150 森林破壊
連続投稿三本目です。
あれで終わりではなかったと? 第二波? それとも血の匂いに引き寄せられた魔物?
『ご主人様。クー太とランの言う通り、さっきより強そうな奴らがたくさん来てるみたい』
影から顔を出したクロからもそう報告が入る。
「どんな魔物かわかるか?」
『そこまでは伝わってきてない』
クロは黒蛇の誰かからの【影話】を受信したのだろう。クロから質問できないので伝わってきた内容以上の情報は得られないか。
『巨人さんとー…虫さん?』
『血の匂いが濃くてわかりにくいけど…リーフと似た匂いもするわ!』
鷲獅子! もしかしてドラゴンも来るか!? ドラゴンすげぇ見たいんだよな!
「あっ…。あ、あぁぁぁぁ…」
突然声を上げ、しゃがみ込む俺に親父たちが心配そうに声をかけてくるので、なんでもないと答えておく。
なんでもなくはないが…親父たちには関係ないことだ。
俺の突然の行動の理由? 決まっているだろう。もしドラゴンが来てもテイムできないという点だ! なんでテイムできないんだよ! 誰の支配下に…って邪神か。余計なことしやがって。
「ふぅ…。仕方ない、か。親父、メイ、ミミ。三人はお袋と合流して柵内…できれば城内にいてほしいが、とりあえず柵の外に出なきゃいいや。他の人たちも…出ることはないだろうが、出さないように」
「わ、わかった。そんな強い魔物が来るのか?」
「まだわからないけど…ランの言う通り鷲獅子が来るなら、親父たちには荷が重い」
荷が重いというか、一撃で死ぬかもしれない。
ぐるっと周りを見渡すと、魔物たちが指示を待っていたので声を張り上げる。
「全員柵内に入れ! 遠距離攻撃できるやつは柵内から攻撃を! 遠距離攻撃の手段がない奴らは柵を越えてきた魔物を倒せ! 今ここにいない奴らにもそう伝えろ!」
『『『『『『『はっ!』』』』』』』
「クロ、ドライ、ビャクヤ」
『なに?』
『どうしたのー?』
『なんでしょう!』
「伝言を頼む。クロはクレナイとハクに引き続き左右を対応するように。グレイには左右どちらかに向かうように伝えてくれ。あとリーフとアルファには柵の上空を警戒するように」
『わかった』
さすがクロ。すぐさま影に潜り伝えに行ってくれたようだ。
「ドライはイチロウ、アインス、ツヴァイ、アカイチたち蛇のリーダー。それとシドー、ベータ、ガンマ、ディアに柵の外で無理せず遊撃。単体で行動はするな、と伝えてくれ」
最近蟒蛇のベータのことよく忘れるんだよな。今回は忘れずに済んだが…あいつ体でかいのに存在感薄いし。
それとベータやガンマの名前を変えようかな? 同系統の魔物はいちいち名前を考えるのが大変だから数字とかを当て嵌めて呼んでいるが、蟒蛇のベータや大蜘蛛のガンマは一体しかいない上に、アインスたちのようにまだ俺の中でベータやガンマって名前が定着してないし。
今度他の名前考えてやるか…?
