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146 巨体鳥

お待たせしました。

今回は短めです…。

 

『ご主人様ご主人様』


「ん…」


 クロ…?


『起きて。巨大鳥が来たって』


 ………っ。 


「は!?」


「ぎゃうっ!」


「きゃんっ!」


 ガバッと起き上がると俺の胸元に寝ていたのかクー太とランが壁に向かって跳んだ。


「あ、すまん」


『いたっ!…何かあったの!?』


『びっくりしたー…。もーどうしたの〜?』


 ランがキッとこちらを睨む。クー太は目を擦りながら尋ねてくるので、壁にぶつかったことは特に気にしていないようだ。


「すまん…じゃなくてっ。クロ。巨大鳥が来たって本当か!?」


『うん』


 なんでだ。万が一、そういう可能性があるかも、とは思ったが、あり得ないだろうとも思っていた。自我ははっきりしているし、強さもそうだが、長生きしている上、変革の影響は受けていても、変革によって生まれた魔物じゃないんだぞ。


「全員起きろっ。アキ!お前もだ!」


 あいつは不味いだろ!城門内なら安全かもしれないが、柵なんぞ意味ないし、外に巨大鳥に対抗できるやつはほぼいない。グレイとリーフがなんとか、といったレベルか…。

 アキを掴んで飛び降りようと窓を開けると室内に引き倒され、尻餅をついた。

 な、なんだ!?


『…ご主人様落ち着いて。攻撃しに来たわけじゃないみたい』


 …………ん? 待て待て。今なんて言った?


「襲撃じゃない…?」


『うん』


「………はあ」


『ごめんなさい。説明足りなかった』


 クロが申し訳なさそうにする。


「いや…気にするな。皆無事なんだな?」


『そのはず。コクイチたちから【影話】が来たから。巨大鳥が来てご主人様を呼んでる、って』


「そうか…だが一応全員で行くか…っと、クロ離してくれ」


『ん』


 俺を室内に引き倒したのはクロのようだ。俺のお腹のところに尻尾が絡みついていた。


『ご…ごしゅ…じんさま!くるしい…』


 手にもぞもぞとした違和感を感じ、見てみるとアキが暴れていた。俺に握りしめられながら…。


「ア、アキ!すまん!」


『ケホッ。ご、ご主人突然どうしたのです…? 物凄くびっくりしたです…。あ…わ、わたしなんかしました…?』


 アキが不安そうな顔をするので、罪悪感が物凄い…。


「いや…起こしてもすぐ起きないだろうから、掴んで連れて行こうとしたんだが…力がはいりすぎた。アキはなにもしてないよ。本当すまんな。大丈夫か?」


『…怒ってるわけじゃないです?』


「もちろんだ」


『ふぅ……なら良かったです』


 もう一度謝ると、大丈夫なのです!と言うアキ。申し訳ない。


 あーもー。ダメダメだな。落ち着こう。

 深呼吸をして、飲み物を飲む。そして、今度はそっとアキを持ち上げ膝の上に乗せる。近くにいたクー太とランも掴んで膝に乗せ撫でる。


 ふぅ…。落ち着く。

 そうしているとフェリにラック、クシハやエリン、レイ、パン、デルタまでくっついてきた。


「ご主人様?なにしているのですか…?私も混ざった方が…でも…」


 なんかハクが出遅れました…と呟いてるのが聞こえる。混ざろうか悩んでいるところ悪いが、くっつく場所ないぞ?


