表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/250

154 不穏な気配?

連続投稿七本目です!

 

 拠点へ戻ってきたのはもう完全に陽も落ちて暫くした頃。リーダー格達から簡単に話を聞いて自室へ戻ってその日は眠った。

 巨大鳥は仲間の鳥たちが気絶しているせいで、正気に戻っているかわからないからと、鳥たちが回復するまでは留まるらしく、継続して見張りを買って出てくれたので任せた。


 翌朝、と言っても寝る時間がいつもより早かったためかまだ陽は出ていない時間に目が覚めた。体調も魔力も気力もすこぶる良い。


 昨日連れて行かなかったレイやパンも起こして一緒に部屋を出る。

 一階に降りると俺が適当に放り出した家具…椅子に座りテーブルを囲む親父とお袋、メイ、ミミがいた。


「おはよう。こんな時間に四人ともどうしたんだ?」


「ああ、おはよう。体調は大丈夫か?」


「大丈夫だよ…って、親父の方こそ大丈夫か? 疲れてるみたいだけど」


 お袋は特に変化はないが、親父はなんか元気がない。それによく見るとメイとミミは薄らとクマがあった。寝てないのか?


「マコトさんおはようございます! 昨日はお疲れ様でした!」


「お疲れ様です…。昨日は力になれなくて…」


「ミミ。謝る必要はない」


 ミミが申し訳無さそうに謝ろうとしたので、それを遮り必要ないことを伝える。


「…はい」


「メイも申し訳ないなんて思う必要はないからな? 俺が率先して前線にいたのは…趣味…みたいなものだしな」


「うちの息子はいつの間に、切った張ったな物騒なことが趣味な戦闘狂になったのかしら?」


 お袋が頬に手を当てやれやれといった感じでため息を吐く。


「いや、趣味ってか…いや、趣味か? いや、それはどうでもいいんだよ! 嫌々とかメイたちを守るための自己犠牲とかじゃないから気にするなってことだよ」


 まあ守るつもりではいるし、実際心配って気持ちもなくはないが…戦うの好きってのも本当だしな。

 ……あれ? もしかして親父に言われたように、俺戦闘狂…?


「ふふ。わかってるわよ。それで、ご飯でも食べる? 何か作るわよ?」


「いや、大丈夫。適当に済ますから」


 お袋の提案は断る。今は魔石で充分だ。


「また魔石? 身体壊すわよ?」


 …口に出してないよな?


「大丈夫。落ち着いたらお願いする」


「わかったわ」


 お袋はパッと見いつもと変わらないが寝てないんだろうし、わざわざそんなことすることはない。自分で作れないわけでもないのだし。


 親父たちは俺が寝ている間に何かあった場合のために起きていたらしい。全員、それなりに戦って疲れていただろうから普段交代で寝て見張りをすればいいのにと思ったが、全員で起きていた方が安心出来ると言われた。そんなものか。


 その後は昨日のことを話した。どこで何をやっていたか、襲ってきた魔物の種類や数、藤堂たちはどうしていたかなどを。

 俺の仲間にいない魔物の話など、特に興味のそそる話もなかったので簡単に報告してもらい、まだ大丈夫だと言う親父たちは自室までクレナイやハクに強制的に連れて行ってもらった。


