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171 リミッター

 


 風月が俺の持っているスキルを全て教えろと言うので、面倒ながらも持ってるスキルを簡単な説明付きで話してやった。


 それと同時に魔物も狩っていたが…手加減が難しく、悉く飛散させまくった。


 大影蜘蛛のガンマよりと何倍も小さい、バスケットボールほどの蜘蛛やナメクジ。他にはムカデやミミズなどの虫もいたが、手加減しても死んでしまう。

 おかげで次の階層に行く大穴は見つけているのに未だテイム出来ていない。


 ダンジョン産の魔物は消え、邪神が外から連れてきたと思われる魔物は肉体の一部や魔石が残るので判別しやすく、割合としては七:三ほど。

 スライムも全てが魔石を残すわけではなくダンジョン産もいた。


 ちなみにドロップアイテムは塩に砂糖、ブラックペッパーにバジル、ローレルと調味料とスパイスしか出ていない。しかも全て薬包紙に包まれて、だ。何の意味があるのか問いただしたいが…それよりも魔物の耐久力をもっと上げろと言いたい。


「あーもう。面倒くさい!」


「だがこれも訓練だろう。それにテイムを諦めたわけではないのだろう?」


 風月の言う通り、テイムを諦めたわけではない。だがテイムできないのだ。

 何度か食べ物をあげて懐いてくれるかな、なんて思ったがそんな都合良くはないらしい。俺の出した食べ物に釣られたやつはもちろんいたが、食べた後に襲ってくるのだ。


 だから、攻撃して、弱らせ、上下関係をはっきりさせたないとテイム出来ないのでは? そう思ったはいいが、どんな攻撃でも一撃で死んでしまってはどうしようもない。


「ご主人。何故【リミッター】を使わぬ?」


「あ? 【リミッター】って魔力を消費して自分の能力を下げるんだからこの状態にはぴったりだが…魔素の吸収率が上がるんだよ。ちゃんと鍛えないうちに魔素を吸収し過ぎたら不味いんだろ?」


 今更な気がするし、体に異常を感じないし、本当かよ。とは思うけど…風月は色んな事を知っている精霊である上、真剣な様子だったから信じることにしている。


「お主…ちゃんと話聞いておったか?」


「聞いてたが…どの話だ?」


「……ここ魔素は神の神聖な力も混ざっているから、ここで魔素を吸収し続けても体に害はない。ここで鍛えればおそらく、魔素の影響で死ぬことはなくなる。そう言ったではないか。吸収しても問題なかろう」


 あー…ああ。そんなこと言ってたわ。邪神が俺のために色々してくれたって話だ。感謝したくないなーって考えてたからか印象に残ってなかったのかも。


「忘れておったな」


「忘れてたな」


「ついさっきだろう!? 何故忘れるのだ…」


「邪神に感謝すべきかしないべきか考えたせいだと思う。つまり邪神のせい?」


「創造神のせいにするでないっ。まったく…お主が忘れっぽく、興味のあること以外とことんどうでも良いと思っているのは短い付き合いでも良くわかったのう…」


「いや、興味ないわけじゃないからな? それで、【リミッター】使って問題なさそうってことで良いか?」


「使って良いぞ。おそらく、ここまで耐久力、防御力の弱い魔物を用意したと言うことは、お主が【リミッター】を使うこと前提でここの魔物を配置したのだろう」


 ほお…。


「風月凄いな。あの邪神を理解するとは」


 俺にとっては、便宜測ってくれていても未だに愉快犯だ。


「お主の方が理解し難いわ…」


「俺? 邪神なんかと比べたら相当単純だぞ。仲間たちと狩りとレベリングしながらのんびり楽しく過ごしたいだけだしな」


 そうだよ。それがやりたいことなんだ。世界の危機だとか命運だとかはどうでも良い。異次元世界やダンジョンは楽しめそうだが、それだけだ。


 今の目標はドラゴンを討伐。そしてテイム。拠点の周りから危険を排除して皆で過ごすことだ。

 後は旅もしたいか。海に行きたいって想いも未だあるし、海外にも行ってみたいな。

 それと元人間じゃない人型の魔物を仲間にして農業してもらったりして親父とお袋、メイとミミの生活を安定させてやりたいとも思う。

 クー太たちの進化先を全て見たいってのもあるか。


 …まあそのやりたいことやるためには魔族をどうにかしなければならない、と言われればそうなのかもしれないが。面倒だ…。


 とにかく、考えてみるとやりたいことがたくさんあった。だが、小難しい事を考えているわけじゃないし、単純と言っていいのではないだろうか。


「おし、とりあえず【リミッター】だな。魔力を…半分くらい使えば良いか?」


 全魔力量の半分ほどを使うイメージで【リミッター】を発動する。


「うおっ…とっと…」


 転びそうになった。


「何をしておるのだ?」


「【リミッター】を発動したら、体が重くなった…というか怠い? 力が入らない感じだ」


 近くの木を殴ってみると、ドンッ。という音と共に拳の跡がつく。


「穴が空かない…折れない…手が痛い…?」


「それだけ聞くと何を当たり前のことを言っておるのだ、と言いたいが、かなりパワーダウンしてるみたいだのう」


「ああ」


【火球】を木に向け軽く放ってみるが、焦げ跡がつくだけだった。

 相当弱くなっている。

 試しに全力で【紫紅爆】を放つ。


 ドンッ!


「うわあ…よわ…」


 周りの木々数本を吹き飛ばすだけで終わってしまった。俺の現在の魔力とレベルで全力で放てば辺り一面破壊できるというのに…。


「弱くなることが目的なのだから良いだろう。解除はいつでもできるのかのう?」


「ああ。解除したいと思えばできるみたいだ。使用した魔力は戻らないが」


「そうかそうか。ならば早速やってみるが良い」


 そう言って俺の後ろを指差す風月。そこにはスライムが五匹いた。

 ピョンッという擬音語が聞こえてきそうな飛び方でこちらに向かってくるので、向かってきた端から軽く殴る。いや、触れると言った方が正確かもしれない。


「おお、やったぞ」


 結果は五匹中二匹が生き残った。


「それだけパワーダウンした上、触るかのような加減でも死ぬ個体がおるとはのう…」


 まあか弱いんだよ。普段ならここまで弱いとテイムは諦めるが、テイムした方がいいらしいしな。それにスライムは一度も見たことがない。スライムテイムは定番だろ。だから俺はテイムする!


「張り切っているようだが…死んだ三匹は霧散してドロップアイテムを落としておるからのう。そこの虫の息の二匹もダンジョン産ではないかのう?」


 …!!


 嘘だろ。テイム!


「テイムを念じても何も起きない…」


「次に期待だのう」


 …ストレス溜まりそうだ。スライム一匹テイムしたらすぐさま次の階層に移動してやる。


 そしてそう思っている時ほどスライムが出てこないのは何故だろうか。


 ナメクジ、ナメクジカップル、ナメクジ群れ。蜘蛛、蜘蛛、蜘蛛。ミミズの群れ。ムカデの群れ、ダンゴムシの群れ。そしてナメクジだけでなくカタツムリもいた。

 どうしてムカデとミミズを魔化させたのだろうか。いや、わざと魔化させたわけではないか。

 だが、誰得だよ。こんな巨大なニョロニョロテカテカしたやつ、好きな奴いるのか?


「スライム出ないのう」


「本当にな。次の階層行くか?」


「三階層にスライムがいる保証はないがのう」


 だよなー。


 諦めず、しばらく森の中を彷徨っているとようやくスライムの群れを見つけた。


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