『ご主人様行かないの?』


「あ、ああ。すまん。一旦落ち着こうと思ってな。皆ありがとう。離れていいぞ。アキはおいで」


 さっきのお詫びというわけではないが、強く握りすぎたのは事実なので、いつもより優しくしようと思う。

 痛いところはないか、軽く撫でながら反応を見るが殊更優しくされていることに戸惑っているのか、視線が泳いでいるだけで痛がってはいないので大丈夫そうだ。


 クロが言うには巨大鳥は柵の外で待っているらしい。突然の巨大鳥に外にいる人たちはもの凄く怯えているようだから早く行ってあげて、と言われてしまった。


 急を要するなら窓から飛ぶのだが、火急の用件というわけではないのはわかったので粛々と階段を降りる。途中クレナイの部屋にも寄ってクレナイとアルファも連れて行く。


「にしてもなんの用かね?」


『遊びに来たです?』


 俺に抱えられ撫でられているアキがそう言うが…それはないだろ。


『巨大鳥の配下が暴れ出したとかかしら?』


「あー、ランの言う可能性はありそうだな」


 なんとなく朗報ではなさそうだな、と思いつつ城門を出て柵まで向かった。城門を出た時点で巨大鳥が見えたので軽く手を振ったら睨まれてしまった。元から鋭い目に怒りが宿ったかのように見えたのは気のせいだろうか。


「よう。こんな時間にどうした?」


 まだ陽も出ておらず他の人間達は焚き火の灯り頼りでしか行動できないくらい暗いだろう。


『遅いぞ』


「すまんすまん。こっちも色々あったんだ」


 そう言うと不満そうにしながらも話し始める巨大鳥。


『ふん。配下の一部が突然暴れ出して方々に散っていったのだ』


 わあお。ランちゃん大当たり。


「それで?逃げた鳥達が攻撃してきても殺さないでくれ、とか?見分け付かないから無理だぞ?」


『わかっておる。用件は私もここで戦わせてほしい』


「それは構わんが…というか敵にならないだけでかなり助かるが、なんでだ?」


『お主の言う通りならば暴走した者は人間を積極的に襲うのだろう?ならば我らの縄張りから一番近い人間のいる場所はここだ』


「まあ…邪神の言う通りならな。人間以外にも攻撃的になるのかは知らないぞ?」


 コウモリのデルタ……あれ? ステータスって確認したっけ? 種族名なんだったかな…。

 ……もしかしたら確認してないかも。話が終わったら見ておこう。

 デルタの仲間達が邪神の影響で暴走した魔物なら人間以外も襲うだろうし、巨大鳥の配下が絶対ここを襲うとは限らない。そのことも一応伝えておく。


『我の庇護下に入ったから出来るだけ助けようと思うが、戦って死ぬのならば仕方のないことだ。配下全てを常に把握していられるわけでも、常に守ってやれるわけでもない。戦闘で命を落とすのは自己責任である。お主…マコトは気にせんで良い』


 あー…まあなぁ。出来れば死んでほしくないし、極力助けるが、常に守ってやれるわけじゃないのは同意だ。


「わかった…けど、ここで戦ってどうすんだ?」


『まだ我の下に来て日の浅い…昨日一昨日くらいに仲間になったばかりの、しかも力の弱い者が暴れたのだ。だが全く自我がないわけではない。再び我が呼びかければ正気になるかもしれぬ』


 そして、正気にならなかったら諦めると続ける巨大鳥。


「はいよ。まだ魔物達の襲撃は…ないよな?」


 辺りを見回すと、一匹の狼が見えたのでステータスを確認して名前を呼ぶ。九十八番目に名付けた子だった。


「襲撃はまだないよな?」


『はい。たまに魔物はいますが、いずれも単体だったので、光に誘われたか、ただ彷徨っていた魔物かと』


 光…?