「おはよう。なんかあったか?」


 外に出て巨大鳥に状況を聞く。


『魔物の襲撃はない。ここら一帯の魔物は倒したのだろうな。昨日はだいぶ派手にやったようだしな』


「まあ…」


『お主はあっという間に我より強くなったな。少し前まではそこらにいる人間と大差ないレベルだったのだろう?』


「まあそうだな。確かに…あっという間だったかもな」


 毎日が濃くてあっという間という感じはしないが、ひと月も経っていないんだよな。


「魔力は増えたけどお前より強くなったって感じはしないけどな」


『ふっ。ならばこの騒動が終わればまた手合わせしてやろう』


「楽しみにしとくよ。それで、その言い方だとまだ終わってないような言い方だけど、なんかわかるのか?」


『まだ不穏な気配を感じるのでな。確証はない。それに山の方はまだ…』


 山? そういえば山が騒がしいって言っていたな。


『うむ。天狗か竜か…他の者か。操られているのか、この騒動に便乗して暴れておる者がいるのかはわからぬが』


 ナチュラルに俺の心の声に返答しないでほしい。


「今の俺なら竜は余裕か?」


『…産まれたてや普通の竜なら二対一でもなんとかなるだろうな。だがこのような世になってすぐ産まれたやつらは厳しいだろう。我も全ての竜を知ってるわけではないが』


 まじか。まだ敵わない敵がいるのか。ならこれからもレベル上げないとな。魔物たちだって成長し、進化していくんだから。


『………マコト。物凄い顔してるぞ?』


「ん?」


『ご主人さま楽しそうー』


『そうね。びっくりするくらい凶悪な顔だったわ』


「かっこいいと思うの!」


 クー太、ラン、ラックがそう言い、他の者たちも同意するかのように頷く。


 笑顔なのか凶悪なのか格好良いのかどれだ。


「いや、やっぱり張り合いがなくなると訓練とレベル上げのモチベーションがなくなるだろ?」


『ならたまにボクが戦ってあげるー!』


『それいいわね! 私とクー太対ご主人様なら良い勝負になりそうだわ!』


「ならワタシも混ざるの!」


 私も僕もと周りにいる主力メンバーが言い募る。いや、お前たち全員相手にしたら、さすがにすぐ負けるわ。


「でも、暇な時にやってみるか」


 だがまあ、ゴブリンを倒すよりそっちの方が訓練になるだろうから主力メンバーとの戦闘訓練は許可しておく。


「お前たちは周りの警戒に当たってくれ。他の魔物たちは休ませてやらないとだしな」


 一晩中警戒してくれていた巨大鳥に休むように伝えた後、クー太たちに周囲の警戒を頼む。


 現在警戒に当たっている魔物に会ったら戻るように伝えてもらうことにして、クー太たちに周囲へ散ってもらう。

 クシハ、エリン、シス、サンク、レイ、パン、ディア、デルタ、アルファには分散してクレナイやハクたちに同行させた。


 俺は一人柵の中と城壁内を歩きながら、リーダー格の魔物を探し全員一旦休むように伝えていった。


「マコト君」


 俺を呼ぶ声に振り返ると藤堂がお供を連れてやってきた。お供AとB…名前なんだっけ? 会う度に同じこと思っている気がする。


「水島です!」


「土屋です!」


「え?」


 なんか名乗られた。そうそう水と土だ。


「名前なんだっけ? って顔していたわよ」


「気のせいだ。…それで、どうした?」


 顔に出てたか?


「もう魔物の襲撃はないのかしら? もし終わったなら畑作りを再開したいのだけど…あとは簡易的な物でもトイレ作ったり、水浴び場作ったりしたいわ」


「あー、どうだろうな。まあ畑作りは開始して大丈夫だ。トイレとかは俺がやっておくよ。適当に穴開けたり、土で壁作れば良いだろ?」


「いいの? 助かるわ」


 土屋さんと水島さん、そして藤堂を見ると服はヨレヨレで汚れもついている。


「綺麗な服ないのか?」


「いくつかはあるけど、そんなたくさんの荷物は持ってこれなかったから」


「確かにそうか」


「あまり清潔とは言えないわね。ごめんなさい」


「謝ることない。ただ少し気になっただけだから」


「じゃあ私たちは行くわね」


「「お疲れ様です!」」


「あ、ああ」


 なんだあれ。まじでお供…舎弟…いや、子分? 

 そんな立ち位置だから印象が弱いんだぞー。名前を忘れる俺は悪くないぞー。なんて口にはしないが、事実覚えにくい。


「まあいいか」


 クー太たちと同じように外に出て辺りを見て回ろうかと思ったが、やめた。藤堂たちにサービスしようかと。 

 全員が集まれる建物…と言っても壁と天井があるだけのものになるだろうが、大きめの物を作ってやろうと思う。


 何故なら、城と城の外での生活水準に差があり過ぎて俺が彼等を冷遇しているような気になるからだ。別にそんなことはないんだけども。


 空いてる場所に【地操作】で壁を作る。


「もはや地を操作というよりも、土魔法だと思うんだが。まあ地面に接している土しか操作出来ないけど」


 天井は結界だ。永久的に持つかはなんとも言えないが、電気もないし、土で覆ったら真っ暗になるからな。


 絨毯もサービスしてやろう。体育館ほどとは言わないが、それなりに広いから全ては覆うことは不可能だが、大きめの物を二枚ほど。

 ついでに服もだ。子供っていたか? あんま覚えてないが、クー太たちが変化した時のためと思って持ってきていた子供服を少し、クレナイとハク、親父たちのために持ってきた男物と女物の服も出しておく。


 他にはテーブルや、電池式と手回しで充電可能なライト、飲み物もかなりの数が【亜空庫(小)】にあるから出す。


 残念ながら扉なんて上等な物は作れないので【風刃】で長方形に開けるだけ。窓代わりに細長く、人や魔物が入れないくらいの細さのものをいくつか開けていく。ネズミなら入れそうだが。


 今作った建物は集会所、とでも呼ぶことにする。そして集会所の隣に以前作った要領でトイレと風呂場を二つずつ作る。【穴掘り】のスキルを持つツヴァイがいないので時間はかかったが、まあ問題はないだろ。


 外に出ると藤堂たちが連れてきた人たちが集まっていた。


「……」


 藤堂を介してしか話していなかったし、名前も知らないような人たちがジッとこちらを見てくるのは居心地が悪い。

 そのまま無視して離れる。


「あのっ!」


 はぁ…。当分はここに住むんだろうしあんま険悪な関係になるのは良くないよな。俺も気分悪くなるし…。


 仕方なく呼ばれた声の方へ振り向く。


「これって…」


 メイくらいか? 女性が話しかけてきた。


「使ってくれ」


「えっ…いいんですか…?」


「別に使わなくてもいいが」


「っ! 使います! ありがとうございます!」


「「「「ありがとうございます!」」」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