151 聖域
連続投稿四本目です!
巨大鳥と共に空を飛び城へ向かうと、鳥たちが城に向かう途中、壁に阻まれたように何かにぶつかり墜落していく。
鷲獅子は魔法を放っていたが、その魔法も城に届くことなくかき消えていた。
『あれは?』
その様子を見た巨大鳥が不思議そうに聞いてくる。
「城の結界じゃないか? 城壁の上辺りで弾かれてるし。あの城は俺が許可しなきゃ入れないからな。上空からでも例外ではないみたいだ」
『ほう…』
「お前は攻撃するなよ? 流石に壊れそうだ」
『試すくらいいいだろう?』
「…そのうちな」
確かに強度を確認するにも一度くらい試した方がいいだろうな。だが今は困るので、今はやめろと念押ししておく。
「色んな種類の鳥とコウモリっぽい魔物。それとモモンガみたいなのもいるな。まあ小型のやつらはほとんど自滅してるから放っといていいが、鷲獅子が…十匹か」
『手伝うか?』
「いや、大丈夫だ。鳥たちを見てきていいぞ」
『わかった。若い個体だろうが、それなりの強さはあるぞ』
気をつけろということだろうか?
「おう」
鷲獅子たちは城を壊すことに夢中になっているようで、近寄ってきた俺に反応しない。人間よりも拠点を優先的に破壊するよう指示されているのだろうか?
「あ、【拠点作成】ってこの事態を引き起こした奴が強制的に与えたスキルだもんな。実は魔物たちが集まりやすい効果があったり、そうでなくても標的として指定してる可能性はあるな」
悪質だな〜。まあ余程用心深くない限り、この状況じゃ皆、【拠点作成】を使うしな。
とりあえず鷲獅子をどうするかだ。この第二波…第三波もあるかもしれないが、この魔物の暴走が終わったらテイムできる可能性はまだ否定できない。
さっき、リスたちはテイムできないからと解放してしまったが、暴走が終わったわけではなかったし。
まだテイムできる可能性は残ってるよな…?
ということで…はい。結界っ。
結界で囲むと鷲獅子は地上に落ちていく。
「…城壁の中に落ちたぞ? どうなってんだ」
俺の結界で囲まれていたからか? 俺の所有物扱いにでもなったのだろうか?
なんにせよ、落ちた鷲獅子は結界内で暴れるだけで、結界を壊して出てくる様子もないので次へ向かう。
抵抗を受けることなく、十匹全てを結界に閉じ込めた。
「やっぱり城壁内に落ちたなあ。かなりの高さから落としたのに怪我もしてなさそうだし」
【拠点作成】で作った拠点に、内部では怪我をしないとかいう効果があるのか、結界が内側に衝撃を通さないのか…鷲獅子が丈夫なのか?
でもまあ、結界に閉じ込めておけることがわかってよかった。【地操作】より魔力消費少ないみたいだし、この暴走…襲撃が終わるまでテイムしたい魔物は閉じ込めておけばいいな。
どうしてもテイムが無理だったら…申し訳ないがクー太たちの遊び相手だな。それか他の魔物たちの訓練?
巨大鳥の方を見ると、落ちた鳥たちを嘴で咥え一箇所に集めている。
「あっちは任せていいな」
鷲獅子以外は拠点に弾かれ落ちていっているしので、後は巨大鳥と柵内で待機している魔物たちに任せ、先程魔法をぶっ放した場所へと飛んで戻る。
結構な広さで木々が薙ぎ倒されているので、先程の場所は探すことなく見つかった。
「おおー…」
上空から見ると木々は薙ぎ倒され、燃え、悲惨なことになってはいるが、魔物たちはちゃんと姿形が残っているのがよくわかる。
さすが進化種。傷だらけであったり、蜘蛛やトロールなどは腕が取れていたりはするが、損傷はそんな激しくなくグロテスクという感じはあまりない。
「衝撃と熱、感電かね」
【風刃】はいらなかったかもしれない。今度から追加で魔法を打つなら【雷球】と【炎球】にしておこう。
俺がいなくなったからか、ここには魔物はいない。その証拠にクー太たちの方に群がっていた。
「クー太やランなんかは獲物を横取りされたくないだろうし…もっと奥に行ってみるか」
巨大鳥が拠点の方にいてくれるので、拠点を心配する必要も、すぐ駆け付けられる距離で戦う必要がなくなったしな。
山の方へ駆けていくと、まだまだたくさんの魔物が拠点の方に向かって移動していた。
宙に浮いて見回してみると、先程俺に向かってきていた時よりも魔物たちは広範囲に広がって移動しているので、【爆炎】と【放電】、【竜巻】をまとめて一箇所に放つのではなく、単発で放っていく。
途中テイムしたい魔物は結界で閉じ込めながら魔物の群れを倒しながら移動する。
「……そろそろやばいか?」
日も暮れ始めてきた頃。足元がふらついた。体力も魔力もかなり消費したからだろう。今すぐどうこうなるわけではないが…もっと強い魔物が現れたら厳しい。
やってくる魔物も少しずつ強くなっている気がするし。
