かい機動や空中で反転したりするときにかなり便利だろう。


『ゃく……たっ…?』


 シルバが何かを言ってきた。おそらく役に立つかどうか聞いてきたのだろう。


「もちろんだ。かなり助かるぞ」


『ょ…った』


「では次はルナだのう! ほれ、ルナ! 起きるのだ」


「寝かせてやれよ。起きてからで良いだろうに」


「む…気になるだろう」


『ん…ふーげつ…うるさい…』


「ルナがうるさいってよ」


「む!? すまぬ…」


『ふあぁ…。んみゅ…どうしたの?』


「ルナ起きたのか?」


『んんー? 起こされた? 風月に!』


「酷い精霊だなー」


『ひどいねっ』


 ふふっと笑うルナ。


「むぅ…」


 風月は何も言わずに光の玉となって俺の中に入ってくる。背に翼が生えたし【共生】したのだろう。


「風月拗ねるなよ。冗談だっての」


『拗ねておらん!』


「ルナ。風月が拗ねたし、風月の言う通りに【共生】してみようか」


『うんっ! きょーせいっ!』


 腕の中からルナが消える。


『あっ。風月だ! ごめんね?』


『む…我も、起こしてしまってすまぬな』


『大丈夫! あっ。シルバもいる!』


『ょ…しく』


 俺の中から三体の声が響く。


「問題ないか?」


『大丈夫っ』


『…体になにか変化はあるかのう?』


「んー…特にないな」


 風月はないか翼、シルバは宙に浮く炎。ルナなら?

 もちもちした体…? そんな物は何処にも生えていなかった。


『うーむ。必ずしも特徴が現れる訳ではないのかのう? まあスキルは使えるのだろう?』


「ああ、多分な」


 先程倒して、未だに消えていない魔動死体が近くにいたので近づく。


「【魔素分解】」


 ………。試しに声に出してみたが、やはり何も起きない。


『何も起こらんの。口に含んでから分解してみてはどうだ?』


「ぜっったいに嫌だ」


『ふははは! 我もぜっったいに嫌だかのう!』


「なら言うんじゃねえよ」


『冗談だ冗談。触れて試してみてはどうかのう?』


「いや、多分無理だ。【魔素分解】は体内に取り込んだ物を分解するスキルだから、手に触れるだけじゃな…」


『なら早く口に…』


「やらん」


 他にルナのスキルで使える物は…。




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