 そう言われて振り返ると城からサーチライトみたいなものが…。

 焚き火の灯りだけだと思ったら辺りは照らされていた。スキルのおかげで視界に問題はないから気づかなかったようだ。


「わかった。引き続き頼んだ。それと鳥の魔物は手加減出来るようなら殺さず、動けなくするだけにするようイチロウたちに伝えてくれ」


『はい!』


「てことで、まだ襲撃はないみたいだがどうする?ここで待ってるか?」


『いつ頃来るかはわからないのだろう?ならばここで待たせてもらう』


「了解。俺は襲撃があるまで休んでるから何かあれば誰かに伝えてくれ」


『承知した』


 ふぅ。こいつが味方の上、戦闘に参加してくれるというなら憂なく休めるな。そんなこと気にせず休んでいたが。


『ご主人さまー』


「どうしたクー太?」


『ぼくもここにいるー』


「部屋に戻らないのか?」


『大きな鳥さんが一緒に戦うなら獲物が減っちゃうからー。ぼくもここで襲ってくるの待つー』


『あっ! なら私も!』


 獲物が減るから襲撃と同時に戦いたい…狩りたいということか。ランも気づかなかった!と言うように目を開いて尻尾をピンと立たせたかと思ったら、ここで待機するという。


『…私もそうする』


『じゃあ僕もー!』


 フェリとクシハもクー太たちと待機するつもりのようだ。俺は安心したせいか眠気がぶり返してきたから寝たいんだが…。


「仕方ない。ここで寝るか」


「ご主人様ここで寝るの?ならワタシもここにいるの」


 ラックは添い寝したいだけだろう。さっき飛び起きた時も横で寝てたし。一応全員に確認してみたら俺の側にいると言う。可愛いんだが…べったりし過ぎじゃないか?もう少し離れてもいいんだが…。


「じゃあ皆に巨大鳥の事説明してくるから皆はここで待っててくれ」


 こちらを伺っている中に藤堂の護衛二人も藤堂もいるのはわかっていたのでそちらに向かう。


「話は聞いていたか?」


「え、ええ。あの大きな鳥は貴方の配下じゃないのかしら」


 藤堂が巨大鳥にチラチラと視線を向けながら聞いてくる。


「違うが味方だから、大丈夫だ。他の人たちにも伝えてくれ。ちなみに…脅すわけではないが、巨大鳥だけじゃなく俺の魔物たちも基本は味方だけど、手を出したらその限りじゃないのは覚えておいてくれ」


「もちろんわかってるわ」


「それと、親父たちが起きてきたら、あの鳥は味方だと伝えておいてくれ」


「わかったわ。それはいいけど、貴方は? 寝るの?」


 頷く藤堂。


「ああ。俺は寝てるから何かあれば起こしてくれ」


 それと藤堂の影にいるだろう黒蛇に、出てきてくれというとすぐさまスルスルっと現れた。


 現れたのはコクム…六番目の子だな。あんまり会話しない子だ。


「この場所とここの人たちよりも、親父たちの護衛を増やすようにコクイチに言っておいてくれるか」


『わかりました』


 コクムはすぐさま影に戻る。影の中なら離れてても会話出来るんだもんな。本当便利だ。

 俺はそれを見届け、藤堂にあとは任せた、と言い焚き火から離れクー太たちのもとへ。


「さて…どうするか…」


「ご主人様なに悩んでるの?」


 一緒に寝る気満々のラックが話しかけてくる。お前人型だからなあ。ハクも。寝具が【亜空庫(小)】に入っているのに人間の姿をしてるのに地べたに寝させるのもな。


「布団を出すか、ベッドを出すか?」


「ど、どっちでもいいの…」


 …ラックが少し呆れたような視線を向けてきた。どっちにするか悩むだろ?


「布団でいいか。ラック、このレジャーシート広げてくれ」


「はいなの!」


 レジャーシートの上に布団を二組敷いて…なんか壁がないと不安だな。魔物に襲われる不安ではなく、人間たちの視線が気になる。


「【地操作】」


 スキルでコの字型に布団を囲み、布で天井を作る。


「よし。じゃああとはよろしく」


 こちらを伺っていた巨大鳥に挨拶すると巨大鳥からも呆れたような視線を受けた。なんだよ。休んだっていいだろうに…。


 布団に横になると先程部屋にいた面々も一緒に入ってきた。クロとドライ、ビャクヤは影だろう。


「クー太?ラン?お前たちは襲撃待ちするんじゃないのか?」


『んー。一緒に寝るー』


『ここなら魔物が来てもすぐ出られるからわざわざ起きて待ってなくていいわ』


 さいですか。確かに城にある部屋からだと飛び降りれば別だが、多少時間がかかるもんな。


『ご主人様ちょっといいかにゃ?』


 横になるとアメリが近づいてきた。こう見るとパッと見ただの猫だよなあ。


「どうした?」


『僕とグレイ、まだ進化しないにゃ?』


 ……………あ。


いつも誤字報告ありがとうございますヽ(´▽`)/

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