『了解ー! 行ってくるねー』
「ああ。頼んだ。ビャクヤはタヌイチ、イタイチ、ケンタ、フィーア、フンフ、ゼクス、アンたち蛙組、まあ先程名前を上げなかったリーダー格に柵内の指揮をするように伝えてくれ」
『はい!』
こんなことならリーダー格に点呼をさせた後解散させなきゃよかった。少し時間はかかるだろうが、あの三匹ならちゃんと伝えてくれるだろ。
巨大鳥が戻って来てくれればここの守りを頼みたかったが…。
クシハやエリン、サンクにシス、レイ、パンには柵内に待機するように指示を出すと、クシハとパンから不満の声が上がる。だけど…鷲獅子相手じゃ厳しいだろうし、なんとか我慢してもらった。
「じゃあクー太たちはさっきよりも分散して柵に魔物が行かないように。強敵だったり、手に余るようならいつもの合図を」
それぞれ柵の外に出て行動を開始する。上空から柵内を狙われては困るので俺はあまり柵から離れないようにする。
しばらくすると木々の間を縫うように飛行しながらやってくる鷲獅子と…トロール。
それとオーガ並みの体格のゴブリンっぽいやつ。巨大猿に幻狼、ウワバミ。ガンマと似た蜘蛛、ディアと同じ剣鹿、フンフとゼクスと同じくらいの大きさのカブトムシにクワガタムシ。アインスやツヴァイよりも大きな白鼻芯に貉。
あとは物凄い巨大なムカデ、カマキリなどなど………。
他にも姿は見えないが鳥の羽ばたく音や、デルタと同じコウモリだと思われる鳴き声がする。
「これ人間側絶滅すんじゃね…?」
冷や汗が流れる。自惚れかもしれないが、俺が…俺たちがいなかったらここら辺一帯の人間は絶滅だろう。進化してない人間では対抗できないだろう。ましてやレベル一桁や二桁前半など成す術もなく蹂躙される予想しかできない。
「さすが邪神…。だが…俺らにとったらボーナスステージだな。テイムできないのはいただけないが…」
「【爆炎】からの…【放電】! 【竜巻】!」
爆発し、紫電が降り、それが【竜巻】によって撹拌されていく。
「もういっちょ! 【風刃】、【雷球】連発だっ」
いくつもの風の刃と雷の球が炎と紫電、土埃の舞う場所へ飛んでいき、爆発を引き起こす。
しばらくして土埃が晴れると死屍累々。木々は薙ぎ倒されぽっかりと空間が空き、陽が差し込んでいる。
…森林破壊してしまった。
だが、さすがは進化種。肉片も残らないかも? なんて思ったが、そんなことにはなっていなかった。トロールと鷲獅子なんかはまだ生きているのか、ピクピクしている。
「一応…テイム」
………無理か。というかアナウンスすらないということは全員死んだか、テイム拒否されているな。
様子見していると死屍累々の魔物たちの奥から更に後続が現れる。
本当ボーナスタイムだなあ。
『マコト!!』
バサバサッ! という音と共に巨大鳥が、ぽっかりと空いた場所からから降りて来た。
「お、戻ったか」
『戻ったかではないわ! お主の魔法で、上空にいた我も巻き込まれたかけたわ!』
よく見ると巨大鳥は少し煤けていた。
あー、それはすまん?
巨大鳥に、お主はやり過ぎなのだ。と言われる。そうは言っても、鷲獅子やトロールがいたからな。他にも上位種がたくさん。
『お主ならば、本気でやれば数発…いや、一発でも殴れば終わらせられるだろうに。あそこまでやる必要はない』
【身体強化】は最近ずっとしてるから、【雷装】して、【重力操作】で勢いを増せば一撃で倒せるか? でも本気で殴ると弾けるんだよな。相手の身体が。トロールなんかは大丈夫だろうが、他の魔物はな。
巨大鳥も本気でやれば、というが、クー太たちにも本気なら一番強いって言われたことがあるんだよな。クー太や巨大鳥とそんな変わらない気がするが…無意識に加減しているのだろうか?
「…まあいいじゃんか。そこまで魔力消費もしてないし。それで? 鳥たちはいたか? 今も羽音はするけど」
『そうであった。飛行する魔物の大半はお主の城に向かっていたので、我も向かうところだった』
「鷲獅子はこっちにいたぞ?」
『城の方にも見えたぞ。だが…どの鷲獅子も若い個体だな。最近の生き物…魔物はどうも成長が早い上、それなりに成長した姿で産まれるものもいるからはっきりとは言えんが、おそらく昨日今日に産まれた個体だろう。それもあってお主の魔法は過剰と言ったのだ』
「そういうことね。城の方に行ってるなら一旦俺も見にいくか」
とりあえず新たにやってきた魔物の集団には、念のため捕獲しておきたいと思える珍しい魔物もいない。先程と似たような構成だ。さっきと違って巨大なイノシシも混ざっているくらいか?
「俺も行く。【爆炎】、【放電】!」
二つの魔法を発動させ、間髪入れずに【竜巻】を発動。
「それと…【風刃】二十発! もういっちょ、【雷球】二十発っと」
『だから過剰だと言うておるだろう!』
「いや、さっきより多いし、ほら、左右から避けてきた奴がいる」
幻狼と巨大イノシシか。
「【火炎放射】!」
『お、おい! 森が燃えるではないか!』
いや、そんな燃えてないぞ? すでに、巨大鳥が煤けた攻撃で木々は燃えて薙ぎ倒されているし。
「大丈夫大丈夫。城の様子を見たらまた戻ってくるから、その時まだ燃えてたら消すから」
『まったく…』
「ほら、早く行かないとだろ」
『そうだな。鳥たちは極力殺さないでくれると助かる。鷲獅子は好きにしてよいぞ』
「わかってるよ」




