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175 恩寵

 

「素直に【恩寵】使えばいいだろうに」


「やけに勧めてくるな?」


「うむ。【恩寵】がどんな効果を及ぼすのか見てみたいからのう」


 興味本位かよ。俺も気になるけどさ。


「【恩寵】使うか…。さすがに、俺が強くなるために必要なことかもしれないとはいえ…こんな時間がかかるのもな」


 弱い魔物を育ててみろと邪神は言っていたが、スライム弱すぎだよ。レベル十になるまで何時間かかるやら…。


「とりあえずナメクジ相手に同じ要領でやらせてみる。それでも変わらないようなら【恩寵】を使う」


「楽しみだのう。強くなるのだろうか? 幼さがなくなるのだろうか?」


 既に俺が【恩寵】を使うのが確定しているような言い方をする風月。


 そして風月の予想は当たった。移動してナメクジをルナに倒させたのだが、【雷球】を四発も使う必要があり、レベルは上がらない。すぐ近くにもう一匹ナメクジがいたので体当たりさせてみたが、スキルとして【体当たり】は覚えられず、ナメクジが倒れるまでかなり時間がかかった。動けないくらい弱っているナメクジ相手に、だ。


「これはだめだな」


「初めから使っていればよいのだ」


「お前は効果を知りたいだけだろうが。ルナのためになるかどうかだ」


「まあ…地道にやった方がルナの為になるかも知れぬが…そんなに時間の余裕はないのだろう? ちゃちゃっとやってしまった方がいいと思うがのう」


「わかってるよ。ルナこれから俺の魔力…じゃなくて魔素か」


 未だに違いがわからないが。魔法を使う時の力が魔力、魔力の素になったり、体を構成する一つだと認識している。


「魔素を分け与えるが痛かったり、体がおかしかったら言うんだぞ?」


『まそ! はーいっ』


「遂にやるのだな!」


 目をキラキラさせ食いつくように近づく風月。


「近いわ! やりにくいからくっつくなよ」


「良いではないか。これも主従のコミュニケーションだ」


 ったく。しれっと胸を押し付けてくるのが鬱陶しい。ハクくらいお淑やかになって欲しい。いや、ハクはそういった知識がないからか?