「撤退してクー太たちに…あいつらも疲弊してるか」
どうしたものか。
『ご主人様』
「……クロか。他のとこはどうだ?」
クロが影から現れ、隣で戦い始める。
『少し前から魔物が来てない。多分ご主人様のとこに集まってる』
「そうか。誰か怪我したりは?」
『私の知る限りいない』
「ならよかった」
『クー太たち呼ぶ? ご主人様の獲物だからって皆遠慮してるけど』
……俺と同じことを思ったのか。
「皆体力は大丈夫か? 結構消費してるし頼みたいが…」
『大丈夫。わかった。呼んでくるからもう少し頑張って』
「おう」
それからそう時間をおかず、まずクロがドライとビャクヤと共に戻ってきた。そのあとにクー太とラン。クレナイにハク、アキ、フェリ、グレイ、ラック、リーフ、アメリ。それはいい。だが、予想外のメンバーまでやってきた。
アルファ、ガンマ、デルタ、ディアまでやってきた。
「お前たちは無理するなよ」
『『『はい!』』』
返事をしないのはガンマか? そう思ってガンマに視線を向けると蜘蛛の脚を一本上げていたので、おそらくそれが返事なのだろう…。
本当に無理しないでほしい。アルファとデルタはまだ空を飛んでいるから多少安心だがなんで来たんだか。
あ、でもアルファな風鷹…二回目の進化して孤鷹になってたから大丈夫か?
ガンマも大影蜘蛛で種族スキルが二つあるし、二回進化した個体だからまあいい。
一番心配なのはディアか。基本、突進してツノで攻撃、って感じだし。格上の相手と接近戦、しかも相手の数の方が多い。
そう思ってディアを気にかけていると、突進ではなく角を飛ばし始めた。
「えっ?」
角は勢いよく飛び、幻狼の眉間に吸い込まれていった。
「おいおい。まじか」
幻狼は剣鹿より格上だぞ? それを一撃って…。
もう片方の角も飛ばすがトロールの身体に刺さるだけで倒せてはいなかった。幻狼は偶然か?
角が無くなったから今度は突撃だろうな、角はまた生えてくるのだろうか? そう心配していたら、ディアの頭部に光の粒が集まるようして角がまた現れた。
「えええ…まじか…」
ディアの角って何でできてんの? 魔力? すげぇ聞きに行きたいんだけど。
とりあえず大丈夫そうなので俺はアメリに頼み【聖域】を張って貰い、そこで腰を落ち着ける。
『大丈夫にゃ?』
座るとアメリが膝の上に登ってきた。
「怪我とかはしてないが、疲れたな」
『おつにゃ』
おつにゃ、って…雑だなアメリ。俺に労いの言葉をかけることよりも、もぞもぞと膝の上で座る位置を調整している。
「【聖域】張ってる間は聖域内にいないと駄目なのか?」
『みたいにゃ。出たら【聖域】が解除される気がするにゃ』
「そうか…すまんな。お前も戦いたいだろ?」
『大丈夫にゃ。ご主人様の膝の上を独占できてるから問題ないにゃ』
そう言って、落ち着く体勢になったのか、丸まってゴロゴロと喉を鳴らすアメリ。
アメリを撫でているとなんだか眠くなってくるし、そうでなくとも横になって眠りたいと思うが我慢する。
アメリのステータスを見ると、昨夜進化させたばかりなのに既にレベルが二十まで上がっていた。どんだけ戦っていたんだ。
俺のステータスは…って。
「まじか」
『どうしたにゃ?』
「いや…レベルが九九で進化可能になってる」
『にゃ? 何に進化するにゃ? 猫になれるにゃ?』
「猫にはなれないだろう…多分。今の俺、たぬきだし」
『それは残念にゃ』
本当に残念に思ってんのか? 丸まったまま微動だりしないのに…。
進化すれば魔力量や体力量も上がるだろうし、今より回復できるか?
その前に皆を探す。この場から全員を見えるわけではないが、見えている範囲の仲間は問題なさそうだ。ディアは相変わらず角を飛ばしているし、デルタとアルファはリーフと共に空中にいる。ガンマは樹上に巣を張って糸を飛ばして攻撃? しているからステータスに意識を割いても大丈夫そうだな。
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○中野誠の進化先を選んでください。
・狸人(幻獣種)
・狸人(精霊種)
・狸鬼
・吸血鬼
・ハイヒューマン
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選択肢は五つ。
幻獣種と精霊種、それと…たぬきおに? まあこれはいいか。今の俺狸人だし、狸と名のつく種族ならどんなものでもあってもおかしくはない。
ただ吸血鬼とハイヒューマンはなんであんの?
ハイヒューマンは人間に戻れるよーって?狸人だって人間と大差ないし人間に戻りたいとは思わないからこれは却下だな。
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