 押したりくっつかれたりを繰り返しているのも馬鹿らしくなったので風月が引っ付いてくるのは諦めてルナに手を触れる。


「【恩寵】」


 体内にある魔素と魔力の区別はつかないので、魔素を分け与える。成長させる。そうイメージして魔力を練りながらスキル名を口にする。


『ひゃんっ』


「どうした? 苦しいか?」


『あったかい。ごしゅじんさまがはいってくる…?』


 ちゃんと発動してるみたいだな

 しばらくするとルナが発光し始めた。


「これ…大丈夫か?」


「お主の魔素を受け入れ存在の格が上がっておるのだろう。進化のような物だ。心配することない」


 発光が収まるとぱっと見何も変わっていないルナがいた。

 目もなければ口も鼻もない。ただの金色のボール。だが魔力量が数倍になっているのがはっきりとわかった。


「ルナ…どうだ?」


『ごしゅじんさま? るな…ちからが湧いてくるきがするっ』


 舌足らずなのも変わらなかった…。


「ついでに[知識譲渡]もしてはどうだ? 魔力量が増え、格が上がったルナなら問題ないだろうしのう」


「ああ…そうだな」


 風月に言われるがまま[知識譲渡]を行う。


「これで…できてると思うが。ルナどうだ?」


『ご主人様っ! 凄いっ。私…ルナ! ご主人様の配下で仲間!』


「ほほう! はっきりと話せるようになったのだな」


 これには驚いた。こんなハキハキ喋るようになるとは。知識とは偉大だな…なんて考えながら風月とルナの会話を聞く。


『あっ。ふうげつ…風月だ! 風月は精霊なんだよねっ』


「うむ。そうだぞ」


『…あれ? 精霊ってふわふわしてて気まぐれで幽霊みたいで、るなみたいにまん丸なんじゃないの…? 幽霊…オバケ…ひとだま…?』


 幽霊と言ったのはいいが、幽霊を見たことないから何かわからないらしい。

 ルナは俺に与えられた知識を探っているのか動かなくなった。俺も幽霊なんて見たことないがな。


「ご主人…これはお主の知識だろう? 精霊を何だと思っているのだ」


 そう言って半眼で睨んでくる風月。


「いや、お前契約する前は球だったろうが。それに幽霊とか人魂っぽかったろ。幽霊も人魂も見たことないが」


「それもそうだったか。だがふわふわしてたり気まぐれだと言うのはなんだ?」


「風の精霊って気まぐれってイメージがあんだよ。それだけだ。ふわふわはしてたろ」


「ふむ…。他意がないのならよい」


「なんだよ。そんな悪いことじゃないだろ」


「ふわふわで気まぐれというのは…どことなく馬鹿にされた気がしてのう」


「馬鹿にしてないから安心しろ。それとルナ。それは俺の先入観…というか伝承とかからの知識だ。気にするな」


『うーん? わかった』


 素直でよろしい。


「ほれほれ。ステータスはどうだ? 何か変化しておるか?」


「急かすな。確認して教えてやるから」


 ルナのステータス表示!


 ————————————————————

 個体名【ルナ】

 種族【スライム】

 性別【メス】

 状態:【進化可能】

 Lv【★10】

 ・基礎スキル:【分解Lv4】3UP

 【雷化Lv4】new +3UP

 【土化Lv4】new +3UP

 【光化Lv4】new +3UP

 【魔素変化Lv4】new+3UP

 【魔素変形Lv4】new+3UP

 【体当たりLv4】new+3UP


 ・種族スキル: —

 ・特殊スキル:【雷魔法】【土魔法】【光魔法】

 【共生】new

 ・称号:【金色魔素体】【恩寵を受けし者】

 ————————————————————


 …異常だろ。【恩寵】…やばいな。それともルナがおかしいのか? 何故か進化できるし…。


 ついさっきまで、言っては悪いが雑魚の中の雑魚…これ以上弱い種族なんていないだろ。という感じだったのにな…。


 風月にも説明してやった。


「ほうほう! 我にも使ってみるかの? 使ってみても良いぞ!」


 あ…こいつ、もしかしてルナのこと実験台にしたのか? 考えすぎか…?


「なんだ。そんな疑うような目で見て…もしかして我が【恩寵】の実験台にルナを勧めたとでも思っておるのかのう?」


 …バレた。


「まったく…信用がないのう」


「いや、いくら配下で、既に仲間意識があるからといっても性格や思考を把握できてるわけじゃないんだし仕方ないだろうが」


「…それもそうだのう。まあそんなつもりはない。ご主人の説明で害はないだろうとは思っておったしのう。ただ、我に使っても大して意味はないだろうと思っておったのだ。だが…魔素の量も魔力の量も少なかったルナがこれほどの成長をしただろう? なら我ならどうなるのか気になってのう」


「うん? 弱いルナだからこそこれだけ影響があったのかもしれないだろ? 確かに無意識に成長してから使った方が良い気がしていたが…」


「お主がそう感じているということはそうなのだと思うぞ? ある程度の下地…スキルがあった方がお主の魔素を受け入れてレベルが上昇するスキルの数も多いだろうしのう」


「ああ。それもそうか。…じゃあやるか?」


「うむ。やってみて欲しいのう。だが…お主の魔素は大丈夫かのう? 体を削って分け与えるようなものだろう?」


「うーん…平気じゃないか? 特に何か減った気はしないし…使った感じ悪い感じはしなかったからな。俺の感覚で言っていいなら、たとえ減っても戻る気がする」


 献血のようなものだと思う。ちょっと血を分けただけでしばらくすれば元に戻ると言えばいいか…まあ嫌な感覚がしないってだけで結論を出していいのかはわからないが…まあいいだろう。


「それならば良い。きついようならやめるのだぞ?」


「ああ。流石に自分が弱体化するなら安易に使わないさ」


 そして風月に触れ【恩寵】を使用した。


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